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スケルトンの奴隷商  作者: ぎじえ・いり
避けられない戦い
38/67

望み

分岐点でした。aルートとbルート、迷って結局はbルートへ。

村に俺がいなくとも、何とかなるようになってきたので、ナーとサストレ、ルークに村の事を任せ、スケルトンの補充にも出た。


いくつかのダンジョンへと向かい、ビフロンスにたまっていたスケルトンの予約分を無事に揃え、さらに在庫として8体のスケルトンと1体のスケルトンソルジャーを用意した。


それでひとまずは近隣の需要は満たせたのか、すぐにスケルトンが足りなくなる事は無さそうだった。


村に戻り、久しぶりに執務室の席に着くと、それを待っていたかのようにナーが現れ、報告を始めた。

ちょうど報告が終わる頃にルークとバンザイが姿を現す。


「交易につきましてですが、案が形になりましたので、お持ちしました」


バンザイが書類を差し出す。

それを受け取り、一通り目を通した。


提示された案は農作物の売買がほとんどだ。

広い耕作地を用意したので、余剰作物を売るだけでもかなりの利益は出るだろう。


ギルドから親方を招いて、農民の中から徒弟を募り、技術を習得させる案については困難であると示されていた。


現状、村の住人のほとんどが身分で言うなら、農奴である。

まともな財産を持っている者も少なく、修行料をきちんと払える余裕があり、年齢的にも適している人間はほとんどいなかった。


酪農案も一部含まれていたが、それも難しいようだ。

牛や豚は現在も村の中にいるものの、その数を増やせるだけの余裕は無い。

村の外に農場を作るにはモンスター対策に、また壁を作る必要がある。

それは村が軌道に乗ってからの話という事になった。


そうなれば考えるべきは、その余裕のある耕作地で何を作るかだ。

勿論、麦でもそれは構わない。


しかし、折角広い耕作地を用意したのだから、利益の出やすい、貴族や富裕層が口にするような物も合わせて生産したかった。


そう思って広げた案書を見ていると、バンザイがその中からひとつを選び、差し出した。


「私もそれが一番可能性が高いと考えました」


ルークも推すその案は茶の木の栽培だった。


「茶か。あてはあるのか?」


俺は煙草の方が正直、気にはなったが。

あまりこのあたりで、栽培しているという話しは聞いた事が無い。


「国内では無理ですね。色々と当たってみた結果、エイルマーニでの視察、交渉ならば割とすぐに出来そうです」


さすがにルークは動きが早いな。

エイルマーニは南西のイルファ商業同盟に属する国だ。

確かに修道院主導で茶の栽培を行っているとは聞いた事があった。


「良し。それじゃあそれで準備に取りかかってくれ」

「かしこまりました」


バンザイも礼をして、立ち去った。


茶か。

一般に茶と言えば、大体が野草を煎じて飲む程度の物だろう。


貴族や富裕層が飲む紅茶などは木の葉から作る物だ。

そしてそれは輸入に頼っていて、どこから輸入した物でもその値段は恐ろしく高い。


解毒作用があるという話はどこまで本当だか分からないが、俺はそういう薬効以上に味が気に入っていた。


香りが良く、率直に言って、美味い。

菓子などとは違った甘さが飲んだ後、口の中に残るのが心地よい。


あれをこの辺で作れるのなら、大きな利益を生むだろう。


「ナーは茶を飲む機会は今までにあったか?」

「いいえ。ほとんどございません。閣下のために、この館にも用意してあるようではございますが」

「なに?あるのか。それなら飲ませてやろう」


いれさせるように言うと、ナーは閣下と客人のために用意した物なので飲めませんと固辞した。


仕方無いので、ナーを出て行ったばかりのルークを呼び戻しに行かせる。

ルークは飲めと言えば、断らないだろう。

そのついでにナーにもいれてやれば良い。


何も言わずに傍らに立っていたエキオンが、誰もいなくなって声を掛けてくる。


「私が飲めないのは残念だな」

「香りも分からないのか?」


首を振って答える。


「もう少し潤いのある楽しみが欲しい所だ」

「贅沢な奴だな。スケルトンのくせに」

「スケルトンにも望みくらいあるさ。他のスケルトンはどうだか知らないけどな」


楽して暮らしたいとか考えるスケルトンもいるのだろうか?

バンザイの姿が思い浮かんだ。

いや、アイツもそこまで飛んでる奴じゃないだろう。


「エキオンの望みは何なんだ?」


特に深く考えずに問い返すと。


「それを察するのもマスターの勤めだろう?」


と、返された。

エキオンはたまに面倒くさい奴になるな。

そう思いつつも、それを考えてやるのも悪く無いかとも思っていた。

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