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スケルトンの奴隷商  作者: ぎじえ・いり
避けられない戦い
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答え

グレンデルだと。

街の外に埋められた奴を掘り返したのか。

アンデッド封じの地脈操作も掘り起こされてしまえば意味はない。


この展開だけは全く予測していなかった。

この辺りにはネクロマンサーはいない。

そんな油断が生んだ、完全な失策だった。


すぐに攻めて来ないから何をやっているのかと思えば。

レッドボーンを操れる以上、グレンデルをアンデッドにしても同じく操れるのだろう。


「隊長!デカブツを呼んでこい!急げ!」


隊長は来た道を一直線に走り去る。

スケルトンの人馬はそれこそ飛翔するような軽やかさでレッドボーンをかわし、踏み越え、走り去って見えなくなった。


周囲には無数のレッドボーン。

こちら陣営の武器はすべて魔剣相当の強力な武器だ。

正直、レッドボーンだろうがただのスケルトンだろうが、敵の強度的には同じようなものとして斬り捨てられる。


しかし、この数に取り囲まれて動きを封じられたが最後、一撃で潰されるだろう。

せっかく騎乗しているのだ。

走らなくては。


まずはシャドウに命じる。

走れ。


走り出したシャドウを確認してさらに命じる。

戦え。

そして壊せ。


周囲のレッドボーンを倒して回るシャドウから目を離し、エキオンを見た。

頷き、そして走り出す。

周囲を敵に囲まれ、さらに新たな脅威が生まれつつある状況で足を止めていては、どうしようもなくなるだろう。


後ろでは見上げるばかりの巨体が浮かび上がっていた。

ただの骨に造られた魂が宿る。


既に首と脚の骨は修復されている。

そこに俺が付けた傷は無い。


足下にはデスナイトが2体。

完成まで近づかせない気か。


下手に近づき、デスナイトに掴まって、空からグレンデルの拳が降ってきたらそれで終わりだ。


逆に距離を取るように走った。


やがて婆の魔法が完成し、グレンデルは自らの足で立ち、一歩を踏み出す。

婆が足下で宣言した。


「さあ、行くよ。坊や」


声が響いた。

それは始まりの合図。


追いかけっこの始まりだった。






走る。

殺到してきている周囲のレッドボーンをエキオンが苦もなく倒し、走って行く。

その後ろから討ち漏らしを俺が倒し、進む。


シャドウは俺たちとは無関係にレッドボーンを潰し回っている。

脅威として認められたのか、かなりの数のレッドボーンを引きつけていた。

あれはあれで良いだろう。


グレンデルがかがみ、そして何かを持ち上げた。

それはレッドボーンだった。

そしてそれをそのまま。


「投擲かよ!」


投げつけられたレッドボーンがエキオンの先に着弾して盛大に骨をまき散らした。

どうやらあまりコントロールは良く無いらしい。

しかし、その遠距離攻撃は脅威だ。


目の前に落ちれば馬の速度が落ち、それに合わせてエキオンの速度も落ちる。

隊長は既に走り去っている。

ここに辿り着くまでにどれほどの時を稼げば良いのか。


一番楽なのはデカブツと殴り合ってもらう事だ。

しかしそれは間に合わないだろう。


ゆったりと歩いているようでグレンデルの歩みは早い。

全力で打ち掛かれば倒せる自身はある。


しかし、問題は足下にいるデスナイトだ。

グレンデルに打ち込んでいる隙に斬り殺されるだろう。


グレンデルとの距離が縮んでいく。

逃げ切れない。

それは確実だった。


周囲のレッドボーンに剣を振りつつ、エキオンに話しかけた。


「なあ、エキオン」

「何だ?正直余裕は無いぞ」


エキオンも剣を振りつつ返す。


「見せ場とスリル。これこそがお前の望むものだろう?」


こちらを見なかったエキオンの顔が一瞬こちらを向いた。

エキオンの望みを察するのが俺の勤め。

なら、エキオンの勤めは何だ?

合った目で問いかける。


「はっはっはっは!確かに!これ以上無い見せ場だ!ならばこちらも勤めを果たすとしよう!」


エキオンは転進して、グレンデルへと向かって行った。


まるで天を駆けるように進み、疾風のように敵を斬り刻む。

俺の守り、そこから解き放たれ、攻撃へと転じたエキオンをレッドボーンでは止められなかった。


やがてグレンデルが近づく。


足下には2体のデスナイト。


「やりな」


どこからか婆の声が響く。

するとグレンデルが拳を振り下ろした。


風きり音が轟音として響く。


まるで馬が横にスライドしていったかのようなデタラメな動きでエキオンはかわした。


そして手にした剣をデスナイトの1体に投擲する。


剣をデスナイトは防いだ。

しかし、その分、2体のデスナイトの動きにずれが生じる。


目の前にはもう1体のデスナイトの姿。


無手。

そこからどうしようというのか。


エキオンが右手を挙げていた。

その手には茜色の輝き。


創造魔法。


素材も無しに生み出されたそれは小さなナイフだった。


グレンデルの巨体に対してあまりにもちっぽけなそれを掲げてエキオンは跳んだ。

それはまるで飛翔。


デスナイトの前にはスケルトンの馬。

デスナイトへとそのまま走り寄り、そして斬られた。


エキオンは未だ宙を翔る。

グレンデルは地面を殴りつけるような動作で頭を下げていた。

再び立ち上がろうと頭を上げ、そして接近するエキオンに気付いたかのように、顔を動かした。


既にエキオンはその顔の目の前。

差し出されたナイフは吸い込まれるようにグレンデルの額に刺さった。


「ーーーーー!!」


空気が震える。

それはグレンデルの声なき咆哮。


グレンデルの額にヒビが生じる。

小さなナイフのひと突きが魔力の奔流へと変化し、流れ込む。


やがて、あまりにもちっぽけなナイフのひと突きから生じたヒビが大きくなり、そしてグレンデルの頭を完全に打ち砕いた。

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