えにし
リッチ。
アンデッドの王とも呼ばれる大物モンスターだ。
死を司る魔法を使いこなし、死を振りまく悪魔。
膨大な魔力を持ち、その魔力に裏打ちされた骨身は強靭で魔剣や聖剣の類いでなければ傷ひとつ付けられない。
ネクロマンサーの成れの果てとも呼ばれるが、俺はそれを信じてはいなかった。
まさか本当になるとはな。
既に外は日が暮れている。
それでも人通りは多い。
等間隔の灯りに照らされた道をエキオンと歩いた。
「さて、何か聞きたい事はあるか?」
「随分、色々とマスターの事を知ってるみたいだったな」
あの男の事か。
「酔った勢いで昔色々話しちまったのさ。俺も餓鬼だった」
今ならば絶対に話さん。
「他は?」
「あるが、聞かずとも事情は何となく分かった」
「言ってみろ」
「要は親か親代わりかの元人間が死を振りまいている。それもろくでもなさそうな理由で」
随分、想像力豊かなスケルトンだな。
師匠ってだけで、親代わりとかそこまで考えるか?
「当たってるな。俺を拾った婆がネクロマンサーで、俺に剣技を仕込んだのがネクロマンサーが使役するデスナイトだったって訳だ」
「そうか」
「まったく。面倒な話だ。ひっそりとくたばってくれれば良かった物を」
特に婆やデスナイトに執着は無い。
「わざわざあっちにいたのが、こっちに来るってのは目的に俺に会う事が含まれているかもな。その対策は必要だろう」
「どの対策だ?」
「もちろん、討ち滅ぼすための対策さ」
その小国は俺にも縁がある国だった。
立ち去り際に男に聞いた話では、ある程度俺の情報を集めていたとしてもおかしくないとの事だった。
俺がどこにいるのか、それをもし知ったのなら。
婆は絶対に俺の所に来るだろう。




