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50 ワイ、念話を受けたンゴ

 そんなこんなで歓迎会も終わって、風呂を沸かして入ったり、食事にしたり、寝たり。

 エルフのおっぱいは慎ましやかだったンゴ。

 ゲルダが聞いたら怒りそうだけど、エルフはロリっぽさがないからなぁ。ワイ的にはセーフ。絵面的にもオッケー。大丈夫だ、問題ない。

 ま、おっぱい星人のワイとしては、ちょっぴり残念に思ったが、それは黙っておくンゴ。

 ……で、そんなこんなしながら何日も過ぎた頃、エルフ王から念話が来たンゴ。


『セカンド殿、今いいだろうか?』

「その声は、エルフ王? 念話ってこんな感じなのか。」


 なんとも不思議な感じンゴ。

 どこから声が聞こえてくるのか分からない。たぶん「頭の中に直接」というのが正解だろうけど、近い感じがしない。かといって遠くから聞こえる感じでもない。もちろん中距離でもない。前後左右上下どこから聞こえるという感じもしない。なんというか、周囲の空間全体から聞こえてくるような感じンゴ。


『聞きたい事があるんだが。』

「なんでしょう?」

『解毒剤を売ってないかね?』

「解毒剤はないですね。

 蛇に噛まれたり蜂に刺されたりしたとき用の、毒を吸い出す道具ならありますが。」


 ポイズンリムーバーといって、変な形のデカい注射器みたいなものだ。

 傷口に押し当てて、ピストンを引くと、シリンジ内部の気圧が下がって、毒が吸い出される。

 誰かが口で吸いだすと、吸い出した毒に感染する恐れがあるので、こういう道具を使うといい。

 この世界を薄い板から見ている神様からも「高周波ブレードはあるのに解毒剤はないのか」的な問い合わせがあったけど……心苦しいけどないんだからしょうがないンゴ。すまんかった。

 毒対策アイテムで高周波ブレード並の先進技術が使われたアイテムは? といわれたら、一応「ある」けど、今回の場合は使えないンゴ。というのも、それは「蚊帳」だからだ。クモの糸を研究して作られた超強靭な繊維が使われた蚊帳で、毒蛇や害虫を完全にシャットアウト。防弾チョッキや命綱にも使われるその繊維は、毒蛇や蜂どころかクマに襲われても破れない。

 ただ、布と同じように柔らかいから、打撃の衝撃は通ってしまう。クマに襲われたら、骨折や内臓破裂で死ぬだろう。でもクマが出るキャンプ場というのもある。じゃあ、どうするか。蚊帳やテントを支えるポールやロープを、頑丈なトンデモ性能の高級品にすればいい。ペグも長いやつを1か所に3本ぐらい刺して、地面への固定強度を高めておく必要があるだろう。

 まあ、そこまで防御力に全振りしなくても、獣除け線香があれば熊はたいてい大丈夫だと思うンゴ。


『そうか……毒は、どうやら口から飲んだらしいのだが。』

「残念ですが、それではお役に立てません。

 毒には非常に多くの種類があり、それぞれに対応した解毒剤でなければ効果がないのです。ですから、まず毒の種類を診断するだけの知識と医療器具、そしてそれに対応する解毒剤がどれなのかという情報、さらに投与するべき解毒剤の量、十分に経過観察できるだけの知識と医療器具、必要な場合には追加の処置、といった具合に色々なものが必要です。しかも、その扱いには特別な国家資格が必要で、私はそれを持っていませんので、取り扱いがないのです。」


 さらに言うと、取り扱いに医師免許や薬剤師免許が必要なレベルの薬は「キャンプに使う道具」の範囲を超えてしまって、召喚できないンゴ。医療器具も同様。召喚できたとしても、万一違う解毒剤を与えてしまうと、解毒剤自体が毒になるかもしれない。解毒剤というのは、簡単にいえば毒と反対の作用をする毒だからね。

 同じ理由で、危険物取扱免許が必要なガソリンも召喚できないンゴ。だからワイは、車やバイクを召喚しない。オートキャンプやキャンプツーリングという言葉がある通り、車やバイクは「キャンプに使う道具」として召喚できるのに、燃料のガソリンが召喚できなくて動かないンゴ。ちなみに電気自動車なら召喚できるし動くけど、充電できないから召喚するつもりはない。


『ふむ……セカンド殿の故国ではそのようになっているのだな。』

「エルフ王国では、どのように?」

『解毒の魔法というのがあって、それ1つですべての毒が抜けるようになっている。

 もっとも、今回はそれが通用しないから相談しているわけだが。』


 なるほど。それは大変だ。

 しかし、エルフ王がわざわざ念話を使ってくるほどの人物が、毒を飲んだのだろうか?


