最悪の再会で関係は再開した
『春川さん、、、』
どうしてここに奴がいるのだ。訳が解らない。相手もどうして私がそんなに困った顔をするのか訳が解らないと言った顔をしている。さっきまで口の中に広がっていた甘いケーキの味が一切しなくなった。そして、心臓の動きが速くなる。
『覚えててくれたのにその反応?もっと嬉しそうに言ってよ』
『ど、どどどうしてここに?』
『ふっ、慌てすぎだろ。俺ここでバイト始めたんだよねー。1ヶ月前からさ』
ああああ、何て事。散々私の人生に影響を及ぼしておいて更には私の唯一のオアシスにまでこいつは侵入してきたということか。自分の運の無さを恨む。そんな私の気持ちを知ってか知らずか男は続けて話す。
『そんでさ、この店何となくお前が好きそうだなーと思ってたんだよね。そしたら先週バイトあがりに見かけてさ。そん時は用事立て込んでたんで話せなかったんだけど』
『はあ。先週に声かけてもらえば春川さんのシフトお聞きして今日絶っっっ対に来なかったんですが。どうせ貴方のことだから用事なんて彼女とデートってところでしょ?』
盛大に嫌味を込めていった。しかし、相手は何故か笑みをたたえている。こいつには嫌味すら通じないのか。何て図太い神経してるんだろう。
『どうやら俺は相当意識されているらしいな。ん?彼女とデート?心配するな、只今絶賛シングル満喫中だ。用事とは今度友達の結婚式があってな。新郎の友人代表として手紙を読むんだ。その準備だよ』
え。けっ、結婚式?、、、、、まさか違うよね?
急いで携帯を取り出してメールを送る。''さやかの旦那さんになる人名前なんていうの?''
ああ、どうかただの勘違いでありますように。すぐに返信が来る。
この男にも確認を取らねば。
『どうした?いきなり携帯開いて』
『春川さん。その新郎の名前教えてください』
『ん?渡辺學だけど』
ああ、どうか嘘だと言って。こんな時に偶然再会しといて仮に今会わなかったとしてもまた再会しただなんて。
私は彼女の返信画面を閉じれずにいた。そこには''渡辺學''という三文字があったから。
『え、もしかして。新婦の友人代表ってまさか。』
こいつは勘がいい。
『そうですけど何か!ああもう最悪!!』
抑え切れない怒りを漏らす。誰を恨めばいいのだ。
『おい、本人目の前にして最悪とか言うなよ。流石に傷付くぞ』
『あ、ごめんなさい。でも本当に最悪で、、、』
『わかったからそれ以上に言うな。で、この後空いてるか?』
な、何だ何だ。これよりまたさらに私に関わってこようとするのか、この男は。
『ヤダって言っても連れてきますよね。わかってますよ』
『うん。流石よくわかってるな高校の後輩兼元カノは』
心臓がどくりとはねた。簡単に呼び覚まさないでよ暫く封印してたつもりの記憶なんだから。私は動揺がバレないように取り繕う。
『うるさい。それ以上言ったらセクハラで訴えます。全力で』
『事実だろ。何だそれごときでセクハラって。それより早く行くぞ』
彼は会計を勝手に済ませ私の腕を強引に引っ張って連れ出した。
こうなることはわかっていたけど改めてうんざりする。何で振りほどけなかったのか私。
『痛い痛い痛い。力強いよ、腕掴まないで下さいって。セクハラ!』
『ああ、ごめん。暫く女を連れて歩くことなくてつい。』
嘘つけ。私を女だと思ってないからこうなるんでしょ。
『じゃあ、こうするか』
そう言って彼の右手が私の左手を包んだ。なんだ、優しくできるんじゃない。ってそうじゃなくて!
『ちょ、ちょっと!やめて下さい!嫌がらせですか!?』
『手を繋ぐのにどうして嫌がらせになるんだ』
『嫌な記憶思い出すからですよ!夏は特に!』
『、、、、、』
急に黙って立ち止まったりなんかして何よ。私は本当のこと言っただけなんですけど。
『、、、、。なあ。』
『はい?』
『、、、、、。いや、何でもない。後で言う』
結局私は手を振りほどけなかった。




