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十八禁になりかねない召喚を華麗に回避する。

作者: みね

ムーンのほうで書いているものが冗長だと評判なので、1話で完結するエロいのを書こうと思ったら何故かこうなりました。

「急にこちらへお呼びだてして申し訳ございません。」


 思わず目を閉じるほどの閃光が収まったのを感じた。それと同時に私へ話しかけている声がした。


「万が一、貴女があちらでの暮らしに強い未練がお有りなようでしたら、今すぐに元の場所へお返しいたします。貴女はこちらでの暮らし次第でこちらに永住できますかな?」


「ここは私のいた世界とは違う世界なんですね。」

「はい。」


(うわー。やっぱり……)


 私がここは異世界であると思ったのは、問いかけの主であるおじいさんだった。


 見事に白い髪は腰まで届くほど長くて、身につけている黒いローブもいかにも実力のある魔法使い風。そこまでだったら、意識のないときに学校の寮からファンタジー映画のスタジオに運び込まれたってほうが有り得るんだけど。


 でも、そのローブに刺繍されている8色の竜が螺鈿細工のように発光してる。反射じゃなくて、明らかにその糸自体が光っている。そんな糸なんて私は聞いたことがない。

 極めつけに目が蝿。眼球に白目がない代わりに、ボルドー色のそれは六角形が集まって球を形づくっている。あくまでも見た目がなので、実際に複眼かは判らないけど、これだけは言える。どんな特殊メイクでもこれは現代では実現不可能。


 魔法使いの老人が私をここに呼び出した。そう推測すると床どころか壁一面に描かれている模様はいかにも魔法陣。



 異世界に来ちゃったよ。しかも異世界って言ったら大抵の人間が想像するヨーロッパ風で魔法がある世界っぽい。




「この世界について詳しく教えてください。」

「勿論ですとも。」



(でも、親しみやすそうな人で良かったあ。)


 このおじいさん、眼球は蝿だけど、眉毛口ひげ顎ひげがふっさふさで顔面が白いもこもこな毛にかなり埋もれているうえに、笑いじわができている。

 身長は私より頭半分高いけど、お伽話に出てくる小人っぽいし、穏やかオーラが出ている。



「外にある部屋でお話しても良いですかな? 不安があるようでしたら、ここに椅子を据えてお話いたしますぞ。」


 不安とは、話を聞いて元の場所に帰りたいと訴えてもやはり帰さないとならないかという意味なんだろうな。

 おじいさんが帰さないと思えばこの場にいてもどうしようもない気がするけども、戻るか留まるか五分五分で考えてる人なら、いつでも戻れるんだってホッとするはず。



(うん。いい人達に招かれたんじゃないかな? 私、重要人物扱いっぽいよね。)


 万が一未練があるようならって言ってた気がするし、こっちに来る条件に『元の世界に未練のない人』とかあるのかも。



「そうですね。じゃあ、私は何のために呼び出されたのかを簡潔に教えてください。」


 さすがに秘められた力があるはずだから準備期間もなしに魔王や隣国と戦えと言われれば日本に戻る方向でお願いしたい。

 ゲームとかにそういう召喚あるよね。


 でも、この対応からして、私に到底できないことは望まれないと信じる。

 農作業で鍛えてるから、そこらの高校生よりスタミナ有り。ちゃんと鍛えてくれるなら害獣駆除もやってやろうじゃない。




「こちらの世界の者の妻となって子孫をなるべく多く成していただきたく、召喚いたしました。」


「それでしたら、条件次第でできると思います。用意してもらっている部屋でゆっくりと話を聞かせてください。」

(なるほどー。よくよく考えたら戦争の助っ人で私(平和な国の子供)を呼びだすってないよね。)


 おじいさんの一言目が帰りますか?だったのにも納得がいった。重要ではあっても急ぎじゃない話だもんね。



 この世界はこんな召喚をするほど女性が不足している。

 生殖能力が落ちてる? 男女比が偏ってる? どっちのパターンかな?



