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52 ワイ、報告したンゴ

 ミネルヴァを乗せて自転車で王宮へ。ワイのレベルが高いのでステータスも高く、体感で100㎞/hぐらい出ていた気がする。王宮に到着したときのミネルヴァが、ひどい揺れで死にそうな顔になっていたのはご愛敬ンゴ。

 で、宮廷医務官という役職にある人物に話を聞いて、ひとまず自宅に戻ることにした。

 急いで戻って、またミネルヴァが死にそうな顔になっていたけど、自宅に到着するとちょうどエレナも帰ってきたところだった。

 というわけで全員そろったので、ロシェルに経過報告することになった。


「エレナのほうは、どうだった?」

「収穫なしです。

 うちの組織は毒を使うことがありません。王都の2号店に協力してくれている組織も同様です。組織の維持拡大には、威圧や威嚇を使うのがメインで、取り囲んで睨んだりイスを蹴ったりするぐらい……実際には危害を加えないことがほとんどです。たまに危害を加えても、暴力です。

 パパの話だと、毒の扱いには専門の知識が必要だから、うちの組織にそんな頭のいい奴はいない、だそうです。」


 ある意味、平和的……? ……なのか?


「じゃあ、毒を使う連中に心当たりは?」

「暗殺ギルド的な連中なら……と言っていました。

 ですが、そういう組織との付き合いはないらしくて……。

 私とロシェルがセカンドさんの妻なので、パパからしてもエルフ王は身内です。貸せるなら手を貸したいとは言っていましたが、エルフ王国にはツテも影響力もないですし、お見舞いに花を贈るぐらいしかできないと……。」

「あー……。」


 まあ、そもそもエルフ同士の宮廷陰謀劇だろうし、裏社会でもエルフ王国とのつながりはないのか。

 にしても、人間のマフィアから見舞いの花を贈られるエルフ王……前代未聞だろうな。


「逆に怪しまれかねないンゴ……。」

「ですよね。」


 エレナがため息をつく。


「じゃあ、ワイらの方ンゴ。」

「宮廷医務官に話を聞いてきましたわ。

 まず、王宮では毒の治療をどうやるのか聞きましたら、基本的には解毒魔法に頼るそうですわ。ただ、暗殺をたくらむような連中は、それを見越して解毒魔法が通用しない毒を使ってくるとの事でしたわ。」


 ミネルヴァの報告に、ロシェルが注目する。


「そ、それで……?」

「解毒魔法が使えない毒については、解毒法を研究するしかないそうで、過去に使われた事がある毒なら、たいていは解毒剤や解毒法が開発済みだそうですわ。」

「それで、毒の種類を特定するために、ワイがエルフ王とその場で念話して、宮廷医務官に問診をやってもらったンゴ。」


 宮廷医務官は、どういう症状があるか、最近の様子はどうか、何を食べたか、どのような生活習慣か、など事細かく質問していた。直接エルフ王の姿が見えないという事もあって、問診は2時間以上に及んだ。そのうちエルフ王国の宮廷医務官相当のエルフも呼び出して、ワイとエルフ王は医務官同士の電話機状態になったンゴ。


「結果的に、毒の種類はほぼ特定できましたわ。

 ただ、その毒は解毒剤が存在しない毒で、毒素が体から自然に排出されるのを待つしかないという話でしたわね。」


 医務官同士の話は専門用語が飛び交いすぎて意味が分からなかったけど、ふぐ毒で知られるテトロドトキシンとか、そういう感じだと思うンゴ。


「問題は、毒が抜ける前に体力が尽きることンゴ。

 だから体力を補うために回復魔法をかけるといいらしいンゴ。エルフ王宮にも回復魔法を使えるエルフはいるっていう話だったし、エルフ王のスキルもあるから、もう大丈夫だと思うンゴ。」


 ロシェルはもちろん、エレナもゲルダも、ほっとしていた。

 ロシェルは安心したのか、泣き出した。

 ワイらはロシェルを抱きしめて背中やら腕やらをさすりながら、窓から差し込む夕日に照らされていた。


「今日はもう暗くなるから、明日にでも出発しよう。」

「そうですね。お見舞いに行きましょう。」

「お見舞いの品は、何に致しあそばしますドワ?」

「エレナのお父様からも、お花を預かっていきましょう。

 ……けど、またあの自転車に乗るのですか……?」

「今度はもうちょっと速度を落とすよ。ゆっくり走れば、そんなに揺れないから。」


 リヤカーにはサスペンションもついている。

 とはいえ、20㎞/hぐらいで走ることを想定したものだから、100㎞/hも出したらさすがに揺れるのだ。路面も地面がむき出しで、あんまり滑らかじゃないし。馬車が通ってわだちになったり、えぐれたりしている。

 そもそも、後ろが1人から4人に増えたら、重さが4倍。普通にスピードが出せなくなる。たぶん。

 でもまあ、今日こいだ感じだと、4人乗せて引っ張っても特に問題なくこげるだろう。ステータスの恩恵ってすごい。


「それに、ちゃんと座席を用意するよ。」


 自転車には、リヤカーの種類が豊富にある。中には、前輪がついていない自転車を、普通の自転車に連結する感じのリアカーもある。

 胴体が長くて5人ぐらいで一緒にこぐリムジンみたいな自転車があるが、あれはすべてのペダルが完全に連結していて、全員が同じ速度でこがないといけない。サボっても他の人がこぐ限り、ペダルは自動的に動いてしまう。これは、5人分のペダルがすべて1つの車輪を動かすようにチェーンで連結してあるから、どうしようもない事だ。

 ところがリアカータイプなら、5人といわずいくらでも連結できるし、それぞれのペダルがそれぞれ異なるタイヤに独立して動力を伝えるため、各自すきなペースでペダルを漕げる。もちろん一番速くこぐ人に負担が集中するわけだから、リムジンタイプと比べてペダルは重たくなるだろう。良し悪しではある。

 連結して長くなった自転車は、バランスを保つのが難しい。カーブしたときに倒れないように、左右2輪あるタイプのリアカーを混ぜるといい。補助輪の役割をしてくれる。


「そういうわけだ。今日は早めに寝よう。」

「ですね。」

「ですわね。」

「すぐに夕食の支度をしますドワ。」

「みんな、ありがとう……。」


 そのあと食事をとって、入浴して、寝た。

 そして、その夜――


「きゃあああっ!」

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