第五回 ブースター、ゲットだぜ!
水猪駅から徒歩10分の、入り組んだ場所にある古着屋には多種多様なパンが売っており、特に食パン(高い)は県外からも買いに来る人がいるほど評判がある。
古着を買う人は滅多にいない。
その食パン(高い)にリンゴの漬けとチーズをのせてトーストにするのが、まとらの月イチのお楽しみである。
古着は買わない。
「なにそのパン屋さん」
よもぎ子たちは、いつもの公園に来ていた。
「古着屋さんだよ」
「古着買わんくせに……で、それがなんなの」
そんなパ……古着屋でまとらはあるものを見つけた。
うずたかく積まれ並べられた古着のその奥、隠すように置かれたそれこそ、
「そう、RCGブースター・パック!」
「ブースター……って、なに?」
ブースター・パック(拡張パックなどとも)は、数枚のカードが封入されたデッキ強化などのためのパックである。
RCGの場合はAランク1枚、Bランク1~2枚、Cランク2~3枚の計5枚が封入されている。
この5枚の内、必ず1枚MCが出るようになっている。
「そして!そのブースター・パックが、ここに4つも!」
「すげー!」
「なんと、おひとつ10円!」
「やっす!」
興奮が隠し切れない二人。
それもそのはず、初対戦からひと月ほどの間、ずっと同じカードで対戦していたのだ。
その辛さ、推して知るべし。
「分け方どうしよっか」
「分け方?」
「選んだ方に使えるカードが入ってるとは限らないでしょ?だから、一回封を開けて、ドラフト形式で欲しいカードを選ぶのもアリかなって」
「なるほど……でも、相手がどんなカード使うかわからない方が、面白いよね」
「そうなんだよね~」
悩んだ結果、とりあえず2パックずつ選び、どうしても使い道のないカードが出た場合に交換し、使えるカードはすべてデッキに投入ということになった。
「じゃあこちら、手数料20円になりま~す」
「はいはい」
カードを分け合った二人は、パックを開け中のカードを確認する。
「どれどれ……」
中を開けてみると、ダブりはCターンストップのみで、他の9枚すべて見たことがないカードだった。
(メイン……お、Aランクがある)
C槍兵 HP:4 AT:2
【後衛攻撃(前)】後衛に通常攻撃を加えることができる。
A戦乙女 HP:7 AT:4
【後衛攻撃(前)】後衛に通常攻撃を加えることができる。
【防御(前)】前衛にいる間、DF+1
【後方支援(後)】1ターンに一度、相手前衛に1点の特殊ダメージを与えることができる。
C槍兵とA戦乙女、どちらも後衛攻撃を持つ前衛型のMCだ。
(A戦乙女……なんて読むんだろ?いくさおとめ……かな?)
よく見ると、ルビが振ってある。
A戦乙女
(……なんで横文字なんだ?まあ、いいや。次はサブだな)
C銀の兜【装備アイテム】×1枚
装備者に【異常耐性(全)】を付与する。
C黒い霧【攻撃魔法】×1枚
対象に毒の状態異常を与える。
新しい状態異常カード。
全体毒などへの対抗になるだろうか。
Cお取り寄せ【通常アイテム】×1枚
山札から通常アイテムを1枚選んで引き手札に加え、山札をよく切って戻す。
B聖なる壺【防御魔法】×1枚
1ターンの間、アイテムと合成の使用回数をひとつ増やす。
アイテムサーチとアイテムの使用回数を増やすカード。
この2枚が手札にあれば、好きなタイミングで好きなアイテムを使うことができそうだ。
B魔法の杖【装備アイテム】×1枚
装備者の通常攻撃がAT2の魔法攻撃になる。
B魔法剣【攻撃魔法】×1枚
1ターンの間、対象のAT+2
B魔法剣は普通に使えそう。B魔法の杖は……。
(防御無視とはいえ、AT2は低くない?そんなもん?)
A整列の笛【通常アイテム】×1枚
自分の陣形を組み直す。
陣形の並びを変えることができるカードだ。
前衛と後衛右を入れ替えることもでき、攻防両面において切り札となれそう。
ローテーション扱いにならないため、毒ダメージを受けることもない。
「どう?使えないカードとか、あった?」
向こうもカード確認を終えたのか、まとらが訊いてくる。
「ううん。どれもいけそう」
「そっか、わたしも1枚以外は全部いけそう」
魔法カードあたりだろうか。
もしかしたら、よもぎ子にとっては有用なカードかもしれない。
「どんなカード?交換しようか?」
「また今度ね」
断られた。
あとはこの10枚をデッキに組み込み、10枚を抜かねばならない。
「ある意味、デッキ組んでる時がいちばん楽しいんだよね」
そういうものだろうか。
そういうものかもしれない。
(とりあえず、使い道のないB魔法の鏡は外すとして……あ、A聖騎士も外さなきゃいけないのか)
新しく組み込んだカードが必ずしも前のカードより使えるとは限らないのが、難しいところ。
「どう?よものデッキは」
「う~~ん、どうだろう」
「こっちは凄いよー」
まとらは自信ありげにふふふと笑う。
(まあ、自信満々なのはいつものことだけど)
なんとかデッキを組み終えた二人はジャンケンを済まし、よもぎ子は後攻に決まった。




