第一回 よもぎ子、説明書を読む。
夏も近づく五月の頭、草切よもぎ子はこの日とても気分が良かった。
多分、今まで生きてきた中で一番じゃあなかろうかというぐらい、気分が良かった。
普段ないがしろにしている弟に、カードゲームを買って帰るほど、気分が良かった。
「ただいまー!なんか面白そうなの買ってきたぞ!お前、こういうの好きだろ??」
「いらない」
「えっ」
「いらない」
二回も言われた。さっきまでの気分の良さはどこへやら、今まで生きてきた中で一番じゃあなかろうかというぐらい落ち込んでしまった。
なぜ、あんなに気分が良かったのだろう?今となってはもう、思い出すこともできない。
自室に戻ったよもぎ子は、ため息と頬杖をつきながら、カードゲームの箱をいじくり回していた。
「どうしようかな、これ」
一箱100円という捨て値で売られていたとはいえ、わざわざ買ってきた物を捨ててしまう気にはなれなかった。100円もあればうまい菓子の一つも食えようというもの。
「RCG……ローテーション・カード・ゲームねぇ。まあ、ちょっと中見てみるか」
もしかしたら、さっき自分が言ったように面白いかもしれない。
たとえ面白くなかったとしても、絵がきれいなら観賞用として置いておくのもいい。
「どれ」
箱を開けた中には、カードが30枚と説明書が入っていた。とりあえずカードを見てみる。
「えーと、魔法使いに鉄の剣、馬車……」
絵柄はどこかぼんやりとしているが、可愛らしい感じで悪くはなかった。
肝心の中身はどうか。
「よくわかんないな……説明書でも見るか」
RCG取扱説明書
・用意するもの
メインカード(以下MC)Cランク3枚 Bランク2枚 Aランク1枚 計6枚
サブカード(以下SC)24枚
・メインカードについて
MCは場に出して戦わせることができるカードです。
・カードの見方
(例)C魔法使い HP:3 AT:2 【攻魔+1(後)】攻撃魔法使用回数+1
C魔法使い――カードのランクと名前です。
HP:3――耐久力を表しています。0になると場から取り除かれます。
AT:2――前衛時に通常攻撃で与えられる基本ダメージ量です。
【攻魔+1(後)】――MCが持つスキルです。カッコ内は使用できるMCの位置を表しています。(前―前衛 後―後衛 全―前衛後衛問わず)
攻撃魔法使用回数+1――スキルの効果です。
・場に出す条件
Cランク――最初から場に出すことができます。
Bランク――CランクのMCが1体以上やられているときに場に出すことができます。
Aランク――CランクのMCが3体、もしくはBランクのMCが1体以上やられているときに場に出すことができます。
新たに場に出すMCは、やられたMCのいた位置に出します。
・通常攻撃について
前衛にいるMCは相手に対して通常攻撃をすることができます。
通常攻撃は基本的に相手前衛への物理ダメージとして扱われます。
・ダメージの種類について
ダメージには『物理』『魔法』『特殊』の三種類があります。
物理ダメージはアイテムなどによって増減するDFの値によって軽減されます。
魔法ダメージは魔法などによる攻撃によって与えられ、DFでは軽減されません。
特殊ダメージはアイテムなどによる攻撃によって与えられ、DFでは軽減されません。
・状態異常について
MCに継続的に不利益な効果をもたらす効果を状態異常と呼びます。『毒』と『マヒ』の二種類があります。
複数の種類の状態異常を同時に同じMCに与えることはできますが、同じ種類の状態異常を同じMCに与えることはできません。
状態異常はターン経過で自然に回復しますが、アイテムなどで回復・無効化することもできます。
・毒について
毒は4ターンのあいだ、ローテーションするたびに1点の特殊ダメージを受ける効果を与えます。
・マヒについて
マヒは2ターンのあいだ、スキルをひとつ使用できなくする効果を与えます。
・サブカードについて
SCは場のMCをサポートしたり、相手のMCに攻撃を加えたりすることができるカードです。
無条件で使えるカードは1回の手番につきアイテムカード1枚のみです。2枚以上のアイテムカードや魔法カードなどを使用する場合は、使用回数を増やすスキルを持ったMCが場に出ている必要があります。
また、特殊な状況を除き、場に出ているMCより高いランクのSCを使用することはできません。
・カードの見方
(例)C薬草【通常アイテム】対象のHPを1点回復する。
C薬草――カードのランクと名前です。
【通常アイテム】――SCの種類です。
対象のHPを1点回復する。――カードの効果です。
・装備アイテムについて
装備アイテムはMCに装備して使用するSCです。
装備できるのは基本的に1体のMCにつき1枚だけです。
新たにアイテムを装備する場合は、現在装備しているアイテムを捨てる必要があります。
新たにアイテムを装備せずに、現在装備しているアイテムだけを捨てることはできません。
MCがやられたときに装備しているアイテムがある場合は、そのカードも捨てます。
・ゲームの流れ
1.先攻後攻を決める。(ジャンケンやコイントスなど、方法はなんでもかまいません)
2.SCの山を切り、手札として5枚引きます。
3.CランクのMCを図1のように前衛1枚と後衛2枚に分け、伏せて並べます。これを『陣形』と呼びます。
図1 C戦士 SC山札 MC山札
C魔使 C僧侶 SC捨札 MC捨札
4.MCとSCの山札も裏にして図1のように置きます。MCの山札を切る必要はありません。
5.お互いに準備が済んだら、MCを表にしてバトルを開始します。
6.1ターン目(先攻)は通常攻撃を行うことはできません。通常攻撃を行えるのは2ターン目(後攻)からです。
7.3ターン目からはターン開始時にひとつ、図2のように時計回りにMCの位置を動かします。これを『ローテーション』と呼びます。
図2 C魔使 SC山札 MC山札
C僧侶 C戦士 SC捨札 MC捨札
8.ターン開始時のローテーションの後、手札が5枚よりも減っている場合、手札が5枚になるように山札からカードを引きます。
9.上記の流れを繰り返し、相手の陣形を組めなくする、つまり先にMCを4体以上倒した方の勝利となります。
「うーん?」
わかったような、わからないような。
習うより慣れろとも言うように、誰かと遊んでみるのが一番であろうが、そんなものこの場には無い。
「これ、他に誰か持ってる人いるかなぁ」
ルールをなんとなく把握したよもぎ子は、対戦相手を探すことになった。
状態異常と装備アイテムの説明が抜けていたので追記しました。(2016/9/23)