 そんなことを考えてるうちに椅子を勧められていた。


 通された部屋は、華美じゃない(高価だろうけど)シンプルな内装で10畳くらいの応接間。やっぱり話すのは蝿の眼のおじいさんだけ。


 昔は王侯貴族が総出で出迎え、考えうる限りの趣向を凝らし歓迎したんだって。

 でも、いきなり召喚される人間を、大人数で出迎えて豪奢にもてなすと、威圧感がハンパないから怖いって思われちゃうって過去の経験から学んだんだって。



(ラッキー。本当にいい世界じゃない。)


 この世界の配慮のおかげで、サンドウィッチのマスタードは抜いてなんて注文も気安くできたし。



「ここは召喚の塔です。我らがオルネジラン王国の中心を担って来た要衝中の要衝です。そもそも、異なる世界より女人が此方へ顕現されたのがオルネジラン王国の興りなのです。始まりの女人であらせられるクマ様は――」


(ようしょうって? あ、また分からない言葉出てきた。けんげん?権限じゃないよね? あーダメ。これ後で質問する前に何訊くか忘れちゃうパターンだ。)



 30分は越えたと思われる説明というより一方的な演説によると、異世界から来た女性達によってこの国は潤沢な魔力と豊穣な文化を謳歌しているとのこと。


「つまり、私達異世界人と子供を作れば魔力が高い子供が生まれる。だから、この国の中心にいる偉い人と結婚して欲しいと。」


 子作り理由はまさかのファンタジーなパターンでした。



 なんでも、人が世界を越えることで魔力が高くなるそう。特に、私の世界(地球)は魔力抵抗が強いため元々の魔力も実は高いとのこと。


 魔法が使えもしないのに能力が高いって奇妙な感じするんだけど、某アメリカのヒーローな論理なんだろうね。たしか、あのヒーローも自分の星じゃあ空は飛べなかったはず。あちらは魔力じゃなくて重力だけど。



「左様です。そちらの希望は最大限考慮いたしますし、お試し期間というものも設けますのでじっくりとお選びください。」

「お試し期間ってとりあえず付き合ってみてダメならお断りっていうことで合ってます?」


 軽い。もしかしたら意味違う?と思った私は間違っていないんじゃないかな。


「ええ。お望みでしたら閨での相性もお試しして構いません。」


 私はかなりの間抜け顔になっていたと思う。文字どおり、開いた口がふさがらなかった。

 中世っぽい格好してるし、男性はともかく女性の貞操には破ったら死ってくらい煩いと思い込んでいた。

 軽いというか、本当にそれでいいの?ってツッコミたくなる。性病とか、選ばれなかった人の後々の評判とか。大丈夫なのかな? ちょっと心配になってきたよ。異世界ライフ。




「あかね様もお相手はひとりと御考えですかな。」


 老人は信じられないことにガッカリしている様子だった。


「この世界は一夫一婦…ひとりの女性に夫はひとりじゃないんですか?」


「王を除いてはその通りです。ただし、魔力を欲する家はいくらでもございます。ですが、召喚は早くて2年おきが限界です。そのため、花嫁を必要とする家に対して花嫁はその1割以下なのです。残念ながら、すべての家に花嫁をというのは夢物語ですな。その代わりに召喚された方は特別に夫を好きなだけ持つことが許されています。」


 召喚された人間限定で多夫一婦制なんだ…



「もちろん、降臨いただけた女人方を害するような真似はいたしません。ですが、なるべく多くの者に情けを頂けたらというのが我々の願いです。」


 私達限定でビッチ推奨ってこと…? 敬われてるっぽいけど大丈夫かな。



「それだと、誰の子供か分からなくなりません?」

「心配ございませんよ。夫とされる方の間で子供を儲ける順番を決めて生活していただくことになりますので。閨では順番の者ひとりのみを夫とし、それ以外では婚いだ全員を夫とすることとなります。」



「昼は全員平等にって、無理があると思うんですけど。家から家に移動する時間とか、だいたい理由をつけて家に留められちゃったらどうしようもなくないですか?」


 たしか、平安貴族の話でそういうのあった。通い婚のうえに重婚だから、縁起が悪いうんぬんで移動できないってごまかして重要な日も夫を独占って話。


 みんな少しでも早く自分の子供が欲しいだろうし、分からなくはない。でも、その渦中になりたいかって言ったら嫌すぎる。



「あかね様が複数の夫を持てば、皆で過ごす専用の屋敷もこちらで下賜いたします。暮らし向きも寵を競うぶんだけ良くなりますよ。チキュウではハーレムというのでしたかな?」

「ひとりがいいです!」


 ひとつ屋根の下で、女ひとりに求愛する男複数?

