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5:ワイ、牢屋にぶち込まれたンゴ

 兵士に引きずられていったワイは、犯罪者みたいに縛られたまま馬車に乗せられて首都へ運ばれ、王城に連れ込まれて、地下牢に放り込まれてしまったンゴ。

 どういう事すぎる……。


「ワイがいったい何をしたンゴ……。」


 混乱しすぎて、前世の素の口調が出てしまったンゴ。


「あんだけ派手にやっといて、何すっとぼけてんだ。」


 ワイをここまで連れてきた兵士たちはすでに立ち去り、牢屋の担当者の兵士が鍵をかけながら呆れる。

 ようやく会話が成立したことで、ワイは我に返った。


「食料もなくて生活に困っているスラムの人たちに、必要なものを渡しただけですが、この国では生活に困っている人を助けたら犯罪なのですか?」

「それだけなら犯罪じゃないけどな、余るほど配ったせいでスラムの連中がそれを売るようになったんだ。」

「ファッ!? 転売してたンゴ!?」


 しまった! それは禁止だと伝えていなかったンゴ!


「知らなかったのか? 売ってるものは激安で良質だし、スラムの連中も最近は身なりがよくなって、スラム街から出てしまえばそれと分からない。それで飛ぶように売れて、おかげで他の店が売り上げガタ落ちだよ。原価割れした値段で売られたんじゃ、勝負にもならないし。」


 原価割れ……洒落にならないンゴ。

 マフィアのボスに報告して取り締まってもらわないと、どこの商店の店主からいきなり刺されるか分かったものじゃない。

 配布量を減らして転売する余裕がないようにしてやるか……あー、でもそこまでやると転売してなかった人が転売した人を恨んでしまうンゴ。「お前のせいで俺の生活まで苦しくなった」とか。で、もともとスラムは犯罪者の巣窟という危険地帯だ。恨んだら一直線に殺人事件まであるかもしれない。

 ……あれ? でも、待てよ? むしろ正規の値段というか、相場の値段で売れば、何も問題なくね? むしろ売りたい奴には売ってやれば、ワイも儲かるンゴ。いっそマフィアの人たちを管理職として使って、スラムの住人を従業員にした巨大ショッピングモールとか実現できるまであるンゴ……! ンゴンゴ! 夢が広がってきたンゴ! これが災い転じてって奴ンゴ!

 あとは、どうやってここから出るか、ンゴ。


「それはスラムの皆さんがご迷惑をおかけしました。

 ……ですが、それで、どうして私が捕まるのでしょう? 転売している人たちが捕まるなら、まだわかりますが。」


 というか、転売しても犯罪じゃなくね? どこの店でも、仕入れたものを売ってるじゃん? それは構造的に転売と同じじゃねーの? まあ、ライブのチケットとか転売禁止になっているものもあるし、パンデミックの最中にマスクを転売するとかは社会的に非難されて当然だと思うけど、そうじゃなかったら転売屋だって立派な商売だ。

 今回で言えば、原価割れという値段設定は非難されても仕方ないとしても、転売そのものは犯罪じゃないだろうし、値段の設定は売る人の自由だ。在庫処分のために赤字覚悟で激安セールをする事なんて、そう珍しくない。

 問題は、他の店が一時的に我慢すればいいだけの短期間の激安セールじゃなくて、ずっと売り上げが落ち続ける恒常的な激安設定という事だ。つまり俺から恒常的に無料で仕入れられるという事が問題の原因で……あれ? じゃあ、やっぱり俺が悪いのか? え? そんな馬鹿な……。

 くそ! 早く巨大ショッピングモールを作らないと! それさえやれば合法化できて全部解決じゃねーか。ついでに周囲の客を吸い寄せまくって、ワイをこんなトコに閉じ込めた商店街をシャッター商店街にしてやるンゴ!


「転売屋の元締めとして捕まったんじゃないか?

 まだこっちに書類が来てないから、ちゃんと知らないけどな。来たら教えてやろうか?」

「お願いします。」


 転売屋の元締めなんて、とんでもない濡れ衣だ。

 ワイが転売を指示していたならともかく、何も知らずにアイテムを渡していただけなのに。ていうか、今までスラムの住人に手を差し伸べてこなかった行政に、「助けすぎて周囲に迷惑」なんて理由で捕まるとか、到底納得できないンゴ!



 ◇



 牢番が立ち去ると、牢屋は静かになった。周囲にほかの囚人はいないらしい。普通の犯罪者が収監される牢獄は、首都から出て、近くの別の都市にあるから、王城の地下牢なんてめったに使われないのだろう。国王暗殺をたくらんだとかなら、ここに入るのかもしれない。


「……あれ? じゃあ、どうしてワイがこんな王城の地下牢にわざわざ連れてこられたンゴ?」


 頭の上に「?」を浮かべて首をかしげてみたが、分からないものは分からないンゴ。

 それより寒い。地下だからよく冷える。地下の気温は一年を通して安定しているが、ここは今16~17度ぐらいだろう。

 とりあえず衣類を出すンゴ。冬キャンプ用の服装でもすれば、だいぶ暖かいはず。まずは吸湿速乾性に優れた肌着。アウトドア用品メーカーから出ている肌着もある。それから蒸れを防げて温かさを保てる中間着。フリースがいい。アウトドア用のフリースには保温、吸湿速乾、軽量性やストレッチ性を備えた、他のフリースよりも高機能な素材が使われている。最後に上着。これもアウトドア用のものがあって、防水で透湿性のある素材、しかも焚火で火の粉がかかっても燃えにくい。


「ぬっくぬく……ちょっと暑いぐらいンゴ。」


 氷点下まで耐えられるレベルの服装だからな。16~17度では暑すぎる。上着を脱いでフリースで過ごすとちょうどいいか。上着まで着ていると、このまま寝具なしで眠れるぐらい暖かい。


「よし、寝るンゴ。」


 とはいえ、牢屋の寝具は寝具とも呼べないような薄っぺらい敷物があるだけで、とても快適とはいえない。でも大丈夫。ワイのスキルなら、いつでもどこでもキャンプができる。牢屋の中だってワイにかかれば区画サイトも同然だ。むしろ屋根壁があってテントやタープをたてる必要がないから楽ちんンゴ。

 ハンモックを召喚。スタンドを組み立て、ハンモックをセットして準備完了。座ってみると、独特の浮遊感があって心地いい。ぶ~ら、ぶ~ら……ちょっと横になるンゴ……スヤァー……。


「おい、起きろ。」


 ……ん?

 誰か来たンゴ……?

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