第十三回 プレゼント・フォー・ユー(1)
「てなことがあって」
「怪しい人についてっちゃダメだよ……」
先ほどのおじさんとのあれこれを説明したよもぎ子。それに対するまとらの反応はさもありなん。
「いやあ、ほら、虎穴に入らずんば虎子を得ずっていうか」
「……まあ、カードが手に入ったのはいいけど」
「まあ、ゆっきーには後で渡すとして、さっそく新カードを見てみようじゃないの!」
「おー!」
経緯はともあれ新たなブースター・パックを手に入れたよもぎ子たちは、いそいそとパックを開封する。
中をざっと見てみるみると、いくつかダブりがあった。
C薬草【通常アイテム】対象のHPを1点回復する。
C爆薬【通常アイテム】対象に1点の特殊ダメージを与える。
C癒しの風【防御魔法】どちらかの場の状態異常をすべて回復する。
B馬車【通常アイテム】どちらかの場をひとつローテーションさせる。
(この辺は複数枚いれられるからまあ良いとして)
A整列の笛【通常アイテム】陣形を組み直す。
(問題はこっちだよなぁ……)
同名のカードはCランクなら3枚、Bランクなら2枚までいれられるが、Aランクは1枚しか入れられない。
よもぎ子はちらりとまとらの方をみやる。向こうにも何かダブりがあれば、トレードしてくれるかもしれない。
(まあ、それは置いといて、新カードの方を確認しよう)
C店番 HP:4 AT:1
【アイテム+1(後)】1ターンの間、アイテムの使用回数をひとつ増やす。
飽きるほど相手の場で見たC店番が、とうとう自分のものに。序盤とはいえ手が増えるのは助かる。
(使うとしたら、C戦士とC槍兵のどっちかを外すことになるのかなー)
B天使 HP:6 AT:2
【回復(後)】ローテーション後に後衛にいる場合、HPを1点回復する。
【防魔+1(後)】1ターンの間、防御魔法の使用回数を1つ増やす。
もう1枚は新カード。おじさんの使用したB悪魔と対のようなカードだ。
(B賢者を外すわけにはいかないけど、B重戦士を外すと攻撃力が……)
C耐魔の指輪【装備アイテム】装備者の受ける魔法ダメージを1点減らす。
魔法ダメージを減らす装備アイテム。魔法は対象を選べるため、使いどころは難しそう。
B棘の盾【装備アイテム】装備者に【反撃(前)】を付与する。
【反撃】は攻撃を加えてきた相手にダメージを与えるスキル。
盾とついているが、どちらかと言えば攻撃的な装備アイテムだ。
A神威の杖【装備アイテム】装備者の通常攻撃がAT3の魔法攻撃になる。
B魔法の杖と同じタイプの装備カード。
(うーん、AランクでAT3か……)
よほどガチガチにDFを強化してきた場合などは効果的だろうが、そもそもそんな状況が頻繁にあるかどうか。
「ねえ、予備のカードとか持ってきてる?」
まとらが話しかけてきた。
「今日はデッキだけ」
「そっか。じゃあ、今日はもう帰ろうか。」
「だな」
新カードが手に入った今、前のデッキそのまま対戦をする気も起きない(それプラスゆきはるにもパックを渡さねばならない)ため、後日仕切り直しということになった。
翌々日、よもぎ子宅。
「トレードをしよう」
家にくるなりまとらが言う。
もっとも、よもぎ子としても願ったりな提案ではある。
「いいね、やろうやろう」
「ぼく、交換できそうなカードないですけど……」
「あ」
よもぎ子とまとらは予備のカードを20枚持っているが、ゆきはるは今回初めてブースターを手にしたため、10枚しか予備がない。
「じゃあ、また今度……?」
「どんどん先延ばしになるなぁ」
「別に、二人でトレードしてもいいのでは……」
ゆきはるの言うことももっともだ。と、いうことで初めてのトレードを行うことに。
よもぎ子が出すのは当然、使い道のないA整列の笛のダブり。アイテムデッキのまとらにはドンピシャなカードではあるが、そこはしょうがない。
「あたしはこのカードを出す!」
「わたしはコレ!」
お互い同時に相手へカードを見せる。まとらが提示してきたのはA神威の剣だった。
A神威の剣【装備アイテム】装備者のAT+2
「お、武器だ武器!」
「A整列の笛!?こんなのいいの!?」
有用なカードが手に入り喜ぶ二人。それを見るゆきはるはちょっと羨ましそう。
「よーし!トレードも済んだし、対戦しよう!」
「やろうやろう」
トレードのいきおいで対戦になだれ込む。ゆきはるはほったらかしだ。
ジャンケンの結果よもぎ子の先攻に決まる。
最初の手札を引き陣形を整える。
C鉄の剣【装備アイテム】装備者のAT+1DF-1
C白い霧【攻撃魔法】対象にマヒの状態異常を与える。
Cターンストップ【防御魔法】3ターンの間、どちらかの場のターン開始時のローテーションを無効化する。
B棘の盾【装備アイテム】装備者に【反撃(前)】を付与する。
A神威の盾【装備アイテム】装備者のDF+2
(まずまずといったところかな?)
