濁点男
この話は実際に起こった出来事です。
フィクションの物語のように幽霊、お化けに追いかけられた。暴力、脅かされるなどといったハラハラ展開はございません。
ですが、心霊体験であるとだけ先に伝えておきましょう。
私はある化学工場のスタッフとして三交代の勤務をしている20代男性。
なので深夜働くことがたびたびあります。
私の仕事は2人1組で行う梱包作業で、まず2人で梱包材料を機械にセットしボタンを押します。
あとは機械が商品を10分ほど圧縮したのち2人で梱包作業をします。
圧縮の10分の間は私はフォークリフト作業、もう1人は事務的作業を行います。
私がフォークリフトの業務を終え、戻ってくると相方の加藤さん(仮名)が
はっはっは!!おーい!さとし!(仮名)
お前そんなとこで何わろてんねん!
加藤さんがベルトコンベアに向かい大声で笑いながら私の名前を呼んでいました
私はここにいるのにあの人は何をしているんだろう?
不思議に思いながらも、面白くもあるため少し様子を伺っていたら
どうやら誰かがベルトコンベアの方から覗いているようで、それを私だと勘違いしているのでは?
と思いました。
おーい、加藤さん何しよんの?
私はヘラヘラ笑いながら声をかけた。
え?ん?うわ!?なんでさとしがここに!?
え?あれ?
加藤さんは思っていたよりもはるかに動揺し、ベルトコンベア側と私を交互に見ながら、その目は驚きと多少の恐怖を感じているようでした。
ことの経緯はこうだ。
事務作業を終え、椅子に座りながら体を伸ばすため後ろに頭を向けた時
ベルトコンベアの柵からこちらを見て笑っている男がいた。
加藤さんはこんなイタズラじみたことをするのは私しかいないと思い声をかけていたのだと言う。
事の事情を話しながら加藤さんの表情は少しずつ悩み出した。
あれ?おかしいな、、、あの時あんなことするのはお前だけやと思ってたけど、笑ってたあいつの顔が思い出せん。いや、そもそもあいつヘルメットをしてなかったぞ、、、、
この工場は規則が厳しく、当たり前のことだがヘルメット着用は義務だ。
その作業現場でヘルメットをしない人なんているはずがない。
そして私は疑問を1つ問いかけた。
そもそもベルトコンベアの柵ってのぼれるん?
この疑問をもとに私たちは柵を見に行った。
そして疑問をさらに産んだ。
この柵かなりぐらぐらするし安定悪いな、、
けっこう高さもあるからこれに登って顔をだすってできるんか?
加藤さんが私に質問を投げる
じゃあ私が登って覗くから加藤さんは向こうでどんなふうに見えるか見てみて
私の提案に加藤さんは頷き事務作業場に歩いて行った。
私は柵に腕力だけで登るが、思ったよりもきつい。
安定感もなく壊れたら責任問題だ。
こんなリスクを背負ってまでする人がいるのか?
と疑問を抱いていたら、私の目線の先に加藤さんの顔があった。
私は加藤さんのもとに行き話をしてわかったことがある。
1 顔がしっかりと確認することができる。
2 私は柵が不安定なため揺れていたが、笑っていた男は揺れていなかった。
3 その人物が何故男で笑っていたと認識したのか不明
その後周辺にいる作業員に話を聞くもそんなイタズラはしていないとのこと。
疑問が疑問を抱く。誰だ?
私は見ていないが、加藤さんの反応を見る限りその男はいた。
そう判断せざる得ないほど加藤さんは不気味さに肩を震わしている。
ずっと仕事を中断するわけにもいかず作業を再開することにした。
2人でしゃがみ梱包材料を機械にセットしていると、加藤さんがぶつぶつと呟いている。
きっとさっきのことを考えているんだろうと思ってると
おい、さとし、さっきから何ぶつぶつ一人で喋っとん?オレになんかいいよんか?
え?私は何もしゃべってないで。
加藤さんこそさっきから1人言を言うてるやん。
いやいや、オレそんなんしてないわ笑
私だっ
うわーーーー!!!
私の言葉を遮るように加藤さんの悲鳴が響く。
私は驚いたがそれと同時に私の耳元で
○○が○ばで○じ○○びぶ○が
ひどく低い声で耳に吐息がかかるほど近い距離でその声は響いた。
濁点のつく言葉だけ聞き取れたが、それ以外何を言ってるのか聞こえない。
もちろんそこには私と加藤さんしかいない。
誰かいるわけもないのだ。
誰かに耳元で喋られた!!
なんかぶつぶつ言うてた!
加藤さんはパニックになっていた。
私しは加藤さんを連れて非常口を開け外にでた。
そとの空気をすわせ落ち着かせるためだ。
話をきくと、私のように
ぎぢ○○ど○ば○○○ぞげ
といったように濁点がつく言葉だけ聞き取れたが他は聞き取れなかったそうだ。
耳に吐息がかかるほど近かったことも共通する。
ひどく低く濁った男の声だ。
あの声の主が加藤さんの見た笑っている男なのかはわからない。
なにも分かったことがなかったのだから。
あなたは幽霊の言葉は聞いたことがありますか?