そもそも悪役令嬢とは……? さぁ?現実と小説の区別がついてないんじゃない?
早朝、レジェクト様の宮へ向かう際にゴミ捨て場で王宮魔法学院の女子生徒が頭からゴミを被っていました。何を言っているんだ、と思われるかもしれませんが私もよく分かりません。
その女子生徒はゴミを盛大に被るとそのまま制服を「ふんぬううううう!!」と男らしい声を出しながらビリビリに破きました。そして狂ったように地面に転がると土埃を体中に被りそのまま去っていきました。
その数日後、宮の侍女たちの間では1つの噂が流れていました。王宮魔法学院で唯一の平民出身の女子生徒がこの国の王太子であるジェルド殿下の婚約者のエリザマス公爵令嬢とその取り巻きに暴行を受けた、と。
はて、その暴行を受けたとされる日にその珍行動していた女子生徒がいたような……?
「そういえば俺のところにその女子生徒やらが来たよ」
「え?レジェクト様の元へ?……何故?」
「いや俺が聞きたいくらいなんだけど」
いくら王宮魔法学院に通っているとはいえ、他国の客人に無断で会いにくるなんてありえないはずです。というか会って一体何を話すのでしょうか?
「学院で悪役令嬢であるエリザマス公爵令嬢に虐められているとか言って泣きながら抱き着きに来たんだけど。ゴミ塗れで」
「ゴミ塗れで」
確かあのゴミ捨て場からここまでそこそこ距離があるはずです。それまでの道のりをゴミ塗れで、しかも他国の客人の前に出てしかも抱き着きに来るなんて……、それだけの気概があれば虐めも難なく躱せそうな気もするのですが……
「それでレジェクト様はどうお慰めに?」
「避けた」
「……避けた」
「当たり前でしょ。汚物に触るとかありえないんだけど」
汚物、仮にもうら若き女子生徒に汚物って……
いやゴミを被っている時点で汚物なのでしょうか……?汚物?いやでも元は女子生徒なのですが。何でしょう、あまりにも常識はずれな行動に感覚がズレそうになります。
「ちなみに避けた後は……」
「そのまま床に顔面から突っ込んでたけど。まぁ元から痛々しい恰好だったし、さして変わらないだろうから放置してきたよ」
それ心の方は酷く傷ついているのでは……?
殿方に頼ろうと抱き着きにいったのに避けられ放置され、あまつさえ汚物としか見られていないだなんて。
女子生徒さん、慰めてもらう人選を間違えてますよ。