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スケルトンの奴隷商  作者: ぎじえ・いり
避けられない戦い
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バーサス

エキオンが生み出したそれは純粋な魔力そのもので造られた魔法そのもの。

それは物の理を超えて魔力的な破壊を相手にもたらした。


頭を砕かれ、グレンデルが崩れ落ちる。

頭を潰されてはグレンデルといえども滅びるだけだ。

あのナイフで破壊されたら修復も不可能だろう。


エキオンはナイフを刺すと同時に、その頭を蹴り、離脱していた。

エキオンの手からナイフは既に消えている。


エキオンが自らの足で走り、俺の元へと戻ってくる。

手には拾い上げたレッドボーンの剣。

それを再創造して自らの剣へと変える。


俺と目を合わせると、軽く首を振った。

魔力切れ。

つまり、さっきのは一度きりって事か。


あれほどたくさんいたレッドボーンが残りあと少しの所まで減っていた。

グレンデルに踏みつぶされた者、シャドウに倒された者。

まるで血をまいたように周囲には赤い骨が散らばっている。


結構距離を開けたと思ったが、婆が降り積もったグレンデルの残骸の後ろから姿を現す。

傍らにはデスナイト。


「なあ、そろそろ諦め時なんじゃないか?」


グレンデルを造り出した事で、婆は相当な魔力を消費したはずだ。

レッドボーンは今もシャドウが走り回り、引きつけ、数を減らし続けている。


「そうでもないさ」

「まともな戦争をした事のないあんたが軍勢を率いた所でこんなもんだろう。村は落ちず、グレンデルは役に立たない。レッドボーンの数ももはや半分以下だ。こんな策も何もない攻め方で殺されてやる程、俺はあんたに執着は無い」

「あたしの策は成功しているさ。現に、坊やはあたしの前にいる」


婆が杖を振った。

その瞬間、2体のデスナイトが動き出す。


エキオンが1体を抑えた。

アーレスはゆっくりと近づいて来る。

その間にも考える。


馬で逃げれば逃げられるだろう。

しかし、それではエキオンが逃げられない。

エキオンといえども、2体のデスナイトを同時に相手には出来ないだろう。


シャドウを戻せば、今度はレッドボーンが邪魔になる。

それにシャドウには連携なんて気の利いた事は出来ないのだ。

今のまましかない。


エキオンが倒されれば、エキオンの依り代たる俺の右手も失われる。

それは絶対に避けなくてはならない。


つまり、ここで俺がアーレスを抑えなくてはならない。

どこかでこうなる予感はあったが、こうなっては策も何も無いな。

グレンデル1体で何もかもが吹き飛ばされた。


馬上で打ち合って勝てる相手では無い。

俺は馬を降りた。


「アーレス」

「どれ、剣の腕を見てやろう」


かつて聞いた科白そのままにアーレスが襲いかかってきた。






馬の腹を叩くと、馬は走り去った。

さて、これで自らを大分追い込んだな。

逃げ道を自ら絶ったのだ。

嫌でも覚悟を決めなければ。


魔力を体中に回すイメージ、それを魔法式として固定する。

これをやる時は大抵、わざと式を壊し、体中に魔力を溢れさせる事で通常以上の力を発揮していた。


しかし、今回はそれをやらない。

あれは一度きりしか出来ない。

多用すると筋繊維がちぎれる。

俺にこれを教えたあの男も一度きりだと言っていた。


体中の魔力を安定して循環させるだけでも、かなりの力に変えられる。


アーレスの剣を受けた。

ずしりと重い一撃。

しかし、きちんと受け、そのまま返せる。

俺の剣はあっさりとかわされた。


かわしたついでに剣が差し込まれる。

それはかつて散々見てきた剣だった。


これを変にかわすと突きが斬撃に変わる。

剣を戻し、受けた。


「ふん。鈍ってはいないようだな」

「いつの俺と比べている」


振り下ろした剣をバックステップでかわされた。

水平の位置で剣を止め、突きへと変える。


さらなるバックステップでかわされた。

突き出された剣は退がりながら振られた剣に弾かれた。

剣先が天を差す。


すでにアーレスは後退から前進へと転じている。

横薙ぎの斬撃。

それをむりやりに引き戻した剣の柄で受けた。


「訂正しよう。やるようになったな」

「言ってろ」


放った蹴りはアーレスの腹を捉えた。

間合いが空いた。

呼吸を吐き出す。


ここからが本番だろう。


デスナイトの剣技の真骨頂は、呼吸無しにずっと打ち続けられる事だ。

それも自身の最も強い斬撃を。

斬撃は軌跡になり、軌跡はいつまでも俺の体中を打ち付け続ける。


俺の息が尽きるまで。

俺が根を上げるまで。


そして俺の息の根が止まるまで。


分の悪い勝負だな。


ちらりと見ると、エキオンともう1体のデスナイトは既にその打ち合いになっていた。

延々と繋げられ続ける剣閃。


ダンジョンでは3人掛かりでも持ちこたえた世界最高の剣技。

そして今はそれにひとりで立ち向かわなければならない。


必死だな。

薄く笑い、一歩を踏み出した。

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