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46 ワイ、なんか肩書をもらったンゴ

 エルフの農民たちによる、ザルから地面への植物の移し替えがおこなわれた。

 株分け・挿し木をやった植物の8割が成功したので、焼けた森の大部分がこれで元通りになる。食糧庫としては今まで以上になるだろう。


「間隔をあけて植えてください。

 育ったときに、お互いの木の葉が邪魔で日差しを遮ることのないように。」

「「了解しました、セカンド様!」」


 なんか2週間で「様」つきになったンゴ。

 ちょっと恥ずかしいというか、戸惑うというか……。

 手のひら返しがすごすぎて、スラム街で人気者になったとき以上に来るものがあるンゴ。

 今ワイがどんな顔をしているかって?


(;´∀`)  (・`◡´・)ゝ(・`◡´・)ゝ(・`◡´・)ゝ


 こんな顔ンゴ。


「エルフは排他的だと聞いていましたけど、すっかり人気者ですね。」

「ですわね。これはちょっと普通では考えられない事ですわ。」

「ご主人様の努力と献身のたまものですドワ。」


 努力はちょっと違うんじゃないかなー……あんまり頑張ったわけじゃないし。

 ま、黙っておこう。

 エルフの農民たちは、植え替えた植物にさっそく魔法をかけていった。たちまち植物が育っていく。ちょっと見ていて気持ち悪いな。なんか触手がのびていくみたいで。


 4号店の売り上げも好調だ。食料がまとめて売れるからね。その食料は、エルフ王国がまとめ買いして、国民に分配している。

 そこで保冷バッグと冷却魔道具を組み合わせた新商品が、飛ぶように売れているらしい。これまでは採集したものをその日のうちに食べていたが、今は1週間に1回の配給。保存する必要性が激増したわけだ。王宮としても、人数や健康状態の把握など、毎回情報を集めて更新する必要があるので、1週間に1回の配給が限度だ。状況把握を放棄しない限り、それ以上のペースにはできない。

 改良版魔道具がこれだけ売れてくれれば、森が元に戻っても改良版魔道具は普及したままだろう。これから他国にも売っていくわけだし、もう食料の売り上げがなくなっても4号店は黒字だ。


 で、その王宮からまた呼び出された。


「どうぞ、お通りください。」

「こちらです。」


 と、今度は兵士たちの対応もよく――


「本っっっ当に助かった! そなたこそエルフ王国の救世主だ!」


 エルフ王に至っては、拝み始めるんじゃないかと思うほどの勢いで感謝された。


「森林火災の鎮火、魔道具職人への技術供与、その改良版魔道具の販売権をこちらに渡した利益供与、農業被害からの復興支援……我がエルフ王国はそなたから返しきれないほどの恩を受けた。

 よって、セカンド殿を『エルフの盟友』と認定し、今後は我らエルフの惜しみない協力を約束するものである。」


 エルフ王が玉座の階段を下りて、ワイに何かの魔法をかけた。

 王様が玉座の階段を下りてくるなんて、通常あり得ないンゴ。玉座の階段は「身分の上下」を示すためのもので、王様がその階段を下りるというのは「相手と同等の立場になる」という事を意味する。


「身分証明のような効果を持つ魔法だ。

 以後、エルフがセカンド殿を見れば、セカンド殿が『エルフの盟友』であることや、エルフがどれほどの恩を受けたのかが分かるようになった。

 何も知らぬエルフにでも通用するから、今後はセカンド殿がエルフに拒否される事はないだろう。

 もちろん、この王宮にも好きな時に入ってきてもらって構わない。用があれば遠慮なく来てくれ。

 あ、ちなみにこの魔法をかけた術者と、かけられた対象者との間では、念話ができるようになる。来る前には一言伝えてくれるとありがたい。」


 参列していたエルフたちから、一斉に拍手が沸いた。誰も彼もが笑顔満面で、この上なく歓迎されている事が分かる。

 うーむ……あの排他的なエルフが、こうも態度を変えるとは。

 ワイにとって害はないが……開放派の勢力拡大にはつながったのだろうか? ワイ以外の他種族に対して相変わらず排他的というのでは、この国……いや、別にいいか。この先どうするかは、エルフの問題だ。ワイはこの国を変えに来たんじゃなくて、4号店を出しに来たんだし。

 ……じゃなかった。キャンプを楽しみに来たんだ。

 状況がよくなったし、盟友とやらになったのでエルフの店で買い物もできるはずだ。ならば実行できるだろう。

 特産フルーツの食べまくりキャンプ……うへへへ……じゅるり……。





 セカンドへの態度に手のひら返しを起こしたエルフ王国。

 アワスフェイスは、エルフからの商品の売り上げを増やそうとしていたが、最終的にエルフが「今は技術開発に注力するべき時」との認識で、売り上げを増やそうとするアワスフェイスとの足並みが揃わなくなる。


「く……! 今は何もするなと……!?」


 スキル「通知」によって、何をしてもエルフの機嫌を損ねることが分かってしまう。関係を悪化させるような失態こそせずに済むものの、成果が出せない。


 一方、セカンドの嫁、王女ミネルヴァの、その父である国王は、ミネルヴァからの報告でセカンドの活躍を知る。ミネルヴァとしても、エルフ王国との関係がよくなるカードを手に入れたことを、父に黙っておく理由はないのだ。

 この報告を受けて、ミネルヴァの父は思った。


「大使のアワスフェイスは、何をやっておるんじゃ?」


 魔道具の売り上げが落ちたことでエルフ王国との関係悪化が懸念されていたので、アワスフェイスにはその対策を命じていた。だが、そちらからは何も成果が上がってこない。

 それに比べて、セカンドはエルフの盟友に認定され、改良版の魔道具を売り出す手伝いをしたという。


「……もう、アワスフェイスを解任して、婿(セカンド)殿に大使を頼んだほうがいいんじゃね?」


 そしてセカンドが王城へ呼ばれた。


「と思うのじゃが、どうじゃ?」

「あー……店がありますので、大使になるのはちょっと……ですが、まあ、連絡係ぐらいなら。」


 盟友認定の魔法でエルフ王とは念話ができるようになっている。


「であれば、特別補佐官か何か肩書を作るから、連絡係を頼めまいか?」

「分かりました。」


 ということで、セカンドがそういう役職をもらう事になり、事実上、アワスフェイスの上司みたいな立場になった。

 アワスフェイスは、失脚こそしなかったが、無能のレッテルをはられる事になり、敵視していたセカンドの部下のように扱われ、3か月できれいにハゲるほど大変に業腹だった。しかしセカンドに手を出せば、エルフ王国との関係が劇的に悪化する可能性が高い。自動的に自分も失職しかねないので、もはやハゲるに任せて我慢するしかなかった。

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