 絶対に嫌!想像だけで息が詰まるって!

 表面上仲良くされても後ろにたちこめる不穏さをスルーするような鈍感無神経じゃないから、私。

 そういう苦労はモテたいモテたいって吠えてる男子がすればいいと思う。


 本当にこっちの意思を優先してくれる世界ところなんだよね?? 有無を言わさずそれだったら泣き寝入りするしかないんだけど。



「そうですか…ひとりでも構いませんが、最低でも御子を5人儲けるまで夫と床を共にしていただきたい。貴方の魔力ならば、御子でも国家安泰には不足ないでしょう。」

「分かりました。」




 条件は悪くないと私は思った。


 私は孤児。親の記憶も無い養護施設育ち。


 扶養されている子達と違って、学校へ行くお金どころか衣食住のお金も自分で稼がないと駄目。ほとんどの人間が大学まで進むご時世にはかなり世知辛い話だ。



 だから私は考えた。


 農家に嫁ごう。農家なら大学まで学が無くても煩く言われないはず。

 今は全寮制の農業高校で土や牛と戯れてる。奨学金という借金付なんだけど、大学に行きもしないのに進学校に通っていましたよりは心象もいいはずって思って。

 現代日本は童謡よろしく15で嫁には行けないんだからしょうがないと思うんだ。


 高校を卒業したらフリーターで農家を回って嫁にどうですかアピールをする。


 そんな現代日本人としては時代錯誤な人生設計をしていた。


 だって、私にはバリバリ働いてキャリアを重ねるなんてパワーがないんだもん。だいたい、頭の出来もこのマイナスの境遇から盛り返せるほど良くないし。

 大学生活を謳歌して適当な職に就いていい相手と結ばれるなんて恵まれた子達の特権だよ。



★★★



「夫はひとりがいいけど……ひとりだけじゃ食をどうにかってツラいよねえ…」


 おじいさんはいい人っぽいけど、提供された食事がちょっと酷かった。



 たとえば、サンドウィッチ。

 パンも鶏肉もうま味に乏しくて硬い。レタスっぽい葉は野菜というよりハーブの仲間っぽい。


 うん。食べられないことはないんだ。1日中肉体労働で娯楽もないだったらむしろ一番の楽しみになると思う。チーズはクセがあるけど美味しかったし。

 でも、不自由なく生活していたらじわじわ引っかかる味なんだよね。


 これ以上を求めるなら食材の改良が必要。そして私の生きているうちに成果をあげたいならば魔法という技術も絶対に必要なはず。



「苦手なんだよねえ…恋愛。」


 客観的にならなくても分かるよ。

 愛想を越えた表情が必要なんだよね。ぼわわわんってなる感性が必要なんだよね。


 ………苦手どころか落第かもしれない。



 でも、食材改良の人手だって先達だって、ひとりだけじゃツラい。


「…よし!」


 恋愛無しでどうにかならないか交渉してみよう!

 美味しいものが食べたいっていうのは異世界でも共通なはずっ!!



