41 ワイ、採用面接をやったンゴ
エルフの街に入ることができた。
宿屋がないらしいが、王宮に泊まれることになった。ラッキー。
「さて、そしたら店を出すための土地と人員だな。」
「ご主人様……人員、お集まりあそばすのでしょうか?」
「それな。」
エルフ王に案内されて王宮へ向かう。
当然、目立つわけだ。
ところが、周囲のエルフたちの視線が、どう見ても好意的ではない。
木っ端役人の態度が非常に排他的だったのも、別にそれが特別ではないというのを肌身に感じるンゴ。
「大変申し訳なく……。」
大使の部下が恐縮しているが、恐縮されてもどうにもならない。
もちろん彼に文句を言っても解決しないので、ワイらは肩をすくめるぐらいしか、できる事がない。
「けど、大使の話では、土地も人員も用意してくれると……たしか28話で言ってたよね?
大丈夫なの、これ?」
「28話って……ご主人様、メタ発言です。」
「コメディ風味だからね。正直ゲルダのあそばせ言葉も毎回ねじ込むのが難しくて……。」
「申し訳ございません。作者のアンポンタンが適当にお付けあそばした特に意味のない設定ですから。」
「そうだね。身から出た錆だね。」
「ご面倒でしたら、今度から語尾に『ドワ』とか付けますドワ?」
「なんでドワ……。」
「ドワーフですから。」
「あ、そう。」
「鍛冶が得意な種族なのにスキルが『剣術』とか、正直作者のセンスを疑いますドワ。
ドワーフ成分少なすぎじゃありませんドワ? せめて『ハンマー術』とかにしてほしかったですドワ。」
「ああ、うん。小さい女の子が自分よりデカいハンマー振り回すとかロマンだよね。
活躍の場がないけど。」
「はいドワ。しくしくドワ……。」
「その語尾、続けるの?」
「続けあそばしますドワ。レッツハンマー!」
「全部盛り!?」
「あの……そろそろ、よろしいですかな?」
大使の部下が言いにくそうに入ってきた。
「あ、ごめん。
で、何の話だっけ?」
「場所と人員の話です。
正直に申し上げまして、セカンド殿の名義では場所も人員も得られないかと思います。
そこで、大使の名義で場所と人員をご用意したいのですが。」
「なるほど。そうすれば大使の功績にもなって、自由貿易が推進されると。」
「おっしゃる通りです。」
「じゃ、そうしましょう。」
◇
そして人員が募集された。
木っ端役人にさえ馬鹿にされる大使の名義で大丈夫なのかと心配したが、応募者はけっこういた。定員が埋まる程度には。
ところが――
「では最後に、何か質問はありますか?」
「はい。
そちらの人間は、なぜここに居るのでしょうか? しかも面接官の席に。」
「それは――」
「あなたには聞いていません。」
ワイが答えようとすると、ぴしゃりと遮られた。
人間の言葉など聞きたくもないということか。
ならば、ワイから言うことは1つしかない。
「うん、不採用。」
「なんですって? 何の権限があって人間ごときが!」
「オーナーだもの。
この店舗の、という意味じゃなくて、チェーン店全体のね。店舗名として公表している通り、この店は4号店なんだ。つまり1号店から3号店までは、すでにあるわけ。その全体のオーナーが私だよ。
それに、商品の仕入れには私のスキルを使っているから、私がいなければ商品の補充ができないし。」
それは今後の課題でもある。
最終的にはワイの寿命とともに店を縮小して閉店するか、さもなければ普通に製造できるように生産ラインを整えるか……後者を選べば、後継者を育てたり、店を売り払ったりできる。
「で、1号店から3号店がどこにあるかといったら、人間の国やドワーフの国だ。すでに店長を集めた会議は開催したが、今後も何かの時には他の店舗の従業員と協力してもらう事があるかもしれない。
しかし君が他種族の話なんて聞きもしないというのなら、他の店舗の従業員との連携はとれないし、私からの命令も無視されるわけだ。そんな人物を部下にはできない。組織として機能しないからね。従って、君は不採用だ。」
すでに、このやり取りを何度も繰り返している。
応募者全員がこうやって同じ質問をしてくるのだ。そして不採用を告げるハメになっている。
大半の応募者は、このあと「こんな店こっちから願い下げ」と怒り散らして出ていく。
そして、それ以外の応募者は――
「そんな! オーナーだと知っていたら我慢しました!」
と、こういう具合だ。
「話にならない。
その言い方だと、お客様や出入りの業者に他種族がいたら我慢しないという事だろう? 現にオーナーだと知らなければ我慢しなかったわけだからね。当店には、そんな思想や価値観から教育し直すほどの手間をかける義理も余裕もない。だから君は不採用だ。」
客として他種族が来ることはないかもしれないが、出入りの業者ならあり得る。
たとえば、ワイが直接出向けないときには、召喚した商品を冒険者に運んでもらう事も考えられる。その時に失礼な態度をとられたのでは、もう同様の依頼は受けてもらえなくなる。それは非常に困るンゴ。
エルフの排他的な性質は、それ自体が悪いとは言わない。外部からの害悪を遮断できるメリットもある。価値観の違う相手と係わるストレスもない。
けど、どんな性質にも適材適所というものがある。
たとえばアルミ合金は軽量で頑丈だから多くの場面で使われるが、刀剣には使われない。刀剣にはある程度の重さも必要だし、アルミ合金の「ねばり」よりも刃物としての「硬さ」が要求されるからだ。
性質自体が良い悪いということではない。状況・場面に適合するかどうかなのだ。
しかし応募してきたエルフは怒り心頭の様子でにわかに立ち上がる。
「馬鹿にしてんじゃあないわよッ!」
びしっとワイを指さして、座っていた椅子を蹴っ飛ばしながら荒々しく部屋を出て行った。
あの感じだと、そう簡単には治らないな。やっぱりワイの店で教育する余裕はない。ま、不採用と決めたのだから、もはやどうでもいい。相手の態度にいちいち腹を立ててやる義理もないし。
そんなことより、頑丈なイスを用意しておいてよかったンゴ。全然ビクともしてないな。




