45 ワイ、今世の知識で知識チートするンゴ(……これが種族格差かンゴ)
ワイらがエルフ王国に来た直後、森林火災が起きた。
ワイは水を召喚して火を消した。ちなみにエルフの消火部隊は消火に失敗していた。火災の規模がそれだけ大きかったわけだ。
で、その結果、エルフが食料にしていた木の実や野草などが根こそぎ燃えてしまった。
火災に巻き込まれなかった部分は無事だが、火災の規模が大きかったので、エルフ王国としては餓死者が出ることを懸念するレベルらしい。
そんなわけで、4号店でも食料を売ることに。今までは買ってくれる人がいなかったから扱ってなかったンゴ。けど、エルフ王が買ってくれるというんだから、売れるのなら断る理由はない。
しかし森が元に戻るまでに5年かかり、それだけの期間、ワイの店から食料を買い続けるほどの財力はないらしい。
それにしても、5年で森がもとに戻るなんて早い。魔法で植物の生長を促すらしいが、そうでなければ50年はかかるだろう。
「挿し木? 株分け? なんだ、それは?」
農業と称して採集しているぐらいだから、知らないだろうと思ったが、やっぱり知らなかったらしい。
「挿し木というのは、木から枝を切って、それを地面に植えます。うまく手を加えると、枝はそのまま育ちます。
株分けというのは、野草などを同じように分けて増やす方法です。
これらの方法を使えば、選択的に特定の植物を増やすことができ、食料事情は回復するでしょう。」
そうやって食用の植物を集めたのが畑だ。
特定の植物ばかり集め、本来は自生しない場所に育てるので、栄養分や水分などを人為的に調整してやらないといけないが。
採集に比べて収穫量が多く、かつ安定している反面、どんどん手間がかかるようになっている。とってくるだけで一切世話をしなくていい採集と比べて、どちらが「効率的」なのかは、ワイとしてはちょっと疑問に思うンゴ。
まあ、人間が今から採集の生活に戻ったら、食料が足りずに大量の餓死者が出ると思うけど。
「なんと! 人間の農業はそこまで進んでいたのか!
教えてくれ! それはどのようにやるのだ!?」
というわけで、エルフ王に乞われて、挿し木や株分けの指導をすることになった。
エルフの農民(という名の採集係)たちの代表者・幹部連中に集まってもらって、実際にやり方を見せる。前世ではやった事ないけど、今世では実家(農家)からポイされるまでに労働力として使われていたから、やったことがあるンゴ。
「まずは簡単な株分けから。
手順としては、ちぎって地面に植えるだけです。簡単でしょう?
ただし、株分けに適した植物でなければいけません。具体的には、地下茎や根元で子株ができる植物ですね。」
増やしたい野草を見せてもらい、その株を根元から2つに割る。
そして、それぞれを分けて埋める。
やる事はそれだけだ。
「次に挿し木ですが、こちらは少し手順が複雑です。
まず、葉を数枚つけた新芽の部分をカットします。
このとき、古い枝だと生命力が足りずに枯れてしまいます。」
実演しながら説明する。
なお、植木鉢がないのでザルで代用することにした。
「切り分けた先端部分――これを『挿し穂』と言いますが、これを1~2時間、水につけます。
これも、怠ると枯れてしまいます。」
そして1~2時間水につけたものがこちら。
「水につけたら、清潔な土に植えます。新芽は赤ん坊のようなものですから、病気などに抵抗力が弱く、清潔な土を使わないと死んでしまいます。
そして、水をたっぷり与える。まだ根がありませんから、水を吸いやすいように、よく土を濡らしてあげてください。
そうしたら、風通しのよい明るい日陰に置きます。つまり森の中なら、どこでも大丈夫でしょう。今回は容器を使いましたが、土が清潔であれば、植えたい場所に植えてしまえばいいという事になります。ただ、燃えてしまった場所では日陰にならない場所も多いでしょうから、気を付けてください。
土の表面が乾燥して来たら水を与えましょう。乾燥が大敵です。
このまま1か月ほど続ければ、根が出てきます。ここは、皆さんの魔法で時間を短縮できますね?
なお、容器を使う場合には、適当に育ったところで、より大きい容器に移すか、地面に移してあげてください。根をのばす余地がなくなると、それ以上育てません。」
受講者たちは、熱心にメモを取っている。
さすがに彼らは、自分たちの仕事と食料がなくなるという危機感を持っているようだ。
「挿し木の手順は以上です。
やり方が分かりましたら、株分けも挿し木も、できるだけ数多くやっておくことをお勧めします。
雨が続いて日差しが足りなくなるなど、うまく育ってくれない事もあります。100%成功するとは限らないので、たくさんやっておけば大半が失敗しても、一部は成功するでしょう。」
受講者たちは、すぐに他の農民(という名の採集係)たちに内容を伝えに行った。
そして大量の挿し木や株分けがおこなわれ、2週間ほどで挿し木に使った枝(挿し穂)が「木」と呼べるサイズにまで育った。
「信じられん! もうこんなに育つとは!」
「焼けた森に回復魔法をかけただけだったら、まだ新芽が出たぐらいだろう!」
「それに、こんな大量に……!」
「焼けた森に回復魔法をかけただけだったら、何が育つか分からないところだ!」
挿し木・株分けは、ワイが思っていたよりうまくいって、約8割が成功していた。
エルフの農民(という名の採集係)たち、大絶賛である。
植物を世話するという概念を覚えた彼らは、今ようやく「農民」になったと言えるだろう。
折よく、エレナやミネルヴァが合流してきた。ワイの嫁、久しぶりの登場すぎるンゴ。
「そんなことをしていたのですね。」
「これでエルフ王国との関係がよくなれば、我が国はますますセカンド様に恩を感じなければなりませんわね。」
「奥様方、ちょうどよい所にお越しあそばしましたドワ。
これからザルで育てた植物を、焼けた森の土へ移す作業を始めあそばしますドワ。」
「「……『ドワ』?」」
「そういう語尾にしましたドワ。ドワーフ成分を出していこうと思いますドワ。レッツハンマー!」
なんかゲルダが力強く拳を掲げている。その手にはペグハンマーが。
ちょっと前にねだられたから与えたけど、そういう使い道!?
まあ、確かに「ハンマーを掲げるドワーフ」って、いかにもドワーフっぽいけども。




