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【異世界転生】理想の執事を目指します  作者: 夜空のスピカ
第1章 プロローグ~誕生日パーティー
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パーティー後のそれぞれ


 side:ルシウス


 部屋のベッドに寝ころびながら考えるのはアイツの事だ。

 今、俺の気分は最悪と言ってもいい。

 

 それは、あの気に食わない腹違いの弟、ユーリオンが原因だ。

 もっとも弟だとは思っていないし、認めるつもりはないがな。


 何かされたのかと聞かれれば、何もされていないと答えるしかない。

 まだ3歳のガキとは思えない程落ち着いているし、言葉使いも丁寧だ。

 

 俺たちの事を気安く「兄」と呼ぶこともない。

 兄貴や俺よりも、お父さまを含めた周囲から評価されていると思う。


 兄より優秀だと評価されているのもムカつくが、一番気に食わないのはあの「目」だ。

 まるで大人が子供を見る時のような目で見てきやがる。

 自分の半分も生きていない奴が上から目線で見てくるんだ、許せるはずがない。


 我慢できず、嫌がらせのつもりでユーリオンに色々ちょっかいをかけてみた。

 だが結果は全て失敗し、むしろアイツの評価を上げる一因となってしまった。


 イライラが収まらず、壁を思いっきり殴りつける。


「くそっ!」


 ……痛い。

 右手が赤く腫れてきた。

 これも全部アイツのせいだ。


 いっそ関わらない方が賢い選択のように思えるが、感情的にそれは無理だ。

 なんとか泣かせてやりたいが、目立ちすぎるのも良くない事くらいは分かっている。


「ちっ、こういう時は素振りでもするか」

 

 ルシウスはそう言うと、木剣を持って庭へ向かった。

 真面目に素振りをしているうち、気分が落ち着いていく。

 

 ルシウスはユーリオンに対し、良くない感情を向けてはいるが、排除したいわけではない。

 ユーリオンや周囲の者に自分を認めさせたいのだ。


 その後、恋とまで呼べないが、気になっていたアナスタシアが

ユーリオンをお茶会に誘った話を聞いて、更にイライラが増すのであった。



 side:アナスタシア


 私の名前はアナスタシア・オンデルブルクで、年齢は6歳。

 グランファーレル王国の上位貴族であり、公爵である「バーヴェル・オンデルブルク」の孫娘。

 今は、部屋で手の平に乗る小さな猫のぬいぐるみを可愛がりながら、お爺様を待っている。


 先日、私は王族主催のパーティーに参加して運命の出会いを果たした。

 これまでも王族が参加するようなパーティーには、お爺様に連れられて参加する事はあった。

 つまり、私の運命の相手というのは、先日のパーティーが初参加となるユーリオン様の事。


 お美しいお母様譲りの白銀の髪に、宝石のように真っ赤な瞳。

 女の子のようにも見えそうな可愛らしい顔立ち。

 まるで神の祝福を受けているとさえ思えてしまう。


 10年もすれば、大勢の女性が魅了される事でしょう。

 誤解されたくないのですが、もちろん容姿だけで好きになったわけではありません。


 パーティー会場で、私はお爺様と一緒に王族に近い位置にいました。

 そのおかげで、他の令嬢達よりも近くでユーリオン様の挨拶を聞くことができましたし、

 とっても可愛い猫のぬいぐるみを誰よりも先にプレゼントして貰えました。

 

 あの時は目の前で起きた事が理解できず、反応が遅れてしまい、失礼してしまいました。

 ユーリオン様がした事は「魔力を糸状にする」「それを具現化する」「それを操作する」の3つ。


 言葉にするのは簡単ですが、これを短時間で全部同時に行ったのです。

 あんな精密な魔力操作なんて、大人でもできるのか分かりません。

 ユーリオン様はエルフの血を引いていますし、エルフ族の秘術なのでしょうか?