若干装備アイテムに偏って入るが、手札が使えないということは無さそう。
C戦士 HP:5 AT:2【追撃(前)】通常攻撃を加えた相手に、1点の特殊ダメージを与える。
C槍兵 HP:4 AT:2【後衛攻撃(前)】後衛に通常攻撃を加えることができる。
C魔法使い HP:3 AT:2【攻魔+1(後)】1ターンの間、攻撃魔法の使用回数をひとつ増やす。
(うーん。最初の前衛はどっちにすべきか……)
結局C店番の登用は見送ったよもぎ子。
(相手のメイン次第だけど、C槍兵とC魔法使いで落とす方向で行くか)
お互いに陣形が決まり、対戦が始まった。
1ターン目、先攻よもぎ子の手番。
先攻:よもぎ子
前衛 HP:5/5 AT:2 C戦士【追撃(前)】
後左 HP:4/4 AT:2 C槍兵【後衛攻撃(前)】
後右 HP:3/3 AT:2 C魔法使い【攻魔+1(後)】
手札:A神威の盾 B棘の盾 C鉄の剣 C白い霧 Cターンストップ
山札MC:3 山札SC:19
後攻:まとら
前衛 HP:4/4 AT:3 C探偵【見破る(前)】
後左 HP:3/3 AT:2 C泥棒【妨害(後)】
後右 HP:4/4 AT:1 C店番【アイテム+1(後)】
手札:5枚
山札MC:3 山札SC:19
「ゆけ!新カード!」
「C探偵!?」
C探偵 HP:4 AT:3【見破る(前)】1ターンの間、相手の手札を見ることができる。
C泥棒 HP:3 AT:2【妨害(後)】2ターンの間、このカードが後衛にいるときのみ相手のアイテム使用回数をひとつ減らす。
C店番 HP:4 AT:1【アイテム+1(後)】1ターンの間、アイテムの使用回数をひとつ増やす。
まとらのメインがまた変わっている。
C探偵は相手の手札を覗く能力を持った前衛で、HPはそこそこだがATはかなり高い。
「手札を覗く……やっぱりあったかー」
「ふっふっふ。これでよもの手の内は筒抜けだよ!」
C探偵が前衛にいる間は、だが。
「まあ、使っちゃえば見られても多少は平気だろ、C白い霧でC泥棒の【妨害】を封じる!」
「あっ!?」
「そしてC鉄の剣をC槍兵に装備してターン終了!」
2ターン目、後攻まとらの手番。
先攻:よもぎ子
前衛 HP:5/5 AT:2 C戦士【追撃(前)】
後左 HP:4/4 AT:3 DF:-1 C槍兵【後衛攻撃(前)】装:C鉄の剣
後右 HP:3/3 AT:2 C魔法使い【攻魔+1(後)】
手札:A神威の盾 B棘の盾 Cターンストップ
山札MC:3 山札SC:19
後攻:まとら
前衛 HP:4/4 AT:3 C探偵【見破る(前)】
後左 HP:3/3 AT:2 C泥棒【妨害(後)】
後右 HP:4/4 AT:1 C店番【アイテム+1(後)】
手札:5枚
山札MC:3 山札SC:19
「そうか、ずっと黒ばっかり使ってたから忘れてたよ」
これで次の手番にC泥棒を倒すことができる。【妨害】の影響を少なく抑えられそうだ。
「まずは【見破る】でよもの手札を見る!」
「くっ……!」
などと言ってはいるが、手札に今使えるカードは無いため、特に困ることもない。
「B棘の盾……へぇ」
まとらも新カードに興味を示す程度の反応だ。
「じゃあ、C爆薬でC魔法使い、C探偵でC戦士を攻撃してターン終了!」
C爆薬【通常アイテム】対象に1点の特殊ダメージを与える。
これといった攻撃目標もないのか、ダメージを分散させてきたまとら。
(C槍兵じゃないのか……?)
