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スケルトンの奴隷商  作者: ぎじえ・いり
アーレスの村
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水路の魔獣

水路から巨大なビーバーが姿を現した。


アーヴァンク。


大岩程の大きさのネズミに平たい尻尾がついたような姿。

色は青黒く、手には鋭く太い爪がついている。

肉食で時には人すらも食い尽くす。


村人には水路に近づく時には必ずスケルトンを伴え、と命じてある。


たまたま近くにいた村人はすぐに走って逃げ、村人と一緒にいたスケルトンは盾と剣を構えた。


剣を向けられ、アーヴァンクは牙をむき出しにしてスケルトンを威嚇する。


スケルトンは自分からは斬り掛からない。

まずは村人の退避が先だ。


万が一、スケルトンがすぐに突っかかっていき、返り討ちにあってはどういう被害が出るか分からない。


やがて、アーヴァンクはもこもこと走り寄ると爪を一閃させた。


見た目の印象はずんぐりとしていて、あまり俊敏そうに見えない。

それでも短く太い腕から振るわれた斬撃は盾で防いだスケルトンをわずかに後退させる程の威力を見せた。


スケルトンは防御を優先していて、剣を振るのは牽制程度。

やがて、逃げた村人が呼んできたのか、サストレがカタブツともう1体、スケルトンを率いて走ってくる。


「4号!俺とカタブツが入ったらすぐに退がれ!隙を見て後ろから斬り掛かるんだ!1号は周囲の警戒!」


アーヴァンクを防いでいたスケルトンに指示を出すと、剣を抜き放った。

カタブツも既に盾を構えている。

もう1体のスケルトンは距離を取り、周囲を見張る。


「4号!入るぞ!退がれ!カタブツ、盾で抑えろ!」


4号と呼ばれたスケルトンはアーヴァンクの一撃を防いだタイミングで後退、そこにサストレが入り、剣を振るう。

剣はアーヴァンクの左肩に入り、そのまま腕を切り裂く。


アーヴァンクが叫びを上げた。

残った右腕を振り回す。

既にサストレは1歩、跳ぶように後退している。


そこにカタブツが盾を構えて踏み込んだ。

アーヴァンクの腕を押さえ込むように体当たりして、そのまま押しとどめる。


動きが止まった所で4号の剣がアーヴァンクの背中に深い傷を作る。


「ふんっ!」


横合いから差し込まれたサストレの突きがアーヴァンクの喉に深く突き刺さる。

剣を抜くと血が噴き出し、しばらく痙攣を続けた後、やがて動かなくなった。


「終わったな。4号は一応水路を見て回れ。他にもいるようならすぐに撤退して知らせろ。1号も一緒に行け。敵に出会ったら、お前が抑えて4号を逃がせ。行け!」


サストレの号令で2体が動き出す。

そこまで見物してから声を掛けた。


「さすがにやるな」

「お褒め頂き、恐悦至極って所ですな。ネズミばかりで飽きてきたんで、たまにはカーヴァル・ウシュタでも狩りたいもんです」

「馬鹿を言うな。あれが出たらスケルトンでは止められん。隊長達を呼んでくる間に被害が出るのは間違いない」


今の所、肉食の水棲馬、カーヴァル・ウシュタが畑に出た事は無い。

あれはどうやら水路の中には入り込めないようだった。

それでも出ないとは限らないので、冗談として受け取るには少々不謹慎だ。


「今日はどうしたんで?」

「畑の警備状況の視察とサストレ殿の査定です」


後ろに立っていたナーが答えた。


ソリアからエキオンを信頼する事にしたのか、ナーは俺の護衛をエキオンに任せて、村の周囲の見回りとモンスター討伐を積極的にやるようになった。


今日は珍しく、ナーの方から、サストレの仕事を見に行くと言ってきたので、俺はただ付き合っただけだ。


「それはまたご苦労さんです。問題があるなら遠慮なくどうぞ」

「特にありません。閣下もサストレ殿の事は評価しております。これからも励んで下さい」


そう言って、手にしていた書類に何事か書き込むと「では、私はこれで失礼させて頂きます」と言って立ち去った。

立ち去る時に、エキオンに「閣下の事、頼みましたよ。エキオン」と声を掛けるのも忘れない。


エキオンはそれにただ頷いただけだ。

四六時中、俺に張り付いていたからこそ、エキオンの監視か?とも思ったが、最近では俺から離れ、ナーは村のために出来る事をするようになっている。


以前はただの護衛でしか無かったが、今では村にとっても重要な役割を果たすようになっている。

そのおかげで、色々な面で俺も動きやすくなった。


「相変わらず感情の見えない人ですな。まだスケルトンの方が分かりやすい」


ひどい言い様だ。

しかしサストレの一言に頷いた。


「しかし、あれでもマシになった方だな。俺の後ろに1日中立たれた時にはエキオンとナー、どっちがスケルトンか本気で分からん」

「我が身に置き換えると、それはぞっとしませんな」


サストレは笑って返すとカタブツと共にスケルトンの様子を見に行った。


「しかし、あれの能力は確かだ」


最後に残ったエキオンが答える。


「ついに信頼する気になったか?」


しばし考え、そして答えた。


「お前がナーと話をするのはまだ先だろうがな」

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