 ユーリオン様は、たくさんの令嬢達にもプレゼントしていましたが、本来はありえません。

 王族であるユーリオン様に軽々しく声をかけ、まして何かを頼んでいいはずがない。

 

 王族が貴族とはいえ令嬢の為、自ら何かを用意するなど。

 ……本音を言えば、自分だけにプレゼントしてほしかったとういう気持ちもあります。

 とはいえ、もし自分だけだったら、更に騒ぎになっていた可能性もあるし、仕方ないわね。


 今までにも、素敵なドレスや美しい装飾品をプレゼントされた事はありました。

 ですが、今の一番の宝物はユーリオン様に頂いた猫のぬいぐるみです。


 可愛らしいだけでなく、サイズが小さいので、簡単に持ち運びができます。

 ある程度の年になれば、お気に入りでも、お人形を連れて歩くなど恥になってしまいます。 

 

 ですが、ユーリオン様の作品であり、これなら、ちょっとした小物として扱われます。

 ポケットやポーチにも入れておけるので、かさばる事もありません。

 

 ユーリオン様は自分の作品が今どうなっているか、きっと知らないのでしょうね。

 令嬢達の間では、これを所持している事が一種のステータスになっています。


 見せた姉妹に欲しがられる事もあれば、参加しなかった者からも狙われる。

 あの場で令嬢達に交ざる事はありませんでしたが、大人の女性でも欲しがる方はいます。

 流石に私から入手しようという方はいませんので、安心して愛でられます。


 待ちに待った、扉をノックする音が聞こえてきます。

 きっと、お爺様が来たのだです。


「すまないアナ、待たせたかい?」

「ユーリオン様の事を考えていたので、あっという間でしたわ」

「……そうか」


 お爺様が何か言いたげな顔をします。

 何か、おかしな事を言ったでしょうか。


「だいたい予想はつくが、話というのはなんだい?」

「私、ユーリオン様と婚約したいのです」


 私は少し恥ずかしかったけど、正直な気持ちを伝えます。


「やはり、その事か。もちろん私もできれば、王族に嫁がせたいと考えている」

「でしたら、お願いしますわ」

「我がオンデルブルク家の家格とお前の容姿なら、次期国王の第一王妃の座も狙える。

 アーサー殿下は分からないが、少なくとも、ルシウス殿下はお前に興味があるようだぞ」


「アーサー様は臆病で消極的。ルシウス様は知性が低く、考え無しで野蛮なので嫌いです」

「……頼むから言葉には気をつけてくれ」 

「失礼しました」


 さすがに問題発言だったと自覚し、仕切り直します。


「ユーリオン様では、ダメなんですの?」

「ユーリオン殿下に問題があるわけではない。

 今の所、我が家で年齢が近く、将来的に嫁にいけるのはお前だけなのだ。

 だが、ユーリオン殿下はエルフの血が半分入っているので、権力からは離されるだろう」


 現にエルフである、アメリア第二王妃様は、権力から離れた位置にいます。

 その息子たるユーリオン様が、そうならないとは言えませんね。


「ユーリオン様では国王になれず、権力からも離されるからダメなんですの?」

「そうだ。お前には悪いが、ユーリオン殿下に嫁いでも、我が家の旨味が無さすぎる」


「ですが、ルシウス様のあの性格では、いずれ問題を起こす可能性が高すぎます。

 それでなくても、派閥の神輿にされて将来、王の座を狙い、争いが起きそうです」

「……無いとは言い切れんな」


「アーサー様が国王となれば、今代が少なすぎるので、多くの女性を迎える事を望まれます。

 悪い部分が似てしまったあの性格では、同じように妻を抑える事ができないでしょう。

 確実に権力を求め、背後を巻き込んだ妻同士の争いが起き、暗殺毒殺の嵐になりますわ。

 子供の私でも分かる事。お爺様なら私が思いつく以上の事を考えていらっしゃるはずです」

