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4:ワイ、幸せな結婚生活を送ってるンゴ

 嫁の実家がマフィアっていうのは怖いけど、実際に結婚してみて正直これはアタリだったと思う。

 前世の世界には、「天は二物を与えず」という言葉があったが、こっちの世界では二物を与えることもあるらしい。


「セカンドさん、ごはんができましたよ。」

「ああ、おはよう、エレナ。」


 金髪の巨乳美女にしてワイの嫁、エレナは昨日もそのファビュラスなたわわをブルンブルンさせて非常に誉れ高い姿を堪能させてくれたというのに、まるでメイドのように朝からきっちりワイの世話を焼いてくれる。しかも、その手料理は絶品だ。エレナのスキルは「メイド」なのかなと思っているが、本人に聞いても「秘密です」と恥ずかしがって顔を隠してしまうばかりで教えてくれない。

 ちなみに場所はボスの屋敷から少し離れた空き地だ。この土地には建物があったのだが、無人になって急激に老朽化が進み、崩壊した。木造家屋なので、瓦礫はスラムの住人達によって解体され、薪――燃料として使われた。ワイらはこの空き地にテントを張って生活している。

 目下、唯一の課題は、エレナがワイのことを英雄視しすぎて、敬語がやめられないという事だ。このままでは嫁感が足りず、ともすればメイド感が出てしまう。


「セカンドさん、今日は何を配るのですか?」


 エレナが尋ねる。


「えっと……。」


 ワイはメモを取り出した。

 結婚してからそれなりの時間がたって、その間もワイはスラム街の住人に食料や衣料そのほか色々なアイテムを召喚して配布してきた。おかげでレベル上がりまくり、魔力も増えまくりンゴ。魔力が増えたことで1度に召喚できる数が増え、今や食料は1週間に1回ぐらい配布すれば足りる状態だ。時間と魔力に余裕ができたので、食料以外にも衣類とか調理器具とか食器とか医薬品とか、様々なアイテムを配布するようになった。

 そういった状況なので、最近は何を配ってほしいのかアンケートを取るようにしており、そのアンケートの集計作業をマフィアの皆さんにお願いしている。取り出したメモは、その集計結果だ。


「昨日で医薬品まで終わったから、今日は『家を補修できるもの』か。」

「たしか雨漏りや隙間風などで苦労しているとの事でしたね。」

「それじゃあ、ブルーシートと補修用テープかな。あと木材と釘も出しておくか。」


 それが「キャンプで使うもの」か? という感じもするが、実際キャンプで使うのだ。

 ブルーシートはタープ代わりに使う人がいるし、うっかり火の粉で穴が開いたような場合に備えて養生テープやアルミテープを持っていく人もいる。また、テーブルなどをDIYして持っていく人もいるので、木材や釘・ネジなども「キャンプで使うもの」に含まれる。

 かくいうワイも、釘をもっていった事がある。ランタンの代わりにろうそくを持っていったのだが、ろうそくを立てるために、薪に釘を打って貫通させ、突き出た釘にろうそくを刺して立てるのだ。金属製の燭台を持っていけばいいのだが、それではかさばるので釘にした。ろうそくを何本も使っていると、そのうち薪まで燃えてくるので、そうしたらまた別の薪に釘を打って……と、簡単に交換できるわけだ。





 いつもの場所でいつもの時間に、今日は「家を補修できるもの」を出す。

 開始前にはすでに大勢の住人が集まっていて、今や遅しと待っていた。


「ありがてぇ!」

「助かった!」

「これで雨漏りが直せる!」


 スラムの住人たちは口々に感謝を述べて物資を持っていく。

 マフィアの皆さんは行列の整理をしたり、後から来た人たちに何がどこにあるか案内したり、もめごとが起きないように警備員の代わりをしたりしてくれている。

 そして、ワイの横ではエレナが物資を配布するワイをニコニコしながら見ている。エレナはワイのこういう行為が理由で、ワイのことを英雄視しており、好きになってくれた。スラム街を仕切るマフィアのボスの娘という立場からしても、スラムの住人がどんどん生活を豊かにしていくのは、見ていてうれしいのだろう。

 ただ、そんなエレナの姿を見るワイの胸中は、ちょっと複雑だ。この世界の人たちは授かったスキルを「自分の力」として認識しているが、これが当然じゃない前世の記憶をもつワイにとって、スキルの効果は「あくまでも神様からもらったもの」という感覚があるンゴ。

 ていうか、そういえば、だれでもスキルが貰えて何かの分野で一流になれるのに、どうやってスラム街まで転落したンゴ? 腕前が良くても転落する理由……本人の性格や態度が悪いとか、スキルが「暗殺」みたいな普通に暮らしたら使いどころのないものだとか、あとは周囲に嫉妬されたか何かでイジメられてとか……? まあ、人に歴史ありってことで。こんなトコに住んでる人にそーゆーこと聞くのもちょっとね。

 それより、こういう場面でこういう態度をとるべきなのは、マフィアのボスの娘じゃなくて、国王とか領主とか担当官とかであるべきだ。


「失礼! ちょっとすまない! 通してくれ!」


 物品配布に集まった人たちをかき分けて、数人の兵士たちがやってきた。


「物資の無料配布をしているセカンドというのは、お前か?」

「はい、私がセカンドですが、兵士の方々がどのようなご用向きでぶらッ!?」


 答えた瞬間、ワイは兵士たちに襲い掛かられて、たちまち組み伏せられた。


「確保ォ!」

「ファッ!?」


 そのまま縛り上げられて、周囲の人たちが「どういう事だ」と抗議してくれている中、ワイは問答無用で引きずられていった。

 何これ? どういうこと?? これ、どういう状況???

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