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51 ワイ、できる事を考えたンゴ

 エルフ王から伝言を受けたンゴ。


『毒飲んじゃった。死にそう。死んだら教えるから、(ロシェル)によろしく。』


 ワイに解毒剤は召喚できない。

 言いにくいわー……と思っていると、


「何を1人でしゃべっているのですか?」


 と、さっそくロシェルに見つかったンゴ。

 うわー……。


「ああ……えっと……実は――」


 伝えないわけにもいかないので、エルフ王が毒で死にかけている事を伝えた。


「そんな……! 父上……!」


 さすがにロシェルはショックを受けていた。

 実の親が死にそうなんて情報を聞けば、誰でもショックだろう。前世の世界で、ワイには看護師の友人がいた。患者(他人)なら冷静に対処できる看護師だって、自分の親が死にそうなときには「いつも仕事でやっている判断」ができなくなる。

 日々大勢の患者に接し、年に何人も死亡する例があるので、「こういう患者の末期には、こういう処置をしたほうが、本人に負担がなくてよい」という情報を大量に持っている。ただし、たいていの場合「本人が楽に死ねる方法」というのは「実行可能な延命処置をしない」という意味になる。

 他人の患者なら、家族に対して「どうしますか?」と判断を投げる立場だが、自分の親が患者になったら「いつ死なせるか判断しなくてはならない」という立場になってしまう。友人は、考える事さえも放棄して現実逃避に走り、とうとう自分で判断できず、他の身内に任せたそうだ。


「ゲルダ。」

「はい、ご主人様。お呼びあそばしましたドワ?」


 隣の部屋からゲルダがやってくる。


「ロシェルを頼む。かくかくしかじかでショックを受けている。」

「エルフ王が!?」


 後は任せて、ワイは歩き出した。

 エルフ王のスキル「猶予」は死を遅らせる効果があるらしいが、「遅らせる」ということは「いずれ来る」ということでもある。猶予がどのぐらいあるのか分からないので、急ぐに限る。


「エレナ! ミネルヴァ!」

「はい。」

「どうしましたの?」

「力を貸してくれ。

 かくかくしかじかで解毒方法を知りたい。その手のことに詳しい人物に当たってみてくれ。」


 エレナはマフィアのボスの娘。マフィアなら毒に詳しい人物もいるかもしれない。

 ミネルヴァはこの国の王女。王宮では毒による暗殺にも警戒しているだろう。食事にかかわる人物の身元調査や、王が食べる直前での毒見役など、何重にも対策をしているはずだ。そして当然、万一毒を盛られてしまった場合に、治療するための人員や薬剤も。


「わかりました。すぐに。」

王宮(実家)へ急ぎますわ。」


 エレナとミネルヴァが急いで出ていく。

 なぜだか、すぐに馬車か何かが走ってくる音がして、ミネルヴァが「急いでください」などと叫んでいるのが聞こえてきた。

 どういう事すぎ……あ、そうか。SPみたいな身辺警護がついていたのか。全然気づかなかったけど、ワイらの負担にならないように、姿を隠してこっそり守ってくれていたんだろう。……あれ? もしかしてワイらの夜の営みまで監視されていたりする……? うわ……恥ずかしー!

 って、そんなこと考えてる場合じゃない。切り替えていこう。


「あとは、ロシェルをエルフ王国に帰らせてやるぐらいか……。」


 何もできなくても、そばにいたいはずだ。

 本当ならワイも(身内)として一緒に行くべきだろうが、血縁がないせいか冷静でいられる。エレナとミネルヴァが何か掴んで帰ってこないか、そっちへ期待して居残りたい気持ちがある。

 ワイは自動車やバイクだって召喚できるのだ。ガソリンが召喚できなくて動かないけど、電気自動車ならいける。馬車よりはるかに速いから、何か掴んできたならワイがいたほうが早く助けに行ける。充電できないから使い捨てになってしまうけど、命には代えられない。


「他にできる事は……。」


 と考えながら腕を組み、なんとなく袖のしわをつまんだ。引っ張って離して、引っ張って離して……とボールペンをむやみにカチカチさせるみたいに落ち着きなく指を動かしていたら、うっかり袖を引っ張りすぎて破れてしまった。


「あっ……。」


 何の抵抗もなくビリっと。まるでティッシュでも破るように。

 そういえばレベルが上がってステータスも上がっていたんだった。


「……ん? あ。」


 充電できない電気自動車より、自転車を使う手があった。動力源が人力だから普通はエンジンやモーターに対抗できるようなものじゃないが、今のワイのステータスなら? 自転車用のリアカーを使えば、物資や人員も輸送できる!


「ロシェル! ゲルダ! 俺も王宮へ行ってくる!」


 外に飛び出し、自転車を召喚して飛び乗った。路面が舗装されていないので、マウンテンバイクを選択。最初はちょっと力がいるんだよな、と前世の感覚でペダルをこいだ瞬間、まるで大型バイクのスロットルをうっかり開きすぎたみたいに車体が跳ね上がってウィーリーしたまま走っていった。リアカーがなかったら、ひっくり返っていたかもしれない。

 無理やり押さえつけてバランスを戻し、すぐにミネルヴァの馬車に追いつく。ミネルヴァにはこっちに乗り換えてもらって、ワイは全力でペダルをこいだ。乗り心地? 後ろは最悪だろうね。

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