3ターン目、先攻よもぎ子の手番。
先攻:よもぎ子
前衛 HP:4/4 AT:3 DF:-1 C槍兵【後衛攻撃(前)】装:C鉄の剣
後左 HP:2/3 AT:2 C魔法使い【攻魔+1(後)】
後右 HP:2/5 AT:2 C戦士【追撃(前)】
手札:A神威の盾 B棘の盾 Cターンストップ
山札MC:3 山札SC:19
後攻:まとら
前衛 HP:4/4 AT:3 C探偵【見破る(前)】
後左 HP:3/3 AT:2 C泥棒【妨害(後)】
後右 HP:4/4 AT:1 C店番【アイテム+1(後)】
手札:4枚
山札MC:3 山札SC:19
「あたしのターン!ドロー!」
C鉄の盾【装備アイテム】装備者のDF+1AT-1
A業火の剣【攻撃魔法】対象に4点の魔法ダメージを与える。
(よしよし)
C泥棒を倒せばC鉄の盾でC槍兵を守ることができる。
「まずはC槍兵でC泥棒を攻撃、撃破!」
「くっ……!いけ、B闇商人!」
B闇商人 HP:5 AT:3
【アイテム+1(後)】1ターンの間、アイテムの使用回数をひとつ増やす。
【妨害(後)】2ターンの間、このカードが後衛にいるときのみ相手のアイテム使用回数をひとつ減らす。
「うわ、なにこれ」
Bランク初の【妨害】持ち。【アイテム+1】も持っている。
「C泥棒にB闇商人とかまるっきり悪党じゃん!」
「まあ、カードゲームだし……」
だからといって、ここまでくればコンセプトデッキだ。
アイテムではなく、悪党の。
しかし、これでC鉄の盾を使うことはできず、次の手番でC槍兵は倒されてしまう。
おそらく、そこを踏まえてのC爆薬の使い方だったのだろう。
「むむ……ターン終了!」
4ターン目、後攻まとらの手番。
先攻:よもぎ子
前衛 HP:4/4 AT:3 DF:-1 C槍兵【後衛攻撃(前)】装:C鉄の剣
後左 HP:2/3 AT:2 C魔法使い【攻魔+1(後)】
後右 HP:2/5 AT:2 C戦士【追撃(前)】
手札:A神威の盾 A業火の剣 B棘の盾 Cターンストップ C鉄の盾
山札MC:3 山札SC:17
後攻:まとら
前衛 HP:5/5 AT:3 B闇商人【アイテム+1(後)】【妨害(後)】
後左 HP:4/4 AT:1 C店番【アイテム+1(後)】
後右 HP:4/4 AT:3 C探偵【見破る(前)】
手札:4枚
山札MC:2 山札SC:19
「わたしのターン!B闇商人でC槍兵を撃破!」
「くっ……!B天使を場に!」
B天使 HP:6 AT:2
【回復(後)】ローテーション後に後衛にいる場合、HPを1点回復する。
【防魔+1(後)】1ターンの間、防御魔法の使用回数を1つ増やす。
「あ、かわいー。そんなのあるんだ」
よもぎ子はB重戦士を外してB天使を入れている。攻撃力を落としても手札の回転率を上げたい考えか。
「ローテ回復ってことは、こっちに撃っても意味ないか……B毒薬をC戦士に!」
「うあ」
B毒薬【通常アイテム】対象に毒の状態異常効果を与える。
B賢者は外していないと読んで、前に出る前に前衛を減らす手だ。
「さらに!新カードB引き出物を使用!」
「B引き出物??」
B引き出物【通常アイテム】相手の山札の一番上にこのカードを置く。
山札の上に置く、ただそれだけのカード。
「なんか、よくわかんないな」
「ふっふっふ……ターン終了!」
不敵な笑みを浮かべるまとら。
「そういえば……」
と、ずっと黙って対戦を眺めていたゆきはるが話しかけてきた。
「トレードしたカードってデッキに……」
「あ!」
「いれるの忘れてた!」
二人そろって声を上げる。一体、何ためのトレードだったのか。




