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22/57

22:ワイ、竜の背中に乗っていたンゴ

 新しい朝が来た。ドワーフ王家の親子から解放されて迎える希望の朝だ。

 喜びに胸を開き、大空を仰ぐ。いい青空だ。わずかな白雲と青く晴れ渡った空のコントラスト!

 ラジオでもあれば、健やかな胸をこの香る風に開くところだ。それ、イチ、ニィ、サン!

 新しい空の下、眼下に輝く緑。


「……あれ?」


 ()()()輝く緑……?

 いつの間にこんな高い所に来たンゴ?

 さわやかな風を感じながら、パップテント風に設営したタープを出て、手足を伸ばしてみる。う~ん、のびのび~!

 さて。

 土を踏みしめてみる。どうという事もない土だ。

 体調も万全。健康そのものだ。健やかな手足を、この広い大地に伸ばして……ズシン、ズシン、ズシン!


「ファッ……!?」


 いきなり地面が揺れた。

 それも1回の揺れが1秒未満で、何度も連続して揺れる。

 真下から突き上げられるような揺れだ。

 地震……ではないな。地震だったら、これだけ強く揺れているのに1回の揺れがこんな短いわけない。こんな短い揺れなら、もっと弱い揺れであるはずだ。


「何事ですか?」

「どうしましたの?」


 エレナとミネルヴァも起きてくる。

 2人を振り向いたワイは、その方向のはるか遠くに、何か巨大な塔みたいなものを見た。


「ファッ……?」


 ワイの表情から何かを感じ取った2人も、後ろを振り向く。


「えええ……!?」

「なんですの、あれ……!?」


 毛むくじゃらの巨大な塔。その頂上部分には、毛のないつるっとした円錐みたいな部分がある。サイズを無視していえば、ネズミの顔のような……いや、ネズミというより、モグラか? ひげや目玉や耳が見当たらない。


「知らないのですか、ミネルヴァ?」

「エレナは知っていますの?」

「ええ。実物を見るのは初めてですが、知っている特徴には一致します。

 あれは……アースドラゴンです。」

「アースドラゴン……!

 そういわれれば、確かに……モグラと亀を足して2で割ったような姿で、山のように巨大だと……。」


 2人が勝手に納得している。

 アースドラゴンが、モグラと亀を足して2で割ったような姿? ドラゴンなのかモグラなのか亀なのか、はっきりしてほしいンゴ。


「えっと……つまり、ワイらは今、アースドラゴンの背中……甲羅の上に乗っていると?」

「そういう事です。」

「甲羅の中に引きこもったまま長い年月を過ごしていたのですわね。

 甲羅の上に土がつもって、本物の山と区別がつかなくなっていたのですわ。」


 なるほど。

 そうとは知らずに乗ってキャンプをしていたわけか。


「アースドラゴンって、ドラゴンなんだよな?」

「そうですね。非常に頑丈で、どんな攻撃にもびくともしないそうです。」

「我が国に残る歴史書の中にも、討伐できた例がありませんわ。

 ドワーフ王国は、アースドラゴンに襲われて何度も滅亡していますの。

 そのたびに生き残ったわずかなドワーフが王国を再興していますけれど……ドワーフの鍛冶技術をもってしても、アースドラゴンには傷1つ付けられないのですわ。」


 おお……! 姿がもこもこしていて無駄に可愛らしいわりに、しっかりドラゴンらしいイカツイ話もあるじゃないか。


「そうか。つまり、アースドラゴンはドラゴンなんだな?」

「……? そうですが……?」

「ドラゴンである事が重要なのですの?」

「もちろんだ!

 ドラゴンといえば、ドラゴンステーキだろう!?」


 ファンタジーと言えばドラゴン! ファンタジー飯といえばドラゴンステーキだ!

 ドラゴンの肉を厚切りステーキにして食す! これぞファンタジー飯の王道!

 そしてステーキといえば、キャンプ飯の王道の1つでもある!

 これはもう、やるっきゃない!


「スコップ召喚! あ、そーれ! ざっくざく!」


 トイレのない場所でのキャンプには、スコップが必須だ。何に使うかって? トイレだよ。穴掘って、出すもの出したら埋めるんだ。目印を置くのを忘れるな? 次に掘るときに同じところを掘っちゃうと、スコップが残念なことになるぞ。

 もちろんどんなスコップでも構わないが、男のロマンを求めるなら多機能の変形するスコップがおすすめだ。スプーン部分のふちがナイフやノコギリになっていたり、柄が折れ曲がって鍬のように使えたりする。柄は伸縮可能で、折りたたんでコンパクトに携帯できるのも魅力だ。

 ……とは言うものの、即座になんでも召喚できるのなら、多機能ツールよりも1つの機能に特化したツールのほうがいい。断然、性能が違うからだ。折りたたみ式の多機能スコップは、スコップとして使おうと思うとスプーン部分が小さすぎるし、柄が短すぎる。ノコギリ機能も微妙な切れ味だ。トイレ用の穴を掘ったり、枝を落としたりするぐらいならいいが、ゴミを埋めるような大穴を掘るとか、木の幹を切るとかには適さない。


「おっと。意外と浅かったな。」


 30㎝ほど掘ったところで、硬いものに当たった。

 広く掘っていくと、岩ではなく、甲羅に当たっていたことが分かった。

 見た目や質感が、完全に亀のそれだ。岩との違いは一目瞭然である。


「ふっふっふっ……! この下にドラゴンの肉が……!」

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― 新着の感想 ―
[一言] ドラゴン肉作品によっては、不味いこともあるけどね
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