製法
まずは堀を掘る事からはじめた。
デカブツを起こし、村の周りを囲うように穴を掘らせた。
出た土は外側にそのまま盛る。
護岸する時間はないだろう。
ビフロンスから持って来たスケルトン達に堀を踏み固めさせた。
これを夜通しやらせた。
現状、この作業以外はすぐにやれそうにない。
エキオンとナーと執務室で話す。
「一番厄介なのはデスナイトだな」
デスナイトが2体。
この戦力は邪魔だ。
人間技を超えた剣技と底なしの体力、圧倒的な力。
通常の武器では傷つけられない堅牢な骨。
エキオンが造った剣ならばそれが通ればダメージはなる。
しかし、それを通すのが容易ではない。
1体だけならば、エキオンに抑えさせればそれで済む。
しかし、もう1体いるのだ。
それを何とか出来るだけの戦力が必要だった。
グレンデル戦のように魔法兵を用意するのも得策とは思えない。
それこそ婆にリッチにでもされたらたまったものではない。
「あの時のように、多勢で襲いかかって、動きを封じるしかないのでは?」
ダンジョンで戦った時の事か。
確かにあの時には何とかなった。
しかし、今度のデスナイトはあれとは違う。
「あのデスナイトは生まれたてだった。しかし、今度のは違うぞ。経験を持っている。技術や身体の強度は変わらなくとも、経験があれば当然動きや事態の対処の仕方は変わってくる」
アーレス。
俺に剣技を教えたデスナイト。
あれにあんな幼稚な作戦が通用するとは思えない。
デカブツをぶつければ何とかなるとも思えない。
必要なのはあの剣技に対抗出来るだけの戦士だ。
今度はエキオンが口を開いた。
「簡単な話だろう。マスターがデスナイトを造れば良い」
「馬鹿を言うな。それが出来るなら、俺は今頃、西方諸国を滅ぼした大英雄だ」
何に手をつければデスナイトが生じるのかなんて知らん。
憮然として呟く。
婆はデスナイトの造り方を決して俺に教えなかった。
ただ単に大量の魔力と強靭な骨があれば出来る訳では無いのは、隊長が証明している。
俺は隊長の体でデスナイトを造るつもりだった。
しかし、現れたのはハイスケルトンだった。
魔力が足りなかった訳では無いだろう。
婆に出来たのだ。
俺が婆と比べてそんなにも劣る魔力量だとは考えにくい。
何だ?
何が必要なんだ?
エキオンのように何か特殊な媒介が必要なのか?
婆との暮らしを思い出しても、特にそうした特別な何かは記憶に無い。
思い返したくもない記憶をいくら掘り出し、そして考えても答えは出なかった。
そんな俺にエキオンが続けた。
「そうか?現に見たではないか。目の前で。ただの死体がデスナイトになったのを」
「何を?いや、待て、確かにそうだ」
ダンジョンでの出来事を思い返す。
消えない悪魔の死体。
それがデスナイトになった。
確かにそうだ。
つまり、それを利用すれば?
例え出来るのがスケアクロウだとしても、試せるのならば試すべきだろう。
「面白い。今すぐソリアに行くぞ」
婆の気配は今の所、どこにもない。
しかし、だからといって余裕があるとは思えなかった。
時間がどれほどあるのか分からない。
ならばすぐに動かなければ。




