第八回 弟の友達でござる
日曜の昼、弟が骨折した。
自らのこぼしたジョースで足を滑らせるという、かなりしょうもない骨折の仕方だった。
母は弟を病院に連れて行き、今、家にいるのはよもぎ子ひとり。
あまりに暇なので、つい先ほどまとらを遊びに誘った。
デッキでも組んでいれば、そのうち来るだろう。
ピンポーン。
ほら、きた。
え?いや、早くない?
玄関に向かってみると、そこにいたのは弟の友達だった。
「えーっと……」
(なんて名前だっけ……確か忍者みたいな名前だったような)
「あ、忍足です。雄二くんいますか?」
(そうそう、忍足だ忍足)
忍足ゆきはるは弟と同じ5年3組の男子で、ちょくちょく家に遊びにやってくる。
「あいつなら、骨折して病院行ってるよ」
「えっ!大丈夫なんですか?」
「まあ、大丈夫だと思うけど、もしもの時は香典はずんでくれよな」
「ええ……」
ゆきはるは真面目なタイプらしく、よもぎ子の冗談にもノってこない。
「……じゃあ、そういうことで……」
弟が帰ってくるでも無いし、その友達と会話を続ける理由もない。
ドアを閉めようとした、その時。
「あ!そのカード!」
「え?」
よもぎ子が左手に持っていたカードを指さす幸治。
「それ、RCGのカードですよね」
そういうと、ゆきはるはポケットからカードの入ったケースを取り出した。
「え!?ウソ!」
まさかこんな近くにいたとは。
今まで一体、どこに隠れていたというのか。
「最近見つけたんだけど、他に持ってる人が全然いなくって……」
わかるわかる、とよもぎ子は強くうなずく。
どうせなら、こっちが弟だったら良かったのに。
「まあまあ、立ち話もなんだし、入って入って!」
閉じかけたドアを開き、ゆきはるを招き入れる。
招き入れた後はお茶とお菓子でおもてなし。
そのあとはお互いの苦労話に花を咲かせる。
「へ~。他にも持ってる人がいるんですね」
「なあ、そろそろ対戦やろうよ」
「あ、はい!」
話を切り上げ、対戦の準備をする。
ゆきはるにとっては、初めての対戦だ。
よもぎ子は、RCGの先輩としての力を見せつけたいところ。
(あ、デッキそのままだ。……まあ、大丈夫だろう)
最初の手札を引き、陣形を整える。
C火炎弾【攻撃魔法】対象に2点の魔法ダメージを与える。
C黒い霧【攻撃魔法】対象に毒の状態異常を与える。
Cクイックターン【攻撃魔法】どちらかの場をひとつローテーションさせる。
B破魔矢【攻撃魔法】相手の手札を1枚選んで捨てる。このカードで相手の手札を覗くことはできない。
A魂の光【防御魔法】対象のHPを4点回復する。
(攻撃魔法が多いな……)
アイテムが1枚くらい欲しいところだが、前回のような手札事故よりはマシか。
対戦が、始まる。
「よし、あたしの先攻だな!メインカード、オープン!」
1ターン目、先攻よもぎ子の手番。
先攻:よもぎ子
前衛 HP:4/4 AT:1 C僧侶【防魔+1(後)】
後左 HP:4/4 AT:2 C槍兵【後衛攻撃(前)】
後右 HP:3/3 AT:2 C魔法使い【攻魔+1(後)】
手札:A魂の光 B破魔矢 C火炎弾 C黒い霧 Cクイックターン
山札MC:3 山札SC:19
後攻:ゆきはる
前衛 HP:5/5 AT:1 C武闘家【連続攻撃(前)】
後左 HP:3/3 AT:2 C泥棒【妨害(後)】
後右 HP:4/4 AT:1 C店番【アイテム+1(後)】
手札:5枚
山札MC:3 山札SC:19
「あれは……?」
C武闘家 HP:5 AT:1【連続攻撃(前)】自身の通常攻撃回数をひとつ増やす。
通常攻撃を連続で行うスキル。
ATは低いが、武器を持たせればC戦士並みの威力を出すこともできる。
「うわー!やっぱり魔法とかあるんだ、いいなー」
どこかで聞いたようなセリフが飛んでくる。
MCの構成から見ても、まとらと同じタイプのデッキなのだろうか?
(いつも通りにやればいけそうだな……)
「C火炎弾でC泥棒を攻撃!ターン終了!」
「うわ、魔法強いなー」
2ターン目、後攻ゆきはるの手番。
先攻:よもぎ子
前衛 HP:4/4 AT:1 C僧侶【防魔+1(後)】
後左 HP:4/4 AT:2 C槍兵【後衛攻撃(前)】
後右 HP:3/3 AT:2 C魔法使い【攻魔+1(後)】
手札:A魂の光 B破魔矢 C黒い霧 Cクイックターン
山札MC:3 山札SC:19
後攻:ゆきはる
前衛 HP:5/5 AT:1 C武闘家【連続攻撃(前)】
後左 HP:1/3 AT:2 C泥棒【妨害(後)】
後右 HP:4/4 AT:1 C店番【アイテム+1(後)】
手札:5枚
山札MC:3 山札SC:19
「ぼくのターン!C鍛造を使って、山札からC鉄の剣を引く!」
C鍛造【通常アイテム】山札から装備アイテムを1枚選んで引き手札に加え、山札をよく切って戻す。
C鉄の剣【装備アイテム】装備者のAT+1DF-1
「こ、これは!」
Cお取り寄せの装備版カードだ。
アイテムデッキなら、1枚は入れて置きたい。
「C鉄の剣をC武闘家に装備、C僧侶を連続攻撃で撃破!」
「くっ……!C武闘家のくせに、剣使うとか……」
「中国武術とかは剣とかも使うし……」
カードの絵柄も、どこか中国武術っぽく見えなくもない。
先手を取ったつもりが先に倒されてしまったよもぎ子は、早くもB賢者を場に出した。
B賢者 HP:6 AT:2
【防魔+1(後)】1ターンの間、防御魔法の使用回数を1つ増やす。
【攻魔+1(後)】1ターンの間、攻撃魔法の使用回数をひとつ増やす。
しかし、戦いはまだ始まったばかりだ。