「ちなみに、どなたが毒を?」

『私だ。』

「ファッ!?」


 まさかのエルフ王本人ンゴ!?


「なんで毒なんて飲んだんです!?」


 馬鹿なの、この王様? 馬鹿なの!?


『飲みたくて飲んだわけではない。

 食事に混じっていたのだろう。誰の差し金で誰がやったのかは、まだ分からないが。』

「毒見役とか居ないんですか!?」

『毒を探知する魔法を使う役職がある。

 私の食事はその検査を受けてから、運ばれてくる。

 そして魔法とは世界の摂理を個人的に利用する行為だ。である以上、魔法が探知しそこなったという事はあり得ない。空中に持ち上げて手を離したのに、離した物が落ちなかったというぐらい、あり得ない事だ。』

「手を放しても落ちない物なら、いくつもありますね。

 探知をすり抜けるような毒があったのでは……?」

『そんなものがあるのか?』

「はい。

 たとえば、火であぶって加熱した空気は、他の空気より軽くなって、空中では浮き上がっていきます。軽い素材でできた大きな袋があれば、袋の中の空気を熱することで、その袋(熱気球)を浮かせることができます。

 他にも、水に雷が落ちた(電気分解)ような場合に、水が分解されて2種類のガス(水素と酸素)になります。このうち片方(水素)は、通常の空気よりも軽く、浮き上がっていきます。これも袋などに密封すれば、その袋(飛行船)を浮かせることができます。

 さらに、板状の物体を斜めに固定して高速移動させれば、速度次第で木材(竹とんぼ)でも金属(ヘリコプター)でも宙に浮きます。この板の断面が、丸みを帯びた三角形(飛行機)であれば、浮かせる力はさらに強く働き――」

『分かった分かった。

 そのあたりの情報は、いずれ我が国に来てくれたときに、職人を集めて披露してもらいたい。』

「そうですか? まあ、とにかく条件次第で空は飛べるのですから、探知魔法も条件次第ではすり抜け可能なのではないかと思います。」

『非常に勉強になる話だな。』

「というか、すべての毒が抜けるはずの解毒魔法で抜けない毒がある時点で、すりぬけ可能ですよね。」

『あ……。』


 あ……って……。

 魔法を盲信しすぎじゃないか? 得意なことに頼ろうとする気持ちは分かるけれども。

 あと考えられるのは、探知係がサボったとか……いや、これはないか。

 エルフは閉鎖的だから、それは考えにくい。

 閉鎖的というのは、程度がエルフほど進んでいると、相互監視状態に近い。コミュニティのルールに反する行為をすると、すぐにその情報がコミュニティ全体に流される。いやがらせは受けなくても、無視されたり避けられたりして、もとからボッチ好きの孤高タイプでなければ、大変に居心地が悪くなる。まともに生活できないほどに。

 だから毒の探知係がサボったとは考えにくいのだ。それで何かあれば――何かあったわけだが――コミュニティ全体から白い目で見られる。もはやそのコミュニティで生活するのが不可能なほどに。だからこそ、サボれない。

 とはいえ、ずーっと問題ない状態を繰り返していると、サボりたくなる気持ちが芽生えてもおかしくないが。これはエルフへの侮辱になるから、黙っておこう。前世が営業職のワイとしては……いや、そうじゃなくても、普通にヤバい発言だと分かるだろう。特にエルフ相手では。


「ていうか、エルフ王、あなたは大丈夫なのですか?」

『いや、いつ死ぬか分からない状態だ。

 もっとも、私のスキルは『猶予』といって『死を遅らせる』効果がある。今はそれで生きている。体調不良は前からだったんだが、とうとう昨日倒れてしまってね。ベッドに運ばれて、気づいたのがついっさきだ。こうなるまで、毒だとは気づかなかったよ。ただの体調不良だろうと思っていてね。』

「全然大丈夫じゃねぇ!」

『死んだら連絡するようにしておくから、ロシェルには覚悟だけしておくように言っておいてくれないかな?』

「……はぁ……。承知しました。」


 だいぶ深いため息が出たわ。


「あの……旦那様? さっきから何を1人でしゃべっているのですか?」


 ロシェルに見つかった。

 ……ちょっと、ワイ、どういう顔したらいいンゴ?

 うーん……めっちゃ説明しにくいわー……。

 実は死にかけの父上から伝言頼まれたとか……うわー……超言いにくいわー……。

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