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第55話 女神からの下賜

 ゴーストだ、と驚いているばかりではいられない。

 恐る恐る目の前の霊体を観察すると、死神のような格好をしていて手には鎌を持っているようだ。

 そしてその体の中心には赤黒い光が脈動していた。

 どうやらこいつはただのゴーストではないらしい。

 ゴーストが魔石を取り込んで変わるモンスターといえば……。


「ハルトっ! そいつはゴーストじゃなくてレイスだ!」

「ってことはこいつが目撃されたモンスターだってのかぁ? おい、カイ! さっきの魔法はまだ効いてるよな!?」

「う、うん。大丈夫なはず!」

「なら、俺が行くっ!」


 そういうとハルトはレイスに向かって走り出した。

 うおお、アイツ凄いな。

 僕なんて未だに膝が笑っているのに。


 僕が新しく使えるようになった女神からの下賜(セイクリッドギフト)は、他者に僕の魔力を分け与えるような魔法だ。

 こうする事で、騎士の剣は——モンスターに届くっ!


 レイスは向かってきたハルトに死神の鎌を振り下ろす。

 駆け寄るハルトその足を止めず、手に持った()()()で弾くと少し身を屈ませてレイスの懐に入り込んだ。

 ずっと騎士になりたいと訓練を積んできたハルトは、冒険者が好むような厚みがある大剣じゃなくて、細身の騎士剣を好んで使っている。

 そしてその騎士剣は脈動するレイスの魔石を正確に突いた。


「オ゛オォォォォ……ッ!!」


 パリン、という音を響かせてレイスの魔石が割れると、その半透明な肉体は浄化されたように消えていく。

 後に残ったのは割れた魔石だけだった。


「おお、これは凄いな。騎士の在り方が変わるぜ、これは」

「うん、僕もそう思う。けど結局僕がいないといけないからあんまり大規模で使えるものではないかも」

「確かにな。でも騎士だってモンスターを倒せるんだってなったら騎士の人らは燃えるだろうなぁ」

「まぁ騎士は守ってばかりだからね」

「カイは騎士たちからモテモテになりそうだな」

「やめてよ……一応まだ内緒にしておいてね」

「分かってるって。……にしてもこいつが目撃されていたっていうモンスターだったのか?」


 ハルトは割れた魔石を拾いながらそんな事をいってくる。

 僕もちょっと違和感があるんだよな。

 レイスは霊体だから壁をすり抜けたりできるのかもしれないけど、地下からわざわざ地上にでて誰かに目撃されてからまた地下に戻ったりするだろうか?

 ここの居心地がよかったといわれればそれまでなんだけど。


「なんとなくだけど、目撃されたモンスターとレイスは別個体な気がする」

「でもそうしたらもう一体いるってことになるのか?」

「うーん、でもきちんと全部の部屋を調べたから……やっぱり気のせいなのかな」


 そう思いながらも地下室を隅々まで調べていく。


「そういや上の階に比べてキレイな気がするな」

「確かにそうだね。もしかしてレイスが掃除してたとか?」

「だとしたら俺はこの地下室のハウスキーパーを倒しちまったことになるな」


 僕らはそんな軽口を叩きながら地下室を調べた。

 光が届きづらい隅のほうまでいくと何かが積まれていた。


「見て、ここになんかの残骸が……。うっ、これは……食われているのか?」

「確かになんかの動物の死骸だろうな。レイスは動物を食うか?」

「いや、食べないと思う」

「じゃあやっぱりここにはレイス以外にも”何か”がいたってことになるか」


 積み上げられた死骸は惨たらしい姿ではあったけど、まだ完全には骨にはなっておらず、死んでからそこまで時間が経っていないように見えた。


「でもさ、地下室への階段は閉じていたじゃないか。どうやって出入りしたんだろう?」

「大方抜け道でもあるんじゃねえか? もしくは……」

「誰かが手引した?」


 僕らはさらに念入りに地下室を調べたけれど、抜け道のようなものは見つけることができなかった。

 と、なればやっぱりそういうことなのだろうか。


 地下から地上の書斎に戻ると、僕らは書斎を調べることにした。

 さっきまでは紙の新しさにばかり気を取られていたけど、これは大事な手がかりかも知れない。


「ここに書いてあるの図形ってなんだろうな?」

「うーん、よく分からないなぁ。学園で習ってない字が書いてあるから読むことも出来ないや」

「もしかしたらただの落書きか?」

「こんなにビッシリ書かれているのに? そりゃちょっと暇人すぎるでしょ。一応これ持って帰ろうかな。誰かに見せたらなにか分かるかもしれない」


 そういって僕は書斎に散らばっていた紙を拾い集めた。

 そのあともう一度全部の部屋を見て回って何もいない事を確認して洋館を出た。


「まぁ依頼としてはレイスを倒したことで達成っていう事になるだろうが……」

「なんか腑に落ちないね」

「仕方ねぇ、俺たちの依頼はここまでだ。魔法剣って収穫もあったしこれでよしとしようぜ」

「……うん。とりあえず僕は帰ったらこの紙を先生に見せてみようと思う」

「何か分かったら教えてくれよ。危ないもんだったら仲間の冒険者に近づかないように言ったりしないとだからな」



 僕たちのモンスター討伐依頼は、こうして一応達成にはなった。

 なったけれど、どこか納得出来ない部分があるのも事実だった。


 僕は依頼から戻ると、予定通り洋館で見つけた紙をロイゼ先生に見せた。

 すると、そこに書いてある図形は魔法陣だろうということが分かった。

 けれどビッシリと書かれていた文字は、とうの昔に失われてしまった古代文字だろうから解読は難しいと言われてしまった。


 先生でも分からないならお手上げか……と諦めかけた時、僕はふと思った。


 もしかしたら()()なら何か分かるんじゃないか?と。

 会うのはちょっと怖いけど、魔女の報告もしたいし明日一度会いに行ってみよう。

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