「………」


「私とて貴族の義務は理解しています。好きな殿方と恋愛結婚できるとは思ってません。

 今のままであれば、2人の仲は悪くなくても、アーサー派とルシウス派に別れて国が荒れます。

 なら、中立を保てる立ち位置にいた方が、我が家から損害を出さずに済みます」


「……争いからは離れられるが、中立が安全だと考えるのは間違いだな。

 戦後に利益を得られないどころか、参加しなったとして責められる事だってある」


「ですが、ユーリオン様がいます。王位継承権は低くとも王族です。

 権力から離されるなら、逆に言えば守るべき権力も無いので、戦う理由がありません。

 ユーリオン様を中立派の神輿にすれば、戦後に疲弊した相手が強く出る可能性は下がります」


「……なるほど。その年で、よくそれだけの事を分かっているものだ。

 我が孫娘とはいえ、子供と話している気がせんわ」


「我がオンデルブルク家で、王族に嫁げるのは私だけ。

 だからこそ、今の立場を守りつつ、安全に関係を持てそうなユーリオン様です」

 

 ユーリオン様に、計算高い女とは思われたく無いのですが仕方ありません。

 私は打算的な話をする事でお爺様を説得します。


「……そうだな。お前の身の安全も考えれば、それが良いかもしれん」

「でしたら、気が変わる前に早速婚約の話を進めてください」

「いや、婚約の話はもう少し待ってほしい」

「……なぜですか? ユーリオン様を狙う貴族は多いのですよ。

 早い者勝ちではないですが、早い方が有利なのも確かなはずです」


 いくら後から嫁いだ方の家格が高くても、第一と第二の順が入れ替わる事はありません。

 内部では家の力関係が影響するでしょうが、対外的に優遇されるのは順位の高い方です。


「それはわかっている。だが、お前を欲しがっている貴族も多いのだ。

 周囲との関係も考えると、早急に婚約するわけにもいかん」

「……わかりました。ですが、ユーリオン様との関係は進めるという事で良いですね?」


 私は渋々ですが納得します。

 貴族である以上、周囲との関係の大切さは分かっています。


「ああ、かまわん。お茶会でも開いて、招待状を出すといい」

「そうさせていただきます」


 お爺様との話し合いが終わると、お茶会について考えます。

 できるなら、ユーリオン様と2人で、ゆっくりと過ごしてみたい。


 でも、未婚の女性が男性を呼んで2人きりというのは、あからさまで外聞が悪いのです。

 あまり女性を呼んで騒がしくなるのも好ましくありません。

 普段お茶会で会う令嬢の中で、おとなしい娘を2人ほど呼ぶ事にしましょう。


「あぁ、お茶会が待ち遠しいです♪」


 


 side:クレア

 

 ユーリオン様の誕生日パーティーから数日、私とお父様はレッドル子爵領へと帰還しました。

 

 ユーリオン様には、お父様を助けられ、私は光栄にもダンスまで踊ってもらえたのです。

 本当に素敵な人で、まるで御伽話に出てくる王子様のようでした。(本当に王子様ですが)

 

 今回のパーティーは、本当なら私ではなく、お姉様が参加する予定でした。

 ですが、お姉様のお見合いがパーティーと被ってしまい、私が参加する事になったのです。

 参加できなかったお姉様には申し訳ないのですが、私は参加できて本当に良かったです。


 長かった旅も終わり、ようやく家まで到着しました。

 私は優しくて大好きなお姉様に、ユーリオン様の事を早く話したくて仕方ありません。

 私はお姉様の部屋の扉を開けます。(普段ならちゃんとノックします)


「お姉様、ただいま帰りました。聞いてください、とっても素敵な」

「くそがぁー! 死ねー! 私を愛さない男は全て死ねーー!!」

 

