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よもぎローテーション  作者: @+
2/19

第二回 よもぎ子、対戦相手を探す。

 あれから、一週間ほどが過ぎた。

 しかし、対戦相手はおろかRCGの存在を知っている者すらいなかった。

 ゲーム好きの友人に訊いてみても、知らないと言う。

 ネットで検索してみても、公式サイトすら見当たらない。

 あげくの果てに、買った店の店員すら知らないときた。

「もう、こうなったら、あそこへ行くしか……!」

 よもぎ子の住む水猪みずのい市の民において、困ったときに『あそこ』と呼ばれるところといえば、

 水猪市中央公園の中にある市民ふれあい掲示板ただひとつである。

「あそこ行ってダメなら、もう、観賞用にするしかない!」

 ふれあい掲示板には、書き込んだ人や物がすぐに見つかるという都市伝説のようなものがある。

 もっとも、人が多く集まるところなので見つかりやすいのも当然といえば当然なのだが。


 翌日、木曜放課後。

 学校帰りに中央公園へ寄ったよもぎ子は、ふれあい掲示板の前まで向かう。

 掲示板は、公園内の中央付近にあるドルフィンズ初優勝記念モニュメントの横に設置されている。

 ドルフィンズは地元のプロ野球チームで、優勝は30年前の一回きりだが、「無いよりはあった方が良いよね」という程度には愛されている。

 この公園、モニュメントが建てられる前はまだ公園では無かったが、モニュメントと掲示板の設置後にうじゃうじゃと人が集まるようになったため、「ついでに公園も造ろう」という当時の市長の思い付きで現在の姿になっている。

「やっぱ、目立つところに貼った方が良いよな」

 掲示板は、紙をテープなどで貼り付ける決まりとなっており、ピンを刺したり直接ペンで書き込むなどをすると、近くのベンチに座っている老婆にしこたま怒られるハメになる。

 ざっと掲示板を見渡して貼り場所を探していると、ひとつの貼り紙を見つけた。


『 RCG対戦相手求む まとら 』


「こ、これは……!」

 さすがのふれあい掲示板、こんなに簡単に相手が見つかるとは……。

 貼り紙にキズや汚れなどは見当たらない。おそらく、つい最近貼られたものだろう。

 さっそくポケットからペンを取り出し、貼り紙の余白に『日曜午後1時ごろ希望 よもぎ子』と書き入れた。


 翌日、金曜放課後。

 中央公園に向かってみると、どうやら相手もすぐに確認したようで、例の貼り紙にはでかでかと赤字で『了解!!』と書かれていた。

 どんな人なんだろうか。明後日が待ち遠しい。

「変な人じゃないといいけど」


 そして当日。時刻は十二時半。

 少し早く来てしまったが、遅れるよりはずっといい。

 キョロキョロとあたりを見回しそれっぽい人物がいないか探るが、特にそれらしき人物はいない。

 そもそもカードゲームをやる上で、それっぽい人物などというものがあるのかという話だが。

「ねえ、あなたがよもぎ子?」

 急に後ろから話かけられた。

 振り向くと、よもぎ子より頭半分ほど背の低い、ショートカットの少女がそこにいた。

 一見、小学生くらいにも見えるが、お高い私立の女子校の制服を着ていることから、よもぎ子と同じ中学生であることが伺える。

「えーと……まとら?」

「おー!やっぱり!やっと会えたよー!」

 きゃっきゃと笑いながらハイタッチを強要してくる。

 悪い人間では無さそうだが、ちょっとうっとうしい。

「中学生?何年?」

「え?ああ、中1……」

「同じだ!いえーい!」

「い、いえーい!」

 二度目のハイタッチ強要。よもぎ子はやけくそ気味に応じる。

「よもって呼んでいい?」

「別にいいけど……」

 少女――千雨まとらと簡単な自己紹介を交わした後、公園内の休憩所へ向かった。


「お、空いてる空いてる」

 休憩所にはやや大きめの机があり、普段は寝てる人がいたり勉強をしている人がいたりとさまざまだが、今日は誰もいないようだ。

 まとらはパッパッと机を払うと、なにやらシートを上に敷き始めた。

「それなに?」

「ん?プレイングマットだよ」

 プレイングマットはカードゲームなどを遊ぶときに使用するもので、必ずしも使う必要はないが、今回のように外で遊ぶ場合にキズや汚れがカードに付く心配をせずに済む。

「よもって、あんまりカードゲームとかって遊んだことない?」

「あんまりっていうか、こういうのは全然……」

「じゃあ、ダメカンも持ってないよね」

 そう言うと、まとらは持っていた袋からおはじきのような物をマットの上にじゃらじゃらとこぼした。

「これはねー、ダメージとかそういうのを数えるときに使うんだよ。たくさんあるから、一緒に使っても足りると思うよ」

「いいの?ありがと~」

「あとはマーカーね。ドクロのやつが毒用で、雷のやつがマヒ用ってことで」

「へぇ~、いろいろあるもんだなぁ」

 まとらは生来の世話焼き気質からか、それともせっかく見つけた対戦相手を手放すまいとしてか、初心者のよもぎ子にあれこれカードゲームについて教授する。

「よし!じゃあ、そろそろ始めよっか!」

 制服の上着を脱ぎ腕まくりをしながらまとらは言った。

「先攻後攻はジャンケンでいいよね?勝った方が先攻ってことで。いくよ!」

 お互いに気合が入る。

「「さーいしょーはグー!!」」

「ジャン!」

「ケン!」

 ……先攻はよもぎ子に決まった。

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