まったく
残ったナーは口を開かない。
先にサストレが口を開いた。
「俺も別に今の話を聞いて、どうこうするつもりはありませんぜ。凶悪なモンスターから、野蛮な隣人から民を守る。それは軍に入った時から変わらない思いです」
サストレも俺に鍵を渡してきた。
それはカタブツの鍵とグンソウの鍵だった。
「守るべき民に、貴方が含まれていも、それは当然だと思います」
そうか。
まだ出会ってそんなに時が経っていない。
俺がその間に何をサストレに見せられただろう?
あまりこれまで人を信頼してきた方ではなかっただろう。
サストレの率直さが嬉しかった。
「カタブツ、グンソウ、これまで通りにサストレに従え。ただし、サストレが外部の人間に余計な事を話すようなら処断しろ」
カタブツとグンソウが頷いた。
では警備に戻りますので。
そう簡単に言うと、サストレは部屋を出た。
「私も何も変わりありません。閣下を必ずお守りします」
隊長の鍵を渡してきたが、それを押し返した。
ナーが珍しく困惑した表情を見せる。
「いらんよ。どうだ?ここまで簡単な道だったか?」
アウトノエの言葉があったからではない。
あの笑顔は信頼してやっても良いだろう。
それを今になって思った。
やっとそう思えた。
「そうですね。思っていたよりは簡単でした」
やはりこいつは朴念仁だ。
ここでこういう科白を吐く神経が分からない。
しかし、そういうナーの顔は晴れやかに笑っていた。
まったく。




