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第4話「必殺技」

 蟹谷幸枝、キャンサーの力を持つ十三人の魔法少女のうちの一人。

 彼女に秘められし力は、何者も切り裂く強靭なハサミ。そして……、


『フンヌゥゥッ!!』


 怪人シャークヒューマンが、その巨体を活かしてキャンサーを思い切り踏みつけた。彼女の体の何倍もある脚での攻撃は、例え強大な力を持つ魔法少女達でもひとたまりもない。

 ……魔法少女キャンサー以外は。


「……そんなものなの?」

『な、なにぃ!?』


 シャークヒューマンは目を見開く。

 キャンサーは、巨大な脚で踏まれてもビクともしていなかったのである。直立不動の状態、まるで重みを感じていないかのように、彼女は怪人の脚を片手で支えていた。


「私の能力は、最強の矛と最強の盾。あらゆる敵を打ち砕き……どんな攻撃も防ぎ切る!!」


 キャンサーは、空いているもう片方の腕でシャークヒューマンの脚を狙う。


「ジャッジメントクラブ!!」


 強烈な一撃が振るわれた。

 瞬間、シャークヒューマンの片脚は、キャンサーのハサミ攻撃により見事に弾け飛ぶ。

 脚を攻撃された怪人は、バランスを崩しそのまま横転した。


『ば、馬鹿な!?』

「まだまだぁ!!」


 キャンサーは体勢を崩した敵に両腕のハサミそ構えた。

 どんな敵をも打ち砕く必殺の武器。そのハサミから、みるみるうちに力が蓄えられていく。


「右のハサミは岩をも砕き、左のハサミは海を切り裂く! これ即ち我、最強の魔法少女なり!! ……って、ただの受け売りだけどね!!」


 キャンサーはシャークヒューマンの巨大な体に飛び移った。

 狙うは怪人の顔面。守りの薄い部分に渾身の奥義を繰り出そうとする。


「喰らえ、これぞ究極の一撃ぃ! グラビトンハンマーーーーーーーッッ!!!!」


 キャンサーの奥義が炸裂する。

 少女の小さな体ではあり得ない超重量超重力を込めた必殺技だ。喰らった相手はどれだけ巨大で頑丈だろうと為すすべなく倒れる。

 無論、シャークヒューマンもそれは例外ではなかった。キャンサーの必殺技を受けた瞬間、怪人の頭部は弾け飛んだ。

 怪人が戦闘不能になったのをキチンと確認したキャンサーは、スコーピオンの元へ向かう。


「ふぅ、何とか倒せたよ。お疲れ」

「ちょっと、私まだ毒が完成できてないのだけれど!?」

「そんな悠長なことしてられません。怪人討伐は遊びじゃないんだから」

「むぅぅー」


 スコーピオンは不服げな表情でキャンサーを睨む。

 キャンサーは仲間のわがままを受け流しつつ、変身を解いた。


「さ、目的は達したし帰ろう」

「次は私が、トドメを刺すわ! ちゃんと憶えておくのよ!?」

「善処するよ」


 こうして、キャンサーとスコーピオンの本日の怪人退治は終了。「今日も疲れた」と呟き、キャンサーは自宅の方を見た。

 するとそこで、キャンサーは帰り道の曲がり角付近で、怪人の下っぱの姿を目撃する。

 下っぱは全員倒したはず……と、キャンサーは不思議に思い、首を傾げた。


「あれ、生き残りかな?」

「ちょうどよかった! せっかく作った超猛毒を何処に使おうかと悩んでいたところだったの!!」


 スコーピオンは、そう言って下っぱが居るであろう曲がり角へと走った。下っぱは曲がり角の陰に隠れてしまいキャンサーからは確認が出来ない。

 下っぱとはいえ怪人。放置しておく理由はないので、キャンサーはスコーピオンの自由にさせた。

 そして、スコーピオンが曲がり角を曲がった直後のことだった。

 突然、「ドッカァァァァァンッ!!」と曲がり角付近から巨大な物体が衝突したかのような破壊音が響き渡ったのである。

 その音に、何事かと驚いたキャンサーは、すぐに音がした曲がり角へ向かう。

 するとそこには、衝撃的な光景があった。


「なんじゃ、こりゃ……」


 キャンサーは、絶句した。

 道の曲がり角。コンクリート塀になっている場所に、スコーピオンが上半身だけを埋まらせていたのである。


「え……スコーピオン? 貴女、何してるの?」

「……………………」


 スコーピオンは、塀に体の半分を突っ込んだまま、ピクリとも動こうとしない。

 まさかと思い、キャンサーは恐る恐る彼女の状態を確認してみる。

 そして調べたところ、幸いなことに怪我はなく命に別状はない様子だが、完全に気絶していることがわかった。

 キャンサーは、このあまりに不思議な状況に激しく困惑する。

 しかし何れにせよ、このままにしておく訳にはいかないだろう。

 キャンサーは、気絶するスコーピオンを塀から引き抜いて、彼女を背負い、自宅へと向かった。


「一体なんなのよ、もう」


 キャンサーは、スコーピオンは塀に突っ込んでいた理由は考える。

 思うところといえば、先ほどの大きな破壊音。そして、先程曲がり角で見つけた『下っぱ』である。

 しかし、判断材料が少ない。キャンサーひとまず考えを保留にすることにした。心の中に、不気味なモヤモヤが渦巻くのを感じつつ、彼女は帰路に着くのであった。

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