少女始動
「あ、そういえばみんなどこだろう」
しばらく眼前に広がる景色に呆然としたのち、思い出したかのようにメニューを開き、フレンド欄から全員の居場所を把握すればひとまず優衣の元に向かうことにして。
「まぁ、そんなに鬱蒼としてるわけじゃないけど…何か出てきそうだし早く抜けちゃいたいな」
そんなことを言いながら歩みを進めていると木も疎になってきた。
走るという手もあるにはあるのだが、下手に走ると活動限界を迎えると聞かされているので出来るだけ歩いて行こうと決めていたのだ。
そこから、さらに歩くと見知った顔がすでに三人集まっていて、亜衣のことを待っていたようで。
「ごめーん、お待たせー」
そう亜衣が口を開くと
「ううん、大丈夫、今集まったところだし」
と、千智が返した。
そこから四人はそれぞれで役割を決めて目的に応じた場所へ再び別れることにした。
【STR】に多く振った亜衣は大きめの石を探しに。
【DEX】に多く振った優衣は周辺に落ちていた石を拾い集めて互いにぶつけ合い簡易的な道具作りを。
全てに平均的に振った千智は手頃な木の棒や蔓を探しに。
【LUC】に多く振った由紀は食料となる魚をとるための釣竿やモリの材料を探しに。
亜衣は言われたほどの大きさの石を見つけるたびにその石を抱えて集合場所へ戻る。
これを何度も繰り返していた。
そう、このゲームには一般的なゲームにはあるストレージ機能がないため、持ち運べるものはある程度制限されるし、持ち運べる量も制限されてしまうのだ。
そうして、亜衣が石を持ってきている間にも優衣の周りには手頃な大きさの石包丁のようなものが幾つかできており、他の二人が集めた素材も並べられていた。