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12:ワイ、重婚生活をスタートしたンゴ

 王女を降嫁されて2号店は大繁盛。王女が入り浸るおかげで貴族たちも大勢来る。そして首都だから人口も多く、来客数もすごい事になっている。ワイが2号店に注力している間に、1号店はエレナに任せて……あ。しばらく帰ってなかったンゴ。2号店に注力しすぎた……。

 やっべぇ……エレナ怒ってんだろーなー……。

 ガクブルしながら1号店に帰ると、予想通りの仁王立ちが出迎えてくれた。


「遅かったですね。」


 怒っていらっしゃるぅ~……! ワイ、今夜死ぬかも……。

 ちっくしょー! ワイのせいじゃねーのにー!


「すまんかった。」


 そろそろ1回ぐらい帰ろうと思ったところで王子様のアレだ。

 そのまま王女を嫁に貰ってしまったし。披露宴はまた今度なんだけどね。まあ、それは国を挙げてレベルのすごいやつをやる事になるだろうね。成り上がりすぎて胃が痛い……。適応障害とかになりそうだ。


「まあまあ、そんなに怒らないでくださいまし。

 実は色々あって、かくかくしかじかなのですわ。」


 ついてきた王女が説明してくれる。


「結婚したぁ!?」


 エレナは驚いて目を見開いたままフリーズしてしまった。

 まあ、びっくりするだろうな。何も聞いてないうちに旦那が重婚して、しかも相手が王女とか。ワイ的にも2人の妻が、かたやマフィアのボスの娘、かたや王女なんて、意味わからんすぎるンゴ。


「……どんだけぇ~……。」


 エレナとしても、相手が王女では嫁に貰ったことを非難できない。身分が身分だからね。

 かろうじて絞り出した不満の声は、今にも死にそうだった。

 そのまま「あはは……」と乾いた笑いをしながら、エレナは店の奥に引っ込み、他の従業員に「今日は早退します」と告げて空き地のテントに帰っていった。

 ……うーむ……何とかしなければ。

 状況がエレナのキャパを越えすぎているようだ。


「姫様は、どうなのですか? 嫁ぐ相手がもうすでに結婚しているとか。」

「王女たる私が正妻でないのは予想外ですが、側室を持つのは王侯貴族にとって普通のことですわ。」

「なるほど……。」

「そんな事より、私のことはミネルヴァとお呼びください、だ・ん・な・さ・ま。うふふ……。」


 新婚気分でピンクオーラを出そうとしている王女だが、あいにくワイはそれどころじゃないンゴ。

 だいたい王女相手に人前でピンクオーラとか、パパラッチがいたら満員電車並に取り囲んでくるシーンだ。この世界にカメラがなくてよかった。まあ、ワイのスキルなら召喚できるけども。

 エレナが心配……ああ、でも、王女様の意向を無碍にするのも……。


「ミネルヴァ。」

「はい、旦那様。」

「エレナとは仲良くしてほしい。」

「もちろんですわ。」

「それじゃあ、エレナの様子を見に行こう。」

「かしこまりましたわ。」


 空き地のテントは、今、球体に近い形をしたやつを使っている。大きな窓があって自然採光に優れ、カーテンを閉めればプライバシーも守れる。何より、複数の同型テントを連結していくことができ、これにより使い方の自由度が飛躍的に高くなっている。


「エレナ。」

「……分かっています。セカンドさんだって、王女様との結婚なんて断れるわけないって。

 それに、王女様は美人ですし?」

「そうか。まあ、落ち着くにはちょっと時間が必要かもな。」

「そういう事です。」


 エレナはため息をつく。

 感情というのは、時に自分でもどうしようもない。


「焼きもち焼いてるエレナもかわいいな。」

「そんな事いわれても、ごまかされません。」


 ぷくーっと頬を膨らませたエレナを見て、ワイはますますかわいいと思ったンゴ。でへへ……。

 とりあえず頭をナデナデ……エレナはされるがままに撫でられている。


「ミネルヴァから言質は取った。自分は正妻じゃないと。」

「王女様が……?」


 驚くエレナ。

 そこでミネルヴァが姿を現した。


「王女ではなく、ミネルヴァと呼んでくださいまし。

 これからは、一緒にセカンドさんを支える妻同士ですわ。」

「あ……。」

「それに、私は王女。夫に側室がいるぐらい、普通の事ですわ。」

「王女様……。」

「エレナさん?」

「み、ミネルヴァさん……。」

「そうですわ。

 でも、もう一声。『さん』も要りませんわ。」

「それはミネルヴァさんだって。」

「ですわね。

 では、これからはエレナと呼び捨てることにしますわ。ですから……ね?」

「わかったわ、ミネルヴァ。」

「ええ。それで結構ですわ。」


 エレナはミネルヴァと仲直りした。別に喧嘩していたわけでもないが。

 それから2人は、正妻・側室という上下関係を持たないことで合意。外部から王女が正妻とみられる事については、外向きの役割を引き受ける外交官のようなものと考えることにした。また同時に、王女が正妻として見られることで、余計なトラブルを回避し、ワイの社会的地位を高く印象付けることになるという事で、いわば広報担当みたいな役割だと納得することにした。これはエレナが妻になっていることで裏社会に睨みを利かせられるという点で、お互い様というか、足りないところを補い合う形になる。

 やれやれ決着したと安堵したのもつかの間、その日の夜にはワイは大変な目にあった。2人同時のファビュラスの襲撃によって、ワイのベッドは誉れ高い大地震に。たわわな誉れが2倍……ムフフ……とか喜んだのは最初だけで、紳士の宴はいつの間にか女豹の晩餐会に。ワイは手羽先やフライドチキンみたいに骨までしゃぶられてしまった。一晩で10㎏ぐらいやせたような気がするンゴ……。しかも、この日から毎晩それが続いたからたまらない。ワイの大事な槍が、オジギソウみたいになってしまったンゴ。

 とにかく、それから数日後にまた事件が起きた。


「なんじゃ、これ!?」


 ドワーフが来店して騒ぎ立てたのだ。

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