ダブルス 脚本版
◎人物
菅原航太(17)高校生
早川準 (17)菅原の友人
早川紗江子 (40)準の母親
部員A〜C
顧問
審判
スタッフ
○希望学園高校・門
門に出入りしている生徒達。
周囲に新緑の木々が生えている。
○同・テニスコート内
菅原航太(17)と早川準(17)ペア、相手ペアとテニスのラリーをしている。
早川、ジャンピングスマッシュを決める。
菅原「ナイス、準」
早川「航ちゃんもフォロー、ありがとう」
ハイタッチをする二人。
○同・テニスコート外
部員たち、試合を眺めている。
部員A「マジで強すぎ」
部員B「先輩たち、最後の都大会も負けなしだな」
○同・ロッカールーム(夕方)
菅原と早川、着替えをしている。
早川「ねぇ、航ちゃん、この後、一緒にショップ寄らない?ガット張り替えたくて」
菅原「あぁ、いいよ。オレもちょうど買い足ししたいもんがあったから」
早川「ありがと!」
○スポーツショップ丸太・中(夕方)
早川、店員にテニスラケットを預けている。
菅原、帽子を手にとっている。
早川「航ちゃん、新しく帽子買うの?」
菅原「あぁ、試合用のボロボロだから買い換えようと思って」
早川「ふーん」
菅原、白い帽子を手に取る。
菅原「これに決めた!」
早川「じゃあボクもこれ買うね」
菅原「なんだよ、一緒のなんて恥ずかしいじゃねぇか」
早川「いやいや、ダブルスなんだから気持ち揃えていかなきゃ」
○希望園高校・テニスコート内
菅原と早川ペア、相手部員ペアとテニスのラリーを続けている。
早川、ボールを追いかけ、横飛びでボールを拾う。
菅原、相手の打ち返したボールをスマッシュで決める。
菅原「ナイスプレーだよ、準!」
早川、その場で足を抱えたまま座り込んでいる。
菅原、急いで駆け寄る。
菅原「大丈夫か?」
早川「ちょっと足やっちゃったみたいで」
菅原「一緒に保健室いこう」
○同・保健室・中
顧問、早川の足首を見ている。
顧問「こりゃ、一度病院に診てもらった方がいいかな」
早川「…、はい」
菅原、心配な表情で早川を見つめている。
○東都外科病院・中(夕方)
待合席で待っている菅原。
早川、部屋のドアから松葉杖をついて出てくる。
早川「全治2週間の捻挫だって」
菅原「そんな…」
早川「ごめんね、最後のダブルスだったのに」
菅原「そんな、謝るなよ」
早川「航ちゃんだったら最後の試合、シングルでも結果出せると思うから頑張ってよね」
菅原「…」
○希望園高校・3年Fクラス教室・外
3年F組というプレートがかかった教室に生徒が出入りしている。
○同・3年Fクラス教室・中
菅原、昼食をとっている早川のもとに寄る。
菅原「あのさ、今週の試合、準も来いよ」
早川「ごめん、今週はちょっと」
菅原「そっか…」
○同・テニスコート内
菅原一人で相手部員とテニスの試合をしている。
部員A「なんか菅原先輩も調子上がってなさそうだね」
部員B「ここ最近早川先輩も来てないしね」
○同・ロッカールーム(夕方)
着替えた菅原、早川のロッカーに帽子がかかっているの気づく。
早川の帽子を手に取る菅原。
菅原「じゅん…」
○早川の家・玄関(朝)
ドアの前で待っている菅原。
早川紗江子(40)、ドアから出てくる。
紗江子「ゴメンね、部屋にはいるはずなんだけど、出てこなくてね」
菅原「わかりました。あの…、これ渡してもらってもいいですか?」
紗江子「わかったわ」
菅原、紗江子に早川の帽子を渡す。
○同・準の部屋・中(朝)
早川、ベッドに仰向けになっている。
部屋のノック音が鳴る。
紗江子の声「菅原くんから預かったものあるから置いとくね」
紗江子の足音が遠ざかる。
早川、扉をあける。
帽子を手に取る早川。
帽子に「最後までお前と一緒に戦いたい」というメッセージが書れている。
○江東スポーツ競技場・門
「高校テニス都大会」と書かれた看板が門に立てかけられている。
○同・テニスコートBエリア・外
観客と部員たち、菅原と相手選手とのテニスラリーを眺めている。
ボールを打ち返せず、失点する菅原。
部員C「ヤベェ、残り一ゲーム。このままじゃ…」
○同・テニスコートB・中
菅原、サーブの準備をしている。
菅原「ハァハァ」
早川の声「負けるな、航!」
菅原、後方のコート外に目をやると帽子をかぶった姿の早川が立っている。
菅原「おせぇんだよ、ほんとに」
同じ帽子姿に前後で動きが重なる菅原と早川。
菅原、表情が和らぎ、サーブを打つ。
○同・テニスコートB・外
菅原の頭の上にボールが上がる。
早川、スマッシュのそぶりをしている。
菅原、ジャンピングスマッシュで決める。
歓声の声「オォ〜!」
審判「ゲームセット」
早川と部員たち、拍手している。
菅原、早川の方へ駆け寄る。
早川「いつの間に、そのスマッシュ技覚えたの?」
菅原「あぁ、準の顔見てとっさに思いついた」
早川「さすがマイパートナー!」
菅原「ありがと」
ハイタッチする菅原と早川。
○同・中央コート(夕方)
選手たち、表彰台の前に並んでいる。
アナウンスの声「シングルス部門第一位、菅原航太」
菅原、早川に表彰台の方へ指差す。
菅原「一緒に行くぞ」
早川「えっ、航ちゃんの出たシングルスだし…」
菅原「いいから、いいから」
同じ帽子姿で菅原と早川、表彰台のもとに行く。
スタッフ「えぇと、菅原くんはどちらかな?」
菅原「二人で勝ち取ったもんなんで、一緒に上がっていいですか?」
○同・表彰台(夕方)
菅原と早川、トロフィーを二人で受け取り持ち上げる。
○道(夕方)
菅原と早川、一緒に歩いている。
早川、足を止める。
早川「ありがとう、今日試合に来てよかった」
菅原「オレも助かった、やっぱりテニスは準とやれるのが一番だ」
早川「うん、足復活したらまたテニスやろうね」
菅原「あぁ、高校卒業しても、大人になっても」
菅原と早川、夕日に向かって歩き出す。