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スケルトンの奴隷商  作者: ぎじえ・いり
避けられない戦い
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シャドウ

造られたデスナイトは、はっきり言ってスケアクロウすれすれの微妙な代物だった。

言葉をしゃべらず、そして解さない。

言葉での指示が全く伝わらなかった。


元がモンスターである以上、それは当然の事か。


左手の甲には印が残っている。

右手のエキオンのものと比べて、多少の類似性はあるもののそれよりも簡単な紋様だ。

そしてその色が紫がかっていた。


それは婆の気持ちの悪い腕を思い出させる。

つまり合っていたのだろうか?

単にそういう病気だっただけな気がしない事も無い。


印に簡単な魔法式で魔力を流し、意志で命じる。

ついてこい。

デスナイトは俺の後ろを歩き出す。


色々試してみた結果、この方法で、なんとか動かす事が可能なようだった。

その動きには戦術なんて何も無い。

ただ、行けとか、戦えとか簡単な指示しかできなかった。

連携を取るなど不可能だろう。


しかし、それでもデスナイトはデスナイトと言うべきか。

その剣さばきは圧倒的だった。

出口へと道すがらに現れたモンスターがそれこそ枝や草でも払うように刈り取られた。


しかし、他に何ができるのかが全く分からない。

創造魔法が使えるのかどうかすら怪しい。

試しに命じてみたものの、棒立ちしたまま何の反応も示さなかった。


戦力として使えない事は無い。

左手が無駄にならなかっただけでもよしとするか。


オリジナルのデスナイトと微妙に異なるそれを、シャドウと名付けてダンジョンを出た。






村へと戻ると、堀が完成していた。

予想よりも早かったな。


試しに水を流してみると、取りあえずは使い物になりそうだった。

ルークも一度、村に戻ってきていたので、そのまま村の中の事を任せる。


ルークは色々と村の中の人間に話を通した後に、また街へと向かった。


後は将軍と親父次第か。


将軍はかなりの兵を動かして、網をはったようだ。

ひとまず、領内にアンデッドの軍勢などと言う不穏な存在はないらしい。


未だ、その兵力は不明なまま。

その数が読めなくては、策自体が成り立たなくなる恐れもある。

この国で諜報関係のツテは無い。

将軍を信じて待つしか無いだろう。


後はエイディアス公に話をしておくべきかが迷う所だった。

どこまで将軍とつながっているかにもよる。


万が一、余計な横やりが入るのはまずいだろう。

だからと言って、藪蛇になっては元も子もない。


結局は最低限の報告にだけは行った。

シナリオはルークに話した通りのままだ。

公爵はそうか。

また英雄の名声が高まる訳だ。

そう言って笑っただけだった。


俺の言をそのまま信じて終わりにはしないだろう。

そこからどこまで真実に辿り着き、どう判断するかは将軍がどこまで話すかと、ルークの情報操作次第か。


余計な事はしない。

そう決めた。


しばらくして親父に頼んでいた武器が届いた。

馬車で5台分にもなる大荷物だった。

この支払いで、奴隷商の店で溜め込んだ財産が無くなった。


また戦争をする時には宜しくな。


親父は笑い、街へと帰った。


これで後は将軍次第。


やれる事はやった。

いや、これも一応やっておくか。

思いつき、ナーとサストレを呼んだ。






「魔法ですか?」

「そうだ。これを使えば死体がアンデッド創造に使われるのを防ぐ事が出来る」


サストレは魔法と聞いて逃げ出した。

どうやらあまり素養が無いらしい。


対してナーはきっちりと実際の式と展開方法、そして必要な魔力の使い方などを学び、そして組み立てを試した。


適当に獲った鳥の死骸で試したところ、ナーの魔法はきちんと発動した。

ヒューマンプライド。

生者の誇り。


この魔法は原始的な魔法式である呪詛に近い。

肉体の根源的な部分で効果を発揮し続け、アンデッドの創造を妨げる


実際にこれが必要になるような戦況にするつもりはない。


「まあ、一応だな」


どうせアンデッドの創造魔法が使えるのは婆ひとりだけだろう。

それなら婆の元に死体を運ばせなければ良い。


そういう作戦を立てたので、余程の事が無ければ使う事はないだろう。


「練習しておきます」

「ああ。もしも、俺が死んだらそれを俺に使え。婆は俺の死体で何かしたいんだろうからな」


正直、それで婆が俺に掛けたであろう魔法にどれほどの効果があるのかは不明だ。

効かない可能性の方が高い。

それでもやらないよりはマシだ。


「前にも申し上げましたが、その時には私は死んでいるでしょう」


分かった。

そう言う代わりに簡単に手を振って応え、その場を離れた。

実際に、今回の策ではナーが俺を守る機会は無いだろう。


用意した策が通用するかどうかは相手の兵力次第。


そして、その時が来た。

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