第15話 盗賊団討伐戦①
ギリギリ今日投稿できました
「……ふうん。で、みすみす逃したってわけ?」
「す、すんませんっ!」
「ま、いいわ。斥候に見つかったならどちらにしてもこの場所はそろそろ潮時だしね」
偵察に来た斥候を逃してしまったという口に出しづらい報告をした男は、どうやら自分が許されたと分かってホッと息を吐いた。
「でもあなたの隣にスキルが使えるっていう騎士見習いを置いておいたでしょう? あれは役に立たなかったの?」
「そ、それがどうにも突然手を抜いているような動きをしやがりまして……」
「そう、じゃあ後であの子は可愛がってあげないといけないわね」
目の前の女が自分の指をぺろりと舐める仕草を見て、あの少年が後で何をされるのか想像してしまい気の毒になった。
けれどその男が本当に気にしなければいけなかったのは自分の身の方だった。
「はぁ、とりあえずあなたももう要らないわね。そんなのだったら私が使ったほうがいいもの。それじゃあ安らかな眠りを」
男はもう歌えない、男はもう踊れない、男はもう——。
* * * * * *
盗賊団の中でハルトに似た男を見た。
そんな報告を受けた僕は、2日続けて外出許可を貰うと冒険者ギルドに赴いた。
今日はハルトの状況をしっかりと確認したいという事情もあり、コレットにはお留守番をしてもらっている。
ハルトのことを知らないという演技が出来ない場面がくるかもしれないからね。
朝早くに冒険者ギルドへ行くとそこにはサブナックさんが待っていてくれた。
身に纏っている鎧は傷つき、着ている服は血に塗れていたが、確かにサブナックさんはそこにいた。
「だ、大丈夫なんですか!?」
「なに、かすり傷みたいなもんだって。もう治してもらってるしな。それより昨日人探しの依頼を受けたと思ったら、別の依頼で向かった先にそれらしい奴が居るってんだからもう俺は驚いちまったぜ」
「その話なんですけど……詳しく聞かせてもらえますか?」
「ああ、もちろんだ。むしろ俺からも確認したい事があるしな」
そういってサブナックさんは話をはじめた。
確認したい事ってなんだろう?と思いながらも僕はまず話を聞くことに集中する。
「昨日、嬢ちゃん方がギルドを出てから俺はこの街の情報屋に探している兄ちゃんの人相や特徴を伝えておいたんだ。まぁ街に帰ってくる頃に情報がありゃいいか、ってなもんでな。で、その足で盗賊団のアジトがあるんじゃねぇかって言われていたガランガ山——まぁ丘みたいなもんなんだが、そこの麓にある穴ぐらに向かったわけだ」
僕は無言で頷く事で先を促す。
「そうしたら大当たりよ。見つからねえと思ってるのか見つかってもいいと思ってるのか、穴ぐらの外に奪い取った馬車の荷車がそのまま置かれてやがった。奴らのアジトを見つけたら俺の仕事は終わりのはずだったんだが……ちょっとしくじっちまってな。盗賊の見張りに見つかっちまった。で、その見張りって奴の中に——」
「ハルトがいた、と?」
「ああ、そのとおりだ」
ハルトが盗賊の見張りをしていた?
僕とハルトはリッカが魔女になった時の為、騎士になる訓練をずっとしてきた。
そんなハルトが突然盗賊になるなんて考えられない。
「いや、多分見間違えじゃないかな? と思うのですが……」
「ああ、ダークブラウンの髪に黒い瞳っていえば珍しいが、全く居ないってわけでもねぇからな。ただそいつがやたらと強くてなぁ……ちょっとやべえって思った時にこいつが懐から落ちてきたんだよ」
サブナックさんはそういってポケットから人形を取り出した。
その人形は——トゲトゲの金髪が特徴的な……僕だった。
つまりリッカがあの時、僕らに作ってくれた人形がそこにあった。
「……っ!?」
「どうやら心当りがあるみてえじゃねぇか。どうもあいつはコレを見てから動きが鈍くなったみたいだったんでな。その隙に拾って逃げ帰って来たってわけだ」
つまり盗賊団にいたのは本当にハルト本人だった、という事になってしまう。
そんな事はない!と言いたいけれど……証拠が……見つかってしまった。
「どういうカラクリかは分からねえが相手の盗賊団はどんどん団員を増やしてやがる。金なのかなんなのか知らないけどな。それに俺が見つかっちまったもんだからすぐに根城も変えるだろう」
そうなったら僕はハルトにもう二度と会えなくなってしまうかもしれない。
そんなのは嫌だ。
「だからな……あえて今日行く事になった」
「えっ?」
「嬢ちゃんにゃ分からねえか? 今日盗賊団をぶっ叩きに行くんだよ。相手は規模的にも俺に見つかったからってすぐに行動出来やしないし、俺がこっちに戻ってから対策を練って叩きに来ると思ってるだろう。だから裏をかいて冒険者、魔女、騎士合同部隊で今日の——昼過ぎにいく」
昼過ぎって……もうすぐじゃないか!
「だから一応依頼人の嬢ちゃんには伝えとかにゃ俺の立つ瀬がねえって事でここで待たせてもらってたんだ」
「ハルトは……どうなりますかね?」
「さぁどうだろうなぁ……見た感じ新人の下っ端ってところだったから素直に投降すれば投獄で済むかもしれん。が、なまじ腕が立つから最前線に出てくるだろう。となると——」
僕はその言葉を聞いて頭が真っ白になった。
ハルトが死んでしまう。騎士としてではなく盗賊として……。
「一緒に……一緒に連れて行ってくれませんか?」
「はぁ? 嬢ちゃんを? 知り合いだってのは分かったけどさすがに素人を連れていくわけには——」
「僕は魔女です! それに剣だって少しは使えます」
僕はそういって手首にある刻印を見せつける。
「おお!? 嬢ちゃんは魔女だったのか。といっても見たところまだ学園生だろう?」
「お願いしますっ! 話だけでもいい。話だけでもさせて下さい!」
「…………ッチ。わかったよ。俺の荷物持ちって事にして連れて行ってやる」
「あ、ありがとうございます!」
「だがよ、話をしてもダメだと思ったらすぐに下がれ。そのまま街に帰ってもいい。知り合いが斬られるのを見てえわけじゃねえだろ?」
知り合いが……ハルトが斬られるところなんて僕は見ない。
そうさせない為に行くんだ。
あの馬鹿野郎が言うことを聞かなかったら——ぶん殴ってでも連れ帰ってやるんだ。
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明日も投稿を頑張りたいのでまだでしたら是非ブクマ、評価をお願いします!
それではメリークリスマス!でした。