同姓同名
これは300字以内の超短編です。
ある少女が、売れない役者にファンレターを書いた。
その男は、夢を見ることに疲れていた。だが少女は直向きな思いを綴り、それが一層男を苦悩させた。
あるアイドルが、新星のごとく現れた。彼女は見る者すべてを魅了し、名を馳せていく。
男は驚いた。手紙の差出人の名が、画面に映し出されている。彼女だったのかと。
男は密かに喜んだ。アイドルが自分のファンなのだと。自分も捨てたもんじゃない。いつか彼女と同じ場所に立とう。
男は手紙を手に、再び夢を見る。
だが、アイドルは知らない。彼女に愛されていると信じる彼の存在を。
それでも、男は気づかない。彼を愛する本当の存在を。
そして今日も、少女は直向きに彼を追い掛けるのだ。