 ……部屋の中にはサンドバッグを殴りながら呪詛を吐く、悲しきモンスターがいました。

 とても残念な事に、それは私の大好きなお姉様です。


「…お、お姉様?」 


 お姉様は部屋に入ってきた私に気づくと涙を流し、私に抱きついてきます。 


「……く、くれあちゃ~~ん」


 私を抱きしめながらも、お姉様は泣き続けます。

 おそらく、いえ確実にまたお見合いが失敗してしまったのでしょう

 私は手を伸ばしてお姉様の頭を撫でてあげます。


「大丈夫ですよ、お姉様。また次の機会がありますよ」

「……ふぇ~ん、だってこれで10回目の失敗なんだよぉ~」

「………」

「なにか言ってよぉ~」


 それからしばらくして、お姉様がようやく落ち着きました。


「それで今回の相手はどんな方だったのですか?」

「ウチと同じ子爵家で、三男の気弱そうでおとなしい感じの人だった」

「……何が原因で失敗したのですか?」

「最初はね、凄く良い感じだったの。私みたいに意見をはっきり言える女性は好ましいって」

「それなのになぜ?」

「今回のお見合いはウチでやる事になっていてね。

 天気も良かったから、お庭でお茶を楽しみながら話していたの。

 そしたら忌々しい近所のクソガキ共がやってきたの」


 思い出してしまったのか、お姉様の表情が暗くなります。

 おいたわしい。


「お、レッドコングがまた無駄にお見合いしてるぞ」

「どうせ失敗するんだから時間の無駄なのにな」

「ドレスでオシャレなんかしちゃって……ドラミングでアピールしろよ(笑)」


 一般的には、平民が貴族に対し、こんな絡み方をすれば、子供でも重罪になる事でしょう。

 我がレッドル子爵領は人を集めるような物が無く、あまり裕福な土地ではありません。


 その為、普段から貴族の権力を必要以上に使用する事は無く、領民からも親しまれています。

 領民とも、一般的な貴族から比べれば、接する機会が多く、距離感が近いと言えます。


 彼らからすれば、喧嘩友達をからかいにき来ただけなのかもしれません。

 ですが、貴族のお見合いを邪魔するなど……温厚なお父様でもお許しになるかどうか。

 

 ちなみにレッドコングは、この付近に生息している魔獣です。

 怒ると狂暴になり、火属性の魔法も使用してくる危険なモンスターです。


「……それで、どうしたのですか?」


 私はもう結果を予測できましたが、一応尋ねます。


「ボコボコにして、木から逆さづりにしてやったわ」


 ……予想していた以上に酷いです。


「それを見た相手に凄く引かれちゃって」

「……おいたわしい」

「私、一生結婚できないんだわ」


 お姉様の目がまた潤んできます。


「お姉様はまだ10歳です。美人で本当は優しいので、あせらなくても大丈夫ですよ」

「そうかなぁ」

「はい」


 お姉様は気分を変えようしたのか、今度は私の話を聞きたがりました。

 私は王城であった事を、特にユーリオン様の事を話しました。


「とりあえず、クレアを馬鹿にした令嬢はシメるわ」


 本当に止めてください。

 普段は優しく素敵なお姉様なのに、少しばかり暴力的すぎます。


「ユーリオン様かぁ、素敵な男の子ね」

「はい、お姉様」

「7つ下かぁ、ギリいけるかしら?」

「……お姉様」

 

 大好きなお姉様ですが、私は生まれて初めて引きました。


「じょ、冗談よ。本気なわけないでしょ。大好きな妹の想い人に、ちょっかいかけないわよ」

 

 いいえ、お姉様は獲物を狙う鷹のような目をしていました。


「……いえ、子爵家では家格が足りませんから」 

「正室とかは無理でも、頑張れば側室とかなら、いけないかしら?」

「……」

「最初から諦めていれば、必要以上に傷付かないかもしれない。

 それでも一生に一度の初恋なんだから、後悔の無いように大切にしなさい」


 お姉様はそう言うと、笑顔で私の頭を撫でてくれました。

 やっぱり、お姉様は優しくて頼れるので、大好きです。


「ありがとうございます。お姉様」


 私は叶わないであろう約束を思い出す。 

 もし、あのフェニックスの卵が本物であったら、見せに来てくれると言っていました。

 

 100年以上も孵らなかったのに、今更都合よく孵化するとは思えません。

 それでも奇跡が起きたのなら、ユーリオン様とまたお話できるかもしれない。


「……会いたいなぁ」


 小さな女の子の初恋は始まったばかりである。

 





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― 新着の感想 ―
[一言] 国にでは無く王族に対する中立って事が起きた時も動かず中立のままなら排除対象になるからねぇ、良くも悪くも。
2021/12/31 18:07 退会済み
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