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スケルトンの奴隷商  作者: ぎじえ・いり
ダンジョンへ
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しゃべりますよね?

デスナイトを倒し、すぐに出口へと向かう。

新顔のスケルトン達は全て倒されていた。

残ったのはここに入った時の面子だけだ。

いや、トータスの姿も無い。


俺もナーも無言で走るように急いで向かう。

またドッペルゲンガーがアレになっては面倒だ。

向かいながらも考えていた。


あんな事はもう起こらないだろう。

少なくとも俺がソリアに潜り、同じようにモンスターを殺し尽くさなければ。

あれほどのモンスターが生まれ落ちるには相当な魔力が必要だ。


今までにもドッペルゲンガーと戦った事はあったし、その結果デスナイトが現れた事など一度として無い。


考えられるのはモンスターを一度に殺し過ぎた事によるダンジョンへの魔力の過剰供給。

あれほど大量に殺せばダンジョンの中に溜まっていた魔力は相当な物だっただろう。


その事を全く考慮していなかった。


ただし、その結果がなぜデスナイトになったのかには、考えさせられるものがある。


あのドッペルゲンガーは俺の影だった。

手にした剣は強力で、俺の持つ剣と遜色無かったようにも思える。


ならば俺の鎧の特性も、もしかしたらコピーしていたのかもしれない。


骸装。

身につけた者に死の属性を加える鎧。


不意に婆の言葉が思い出される。


「死を身につけるのなら、誰よりも死を恐れよ。忘れるな。お前にとっての死は、誰のそれとも違うモノになるぞ」


忘れるな。

やがて来る死の先にあるモノを。

忘れるな。


あのデスナイトの姿が重なる。


どこまでも続くダンジョンの闇が俺の不吉な未来を予感させた。






「閣下。あれはなんだったのでしょうか?」


外の光を浴びて、ナーが問いかける。


「デスナイトだろう。最も恐るべきスケルトン様さ。ただし、完全なデスナイトって訳でも無さそうだったけどな」


高位のモンスターであるデスナイトはエキオンと同じくしゃべるのだ。

終始無言だったアレが完全なデスナイトだったとは思えない。


「なぜ、それがこの地に?」


ダンジョンへの魔力の過剰供給。

その可能性を話した。


なるほど。それではこの事は軍に詳細に報告し、対策を考えます。

考え込むようにぽつりと言った後、そう言えば、と思い出したように俺を見、そしてエキオンを見た。


「閣下。エキオンがしゃべっていたのですが、あれは?」


思わずエキオンを見た。


しゃべったか?

頭の中で問いかける。


考えればデスナイトとやり合っている時に、一度、マスターと呼ばれた気がする。


エキオンは何を言っているのか分からない、とでも言うように首を傾げ、顎を揺らした。

それで阿呆なスケルトンのつもりなのだろう。


「気のせいじゃないか?」

「いえ。確かに聞きました。デスナイトに後方に飛ばされた時に、エキオンがその顔を閣下へと向けて、確かにマスター、と」


ナーは真顔で俺を見つめてくる。


「気のせいだろう。少なくとも俺はそれを聞いていない」

「考えてみれば、閣下はエキオンには隊長達よりも話しかける機会が少なかったかと。しかしながら、私がお側を離れると、エキオンに話しかけている姿を幾度かお見かけしました」


しまった。側にいないからと油断して話した事は確かに何度もあった。

それをそんな風に見ているとは。


確かに、ナーがいる時には気を使って逆に話しかける事が少なかったかもしれない。

怪しすぎである。


ナーは譲る気は無いようだ。

エキオンが再びしゃべらなければ納得しない。

そんな雰囲気があった。

ふん、と鼻を鳴らして言う。


「今、ナーに話しておくべき事は無い。これ以上の詮索は無用だ」


これではエキオンがしゃべる事を認めているな。

しかし、今はこれが限界だろう。


「そうですか。これからは私もエキオンに話しかけてもよろしいでしょうか?」

「好きにしろ。どうせそいつは何も言わんさ」


帰路へと付き、やがては村へと辿り着いた。


今回の収穫は、最初に創造し、ガサツと共に馬車を守らせたスケルトン4体、それにスケルトンソルジャー1体だけだ。


トータスがやられ、カタブツが片腕となったので、スケルトンソルジャーの数は増えたとは言いがたい。


それでもあの、死地から無事に帰れたのは幸運だったと考えるべきか。


デスナイトの最後の瞬間の事を何度も思い返す。


スケルトン達をけしかけた時、俺にはそれでもデスナイトに確実に攻撃出来る隙を見つけられなかった。


剣を突き出せば、その腕を断ち切られる。

そんな予感すらあった。


俺が伸ばせなかった手を、エキオンは伸ばした。


剣技でエキオンに負けるつもりは無い。

しかし、俺は手を伸ばせなかった。


理由は分かっている。

かつて対峙したデスナイトの姿が思い浮かぶ。

俺はアレに勝てなかった。


昔の話。

今の俺はあの時よりも強いはずだ。

それでもデスナイトの姿に畏怖しなかったと言えば嘘になる。


より強くあるために。

そしてあの不吉を遠ざけ、違う未来へと進むために。


そのために俺はさらなる力を求めなければならない。


強く、強く、そう思った。

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