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53 ロシェルの失敗

「きゃあああっ!」


 夜、いきなり至近距離で聞こえた悲鳴に、ワイは驚いて飛び起きた。


「何事ンゴ!?」


 すぐに電池式ランタンを点灯する。

 電池は充電池を使っていて、充電にはソーラーパネルを使っている。時間はかかるがスマホも充電できるやつだ。ちなみにスマホだと朝から晩まで充電し続けないといけないが、充電池なら半日でいい。容量が違うからね。


「って、なんじゃこりゃあああ!?」


 ランタンを点灯したら、ベッドの上が真っ赤になっていた。

 胸から血を流してワイの上でぐったりしているエレナと、血まみれの剣鉈を握っているロシェル。

 どういう状況!?


「おい、エレナ! エレナ!」


 呼びかけてもエレナは返事をしない。

 胸からどんどん血が流れていく。





 夜、ベッドに入ると、ロシェルはだんだん不安になってきた。

 セカンドとミネルヴァの話を聞いて、大丈夫そうだというのは安心材料だったが、思い返すとなんだか穴だらけの話だった気がしてきたのだ。


『解毒魔法が使えない毒については、解毒法を研究するしかないそうで、()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()解毒剤や解毒法が開発済みだそうですわ。』


 ミネルヴァはそう言っていた。

 じゃあ、過去に使われたことがない毒だったら? 人間の国とエルフの国という違い、とりわけエルフは排他的だから、脅迫してきた犯人がエルフだったら、人間の国では使われたことがない毒が使われたのかもしれない。というか、エルフ王国にエルフ以外が立ち入ることはないと言ってもいいから、ほぼ確実にエルフが犯人だろう。

 それに「たいていは開発済み」ということは、一部は開発できていないという事ではないか。エルフ王に使われたのは、本当に解毒法が開発済みの毒なのだろうか?


『結果的に、毒の種類は()()特定できましたわ。』


 ほぼ? ほぼって何?

 かなり範囲を絞れたけど、確実に間違いなくこれだ、という確定ができない状態という事か?

 じゃあ、診断が間違っていたら? 解毒法が違っていたら?


『ただ、その毒は解毒剤が存在しない毒で、毒素が体から自然に排出されるのを待つしかないという話でしたわね。』

『問題は、毒が抜ける前に体力が尽きることンゴ。』


 父上(エルフ王)が死ぬ……?

 セカンドやその妻たちは、みんないい人だ。尊敬もできる。好ましい。セカンドに対しては恩もあるし、さらにエルフ王国が発展する可能性を期待できる。女としても、王族としても、セカンドに抱かれるのが嫌だとは思わない。

 しかし、父上(エルフ王)と天秤にかけるなら……。


 セカンドを殺せ


 ――手紙には、そう書いてあった。エルフ王に毒を盛ったという情報と一緒に、余計なことをしゃべるな、セカンドを殺せ、そのために嫁になって近づけと。犯人はきっと、保守派の誰かだろう。エルフの盟友になった相手をも殺そうとするほどの徹底的な保守派思考……誰だろうか?

 今のエルフ王は、保守派と開放派のバランスをとる中立の立場だ。エルフ王国の安寧のためには、他国からの侵略を防ぐ必要があり、そのためには他国との関係を良好に保たなければならないと思っている。そして、たぶんそれは正しいだろう。

 保守派はエルフの魔法能力があれば他の種族を圧倒できると思っているが、火災になっただけで自国を守れなくなってしまうのだから、森を焼かれたら滅亡するしかないのは明白だ。

 頭の固い保守派には、そういう事が分からないのだろう。エルフ王のことも、開放派に歩み寄る気に入らない人物だと思っているのかもしれない。だとすると、彼らにとってエルフ王を生かしておくのは、単なる慈悲だ。あるいはロシェルを操るための人質。簡単には殺さなくても、見せしめが必要とあらば殺すのだろう。

 やるしかない……父上(エルフ王)を助けるためには、やはりセカンドを殺すしかないのだ。


「……ッ!」


 ロシェルは剣鉈を握り、眠っているセカンドに向かって振り下ろした。

 今日は早めに眠るという合意があったために、セカンドの部屋には夜の相手をする妻もいない。好都合だった。ドワーフ王の最高傑作をもしのぐ剣鉈なら、簡単に深々と突き刺さるだろう。セカンドも苦しまずに死ねるはず……。

 ――だが。


「きゃあああっ!」

「……!?」


 別室で寝ているはずのエレナが、いきなり現れて、セカンドの代わりに剣鉈を浴びた。

 何が起きたのか分からない。まるで転移。エレナがいきなり現れた。

 とっさに飛びのき、同時に剣鉈を引き抜いてしまった。栓が外れたようにエレナの胸から血が噴き出し、あたりを赤く染めていく。


「何事ンゴ!?」


 セカンドが目を覚まし、ランタンをつけた。


「って、なんじゃこりゃあああ!?」


 叫ぶセカンド。

 ロシェルは茫然としていた。

 ミネルヴァとゲルダが駆けつける。


「おい、エレナ! エレナ!」


 セカンドがエレナに呼びかけ、その頬を叩いても、エレナはもう反応しなかった。

 ぐったりしたままのエレナの、その胸から血が流れていく。

 ミネルヴァとゲルダもエレナに呼びかけ、血を止めようと動き出す。

 ロシェルは茫然としていた。


 失敗した。父上(エルフ王)が死ぬ。エレナも。



 (ロシェル)は何をしてしまったのだろうか――……

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