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第56話 暗躍する狂気

「あら、自分から尋ねてくるなんて珍しいじゃない。抱かれたくなったの? それとも抱きたくなった?」

「どっちでもありません! リッカが……幼馴染のリッカが魔女にさらわれたので話を聞きたくて」

「……そう。まぁその話は知っているけど。とりあえず入ったら?」

「……し、失礼します」


 部屋に入ると甘い匂いが漂っていて、あの時の情景がフラッシュバックした。

 自分がどんな格好をしてどんな事をされたか……。

 でも今はそんな事を考えている場合じゃない、と頭をひとつ振ってから討伐戦の日のことを話し始めた。



「へぇ。で、そこで蜘蛛……アルケニーを倒したら魔女が出てきたってわけね」

「はい、なんであそこに居たのかは分からないのですが……」

「決まってるじゃない。討伐戦を観察しに来たんでしょう?」

「な、何の為にですかっ!?」

「結果から判断するなら”さらうため”よ」

「……ッ!?」


 つまりリッカをさらう為にわざわざあそこに出向いてきたっていうことなのか?


「別にあなたの幼馴染を狙ってきたわけじゃないでしょうけどね」

「じゃあなんでリッカを?」

「ま、自分の目で見た中で一番見込みがあったとかじゃないかしら?」

「見込み……?」

「ええ、操りやすかったとかかもしれないし、仲良くなれそうだったとかかもしれないわ。もしかしたら血が美味しそうだった、かもしれないけれど……あら、そんな怖い顔しないでちょうだい。濡れちゃうじゃない」

「……で、本当のところはどんな理由だと思いますか?」

「さあ、それは分からないわ」

「そうですよね……」


 魔女を殺せなんていっていた先輩だったからもう少し情報があるかと思ったけど、案外そうでもないようだ。

 だったらなぜ先輩は僕に魔女を殺せなんていったんだろう。


「……あ、そういえばこれも見てもらいたかったんですけど」


 そういって僕はこの前の洋館から回収した紙を先輩に見せた。


「これは……なぜこれを私に?」

「前にあの魔女……アラーニェの胸にある刻印を見たことがあるんですけど、そこに似たような文字が書いてあったのを思い出して……魔女となんらかの関係がありそうな先輩なら読めたりしないかなって思ったんですけど……」

「ふうん……他の人には見せた?」

「ええ。ロイゼ先生には見せたら古代文字だろうけど読めないっていわれました」

「じゃあ私も読めないっていうことにしておくわ」


 リオナ先輩は薄く笑ってそういった。

 と、いうことは読めるっていうことだよね?


「というよりも、こっちより先に魔法陣の方をみないと意味がないわ」

「意味がない、というと?」

「この文字自体は魔法陣に条件を与えるものですもの。だからまずは魔法陣が何をしようとしているのかを見ないと意味がないわ」

「なるほど、ではその魔法陣は何なんですか?」


 僕がそう聞くと、先輩は魔法陣らしきものを指でなぞったり、裏返して透かせて見たりしている。

 やがて何かがわかったのか、紙をテーブルに置いた。


「何かわかりましたか?」

「そうねぇ……。これは一言でいえば【蘇生】かしら?」

「蘇生!? 蘇生っていうと死んだ人を生き返らせるっていう?」

「ええ。でもこれはその実験過程といったところかしら。おそらく未完成ね。どこで手に入れたの?」

「冒険者としての依頼で行った洋館です」

「ふうん。じゃあそこで死者を蘇生させる実験でもしてたのかも知れないわね」

「あそこでそんな事を? でも屋敷には誰もいませんでしたよ。それに生活感もなかった」

「誰もいなかったなら、どっちかね」

「どっちか?」

「そう。諦めたか、それとも……完成させたか」


 人を蘇生させるための魔法陣を完成させたのだとしたらそれはとんでもない事じゃないか?

 もしかしたらカイニスも……。


「ただ私から言わせれば、こんなのは成功しても()()みたいなものよ。古代文字の条件を読む限り、まるっきり等価交換の原則が無視されているもの」


 先輩はまた思わせぶりな事を言ってきた。

 古代文字で一体何が書かれていたのだろうか。


「その顔は気になっている顔ね」

「そ、そりゃ気になるでしょう……」

「いいわ。どうやら誰かを蘇生させる為には大量の触媒が必要になるらしいのよ」

「その触媒っていうのはなんですか?」

「そうね…………人よ」

「え?」

「つまり誰かを蘇生するためには、誰かを犠牲にしないといけないということよ。それも大量に」


 僕は言葉が出なかった。

 あそこの洋館でそんな実験をしていた?じゃああの死骸はそのための……?

 そんな事を考えていたら先輩はテーブルに置いてあった他の紙にも目を通しはじめた。


「……ああ。こっちはもう少し単純ね」

「そっちのはどういうものでしたか?」

「これは人工的にモンスターを作るっていう魔法陣みたいね」

「じ、人工的にモンスターを!?」

「というか魔獣をモンスターに変える、ということみたいだけど」

「そ、そんな……そんな事をして何の意味が?」

「さぁ? 確かに私たちにとっては、敵であるモンスターを作り出す意味なんてないけれど。でも、これを研究していた人には意味があったんでしょうね」


 わざわざ危険なものを作る意味って……一体何なんだろう。

 人工的なモンスターか……あっ!


「そういえばスライムのモンスターっていましたっけ?」

「聞いたことはないわね。魔核を持てるほど自我がないからじゃないかって言われているようだけど」

「ですよね……」


 だとすると、この前倒したスライムもそうやって作られたのだろうか。

 誰が何の為に?さっぱり分からない……。

 でも何だか危険なことが起こり始めている、そんな予感だけはある。


 そういえば、先輩はなんでこんな文字を読めて魔法陣の解読までできるんだろう。

 魔女の話をするついでにちょっと情報があればいいなって気持ちだったのにここまで分かるとは……。


「あの、前から気にはなっていたんですけど……。先輩って何者ですか?」


 そんな僕の言葉に先輩は少し驚いた顔をした。

 それから見たことのないような悪い顔をしてにやりと笑う。


「うふふ、良い質問ね。私はね——」

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