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35 ワイ、マフィアが正義の味方をしてもやっぱりマフィアだと思うンゴ

 それからしばらくして、いよいよ訴訟を起こした。

 訴えた相手は複数いるが、いずれもワイらの勝利。まあ、当然だ。

 落書きをした連中は、借金地獄に沈んでもらった。落書きによる「書かれた部分への損壊」に対する補償として、落書きを消すために業者に依頼した場合の費用を請求。さらに、実際には従業員が頑張って消したので、その作業にかかった時間の給料、および作業に伴って店舗の営業を止めていた事による損害額を請求。当然それは普通の人にとって個人で支払うにはちょっと無理のある金額となる。

 一方、クレームを入れてきた連中への判決は、今後同様のクレームを入れることを禁止するという事だけだった。つまり「もうやるなよ?」と言われただけで終わりである。事実上、罰則がない。当然だが、まともな神経をしていない連中にこれでは効果がなく、判決後も「あれは不当な判決だから損害を補償しろ」とクレームが続いた。


「やかましい客じゃのう?」


 タイミングよく表れたマフィアの皆さん。

 幹部1人と、その取り巻き5人だ。

 取り巻き5人がクレームを入れてきた奴を囲んで睨みつける。今日のために特別に顔の怖い人たちを選んでもらったから、効果は抜群だ。相手は縮み上がっている。


「お前の店ぇ、どんだけの損害だったんじゃ?」

「いえ、あの……。」

「はっきり答えんかい! 金額は!?」

「ひいっ……! ひ、百万ほど……!」


 縮み上がった他店の店主が、悲鳴のように金額を告げた。


「おお。そんなら、これで足りるじゃろ。」


 マフィアの幹部は、懐からずっしりと重たい革袋を取り出した。

 それを店主に持たせる。


「へ……? あ、ありがとうございます……?」

「よし。そんじゃあ、そっちの損害はそれでええな?

 そしたら、次はこっちの損害じゃ。」

「は……え?」

「お前、何べんも同じクレーム入れに来とるのう? それに、この前『もうやめろ』と判決出とるじゃろ。そしたらお前のやっとるんは営業妨害じゃ。お前の相手ぇしとる時間に、ほかの客になんなり売れたんじゃ、ボケ。この店の損害を補填せにゃいかんじゃろ。」

「え……そ、それは……。」

「お前の店の損害は補填したったんじゃ。こっちの店の損害も補填せんかい。それでなけりゃスジが通らんじゃろが。おお?」

「は、はひ……。」

「そんでこの店の損害額じゃがのう、こんだけデカい店じゃけえ、売り上げも多いんじゃわ。

 お前の相手ぇしとる時間で、ざっと1千万は売れたじゃろ。」

「いっせ……!」

「ほんで、あとワシらに対する補填もせぇや。」

「はい……!?」

「とぼけるなや! お前が騒いどるんでワシらゆっくり商品見られんのじゃ! ワシらの損害も補填せんかい! お前がかけた迷惑じゃろーが!」

「ひいい……!」

「まあ、心配すんなや。言うても落ち着いて選べんかっただけじゃ。考えまとめるのにかかった時間がざっと倍ってところじゃけえ、余分にかかった時間の分だけ補填せぇ。まあ、これは1万でえわ。」

「い、1万ですか……。」

「おお、1万でええ。

 ただし1人1万じゃ。この店にゃ1日に5万人ぐらい来るけぇ、全部で5億じゃ。」

「ごっ……!?」

「心配せんでええ。稼げる仕事なら回してやるけぇの。

 その代わり、ちょっと危なくてしんどいが、まあ10年かそこらの辛抱じゃ。頑張れや。」


 抜け殻みたいになったおっさんがマフィアのみなさんに引きずられていった。

 きっとカニ漁船か何かに乗せられるのだろう。

 合掌。


 王様にも連絡はとってみた。

 王様は、すでに法整備を進めようとしてくれていたンゴ。


「今回の騒ぎで『販売店はどこまで責任を負うべきか』というのが、宮廷でも問題に持ち上がってのう。

 その結果、今回の場合を一般化して『通常想定される使用環境に適さない特徴を持つ商品』は、すなわち『欠陥品』であり、それによって起きた事故について販売店が責任を負う……と、まあ、そんなところで決着しそうな感じじゃ。」


 つまり、雨天も「通常想定される使用環境」だから防水性の乏しい素材でテントを作ったら、その販売店は責任を問われる。もちろん焚火をすることも「通常想定される使用環境」だ。防水性があって燃えにくい素材でなければ、テントを作ってはいけないという事になる。

 まあ、キャンプ用ではなくピクニック用と銘打って売れば、雨対策はしなくてもいいかもしれない。ただしピクニックにテントを持っていくことは少ないと思うが。着替えたり休んだり、あればあったで便利だけどね。


 そんなこんなで、ワイらはようやくエルフ王国へ出発することになった。

 メンバーは、店主であるワイ、その護衛として(剣術のスキルがあるから)ゲルダ、あとはエルフの大使の部下と、その護衛たち。大使は大使館に残らないといけないらしいが、ワイらにも道案内が必要なので部下をつけてくれることになった。

 エレナとミネルヴァは、まだそれぞれの実家でマフィアの構成員やメイドたちをねぎらっている。

 いよいよエルフ王国の特産フルーツを目指して出発ンゴ!

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