★★★



「……異世界ナメてた。」


 ベッドに八つ当たりダイブしたけど跳ねずにふんわり受け止められた。雲のような寝心地ってこういうことか。



 異世界ライフ2日目にして、行き詰まっちゃったよ。


 異世界人、味覚違った。

 はちみつとシロップの区別がつかないレベルだった。逆にどれもパクチーでしょうって葉野菜の違いが分かるみたい。


 とどめに地球人好みの食材は結婚後の特典として育てられているとのことで。



 それに、動きやすい服も下着も、私達でも扱える照明も、結婚後のお楽しみ。


 最低限の生活は保証するって、生活の質を上げたければ夫を捕まえろって意味だったんだ。



 食の知識はそこらの人間よりあるという自信が3日も経たないうちに砕かれた。


 科学は無くても魔法がある。日本の農業技術を魔法で実現する研究を仕事にしようと思ってたのに。


 もちろん、田植えとか家畜の世話とかなら、少しは戦力になる自信あるけど。

 仮にも偉い人の嫁が肉体労働で貢献とかできないだろう。ていうか、できても有難迷惑ってやつなの確実だよね。



「偉い人との付き合いなんてこなせる気しないよ…」


 私は人付き合いってものが一番の苦手だ。人と会話して時給1,000円と手作業で田植えして時給650円だったら、迷わず田植えってくらい苦手だ。

 でも何も役に立てなければ、頑張って偉い女性のしてることに慣れないと穀潰しになってしまう。


 でも、もしかして子供さえちゃんと産めば働かなくていいのかな? むしろ女は外に出るなって国もあるもんね。



「ううん。やっぱり何か子供を宿す他に、私がこの世界に在ってもいい理由、見つけないと。」


 だって、もし私が子供が産めない身体だったら最悪だ。

 その気なら日本に戻れるってことは強制送還だってできるってことだ。


 不妊症が分かるころに日本に帰されても私は食べることも難しくなる。

 こっちには不妊治療なんて無い――



「そうだ!」


 思いたったが吉日。私は再び蝿の眼のおじいさんを呼び出した。




「本当にその条件でよろしいのですか?」

「はい! 違う世界の私にも子供を宿すことができると証明できてこその貢献ですから!」


 夫の条件を『子供を欲しがっているけれど授からない人』でと希望した。これなら研究者として重要だから、一生この世界の滞在が許されるはず。



「そうですか…1名条件を満たす方がおられます。」


 おじいさんは乗り気じゃなかった。

 そりゃあ、失敗したら子供もできないままだと思うと尻込みするよねと、もう一押し。


「万が一、私が生きている間に成果がでなくても将来性はありますよ。もしかしたら、異世界に頼らなくても魔力の強い子を授かる方法だって分かるようになるかもしれないです。」

「おお…なんという秘術……! そのような術があかね様の生国には御有りなのですな。そこまでこの世界のことを案じてくださるとは望外の幸福です。どうかどうか私共にその術をご教授くだされ!」

「もちろんです!」


 おじいさんが乗り気じゃなかったのは違う原因だったって、私が気づかなかったのはしょうがないと思う。



★★★



 異世界ライフ3日目で早くも夫候補と会うことになった。

 まあ偉い人となれば首都に住んでるものだもんね。もしかしたら、魔法で瞬間移動とかできちゃうのかもだし。


「はじめまして 私は藤あかねといいます。あかねが名前です。子供が授かるように一緒に頑張りましょう。」


 条件に合う相手は、いかにも高貴な人だった。金髪碧眼、程よく引き締まった肉体のきらきらしいイケメンだ。

 推定30くらい? けっこう自信ある。私は休日は図書館のライブラリーでハリウッド映画を観るのが趣味な白人スキーなので。



(うわー。この人だったらそれこそ中世のやたら豪華な冠とか家具にも負けないよ。でも、私みたいな子供が相手でいいのかな?)



 そう思って1秒も経たずに、顔は高貴なイケメンが、首輪から自由になって庭駆け回る犬並みのハイテンションで迫ってきた。


「お、おお…なんて可憐なんだ! この儚げながらも女性らしいまろみ…っ! 本当にこの天女が私の妻なのだな!?」



 え、この人、なんかやばい魔法でもかけられた? 幻覚とか洗脳とか。

 天女って…どう考えても百姓見習いに使う表現じゃなくない?

 優しい世界だと思ったけど、まさかの暗黒世界?



「落ち着いてください。貴方もきちんと名乗らなくては名前も呼んでもらえませんぞ。」


「はっ、そうだな! 初めてお目にかかる、私はエデュワースリッツェンブラウと言う。貴女が末永く幸あるように全力を尽くす所存だ!」


 呪われてるっぽいテンションにちょっと引いたけど、なんと、瞬時に回復した!


 そこらの人がやったら偉ぶってとムカつくような口ぶりも格好いい。やばい魔法が解けたらもっと格好いいんだろうなとワクワクしちゃう。

 だって、姿も声も全部がドストライクなんだもの!


