二つの地蔵様。(友人の話)
これは友人から聞いた話です。
仮に「二つの地蔵様」と銘打ちます。
阿蘓大橋。通称赤橋。
自殺の名所と言うのは、事実なようです。
私は、昔行ったきりで、良く知りませんが、友人の話を一言で表すと。
「要塞」
だそうです。
欄干の外側に更に高い欄干を重ね。
上部は有刺鉄線でガード。
橋の下には、落下防止ネットを何重にも、張り巡らせていたようです。
消防団等の地元の自治会も見廻りをしていたとか、していないとか。
更に、赤は人を誘う事で、緑に塗り替えてますから「要塞陸橋」ですね。
風光明媚より質実剛健の方が、良く合うと言ってました。
さて、これはそんな友人から聞いた話です。
赤橋には、二つの地蔵様が祀ってあったそうです。
橋の上には「待て待て地蔵」橋の下には「来い来い地蔵」と言っていました。
「待て待て地蔵」は自殺を引き留める。
「来い来い地蔵」は人を引き摺り込む。
そして、その二体の地蔵は、互いに力比べをしているようで、一定周期で力関係が変わると、言ってました。
「待て待て地蔵」の力が強い時は安心だが。
「来い来い地蔵」の力が強い時は、絶対に夜は近付くな。
もし近付いても、絶対に車から降りたりせずに走り抜けろ。
もし捕まったら必ず引っ張られる。
仮にその場は踏み留まっても、必ず引っ張られる。
だから夜の赤橋には近付くな。
と真剣な表情で言ってました。
私は、興味本位で「どうやって判断する?」と訊ねると、友人はため息混じりで、
「朝、人が落ちてるか。網に引っ掛かっていれば始まり」
と言ったのは印象的でした。
確かに、3メートル以上の欄干を登り、有刺鉄線の痛みに耐えて、飛び降りる。
更に、網に引っ掛かると、そこから這い出てまた飛び降りる。
心身衰弱した人間に、果たして可能でしょうか?
はっきり言いますと、自殺するなら赤橋でなくとも、別の橋の方が楽です。
大幹の大樹も沢山あります。
少し大分方面に行くと、ホームセンターもあります。
事故にしてもそうです。
赤橋は直線で、距離も其ほど長くありません。
しかし、事故が多いとも言っていました。
それも何故か、橋の中間地点で欄干に真正面から突っ込む事故が多いとも、聞きました。
「赤橋は人を引き摺り込む」
そんな魔性があったのかもしれません。