 名前も外国人ならまあまあ有りそうな長さだ。頑張れば覚えられそうで良かった。蝿の眼のおじいさんなんてじゅげむかってくらい長くて後でこっそり覚える方向でいくことにした。

 響きに馴染みはまったくないけれど異世界だからしょうがないよね。



「ええと、どこまでが名前でしょうか? あなたを呼ぶ名前、家族共通じゃない名前、オッケー?」


 おい、私カタコトになってどうする。相手は言葉が通じる人だから。

 でも、手の届かないイケメンがいきなり夫なんてことになったら、喜びすぎて少々テンションがおかしくなるのは勘弁してほしい。



「全てだ。私に家名はまだ存在しない。」


 前言撤回。名前長かったです。下の名前なんて長くて5文字がせいぜいかと思ってたけど異世界だなあ。



「夫婦ですし呼ぶときはエドさんでいいですか?」

「もちろん。こちらも親しい者は特別な名で呼ぶんだ。」

「改めてよろしくお願いします。エドさん。」



 できるだけ丁寧に頭を下げて、そういえばここの挨拶は握手だったと思い出したときだった。


「蜜蝋肌…っ」ドサ。

 なんか変なことを言われたと思ったらエドさんが失神した。



 もしかしなくても魔法の副作用だよね。やっぱりやばいやつなんだ。

 嫌がったのかな? すごいイケメンだし、私としては鑑賞のみ(ノータッチ)でも充分満足なんだけど。



「あの、エドさんの魔法は解いてあげてください。抱かなくても子供が授かるようにできるので。私としてはこの麗しい人と知り合えるだけでもありがたい話ですので。」



 すると、おじいさんは私に哀れみの目を向けてきた。

「なんの魔法もかかっていません。エデュワースリッツェンブラウ様はトーヨージンが非常に…偏執的にお好きなのです。」


「偏執的ですか?」

 これはなぜそこ言い直したのとツッコまざるを得ない。



「好みの女人でないと逢おうともしませんし、いざ好みの女人に逢えばこのとおり興奮しすぎてしばしば失神されるのです。」

 エドさん…確かによく見ると顔はにやけてる。



「王弟殿下であらせられますし、魔力は最高峰なお方です。子孫を残していただけるのは非常に助かるのですが、大丈夫ですか?」

 おじいさんが心配そうに私の様子を窺ってくる。



「大丈夫です……」

 性的に人種差別しちゃうのはまあ人のこと言えないので、残念イケメンとの結婚を了承した。

 顔がちょっと引きつっていたのはしょうがない。



 エドさんは復活早々日焼けしていると生来の蜜蝋肌が際立ち美しいなと褒めてきた。

 作業服の襟ぐりから見えたんだろうね。

 つくづく発想が残念な人だ。その正直さも含めて残念。



 私がその残念さも含めて愛しいと思うのは少し先の話。


【王弟と宮廷魔道士の会話】

「貴方と添い遂げたいという女人が降臨なさいました。」

「トーヨージンか?」

「左様です。黒髪黒眼に黄色い肌の女人です。」

「ハーフという可憐さが惜しい者ではないだろうな。」

「貴方のおっしゃる可憐の基準が私には存じかねます。」

「可憐とはトーヨージンのことだ。」

「説明する努力をしてください。」

「可憐には、程良いカタチ程良いまろみが絶対だ。主張しすぎぬ目鼻立ちに蜜蝋肌だとなお良い。この世界の女とはカタチからして異なる天女、それがトーヨージンというものだ。」

「…(これで痩せぎすな女人がお好みなのかと思えば違うとおっしゃる。分からない御方だ。)…可憐な女人を妻とするためにもせっかくの機会を逃すべきではないと注進いたします。」


エド(仮名)は骨格肌きめにこだわる東洋人スキー。おっぱいはBカップくらいが至高と思っているので、巨乳貧乳の世界で生きている大半男性には好みが伝わりません。

言うまでもなく、あかねは彼のドストライクです。

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― 新着の感想 ―
[一言] とてもおもしろかったのです。 ……が、続きは無いのですか? あかねと残念夫との今後が気になります!
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