貴族院の決定
しばらく、平穏な時が続いた。
店からさらに4体、スケルトンが売れたと連絡が来たので、取りあえずは警備以外では余りつつあったスケルトンを5体、店に送った。
これで村にいるスケルトンは8体になった。
隊長達、精鋭スケルトン組は村の周囲の警戒を。
4体のスケルトンは村の中の警備を。
4体のスケルトンは畑の手伝いと村の防壁の外に出る事になる村人の警護をしていた。
バンザイは最近では、ヒュージスケルトンの封印小屋の警備が主な任務だ。
バンザイだけではさすがに心もとないので、精鋭スケルトン組から交代で人(いや、骨か)を出していたが。
この辺りの采配は既にナーに任せている。
ノヴァクは村の中で姿を見ない時間が増えていた。
露骨に怪しいと言えたが、俺からは特に何も言わなかった。
そろそろどこか、適当なダンジョンにスケルトンの補充に行きたいものだ、と考えていたところに、近頃では口をきく機会が減っていたノヴァクがひとつの報告書を持って来た。
それはグレンデルに関する事だった。
「貴族院から決定が下されました。グレンデルを討伐された暁には、その恩賞としてカドモス様を貴族とするという事です」
「そうか。そういう事になったか」
どこかで適当な名誉をでっち上げでもするのかと思っていたが、そんなに簡単な話では無かったようだ。
「閣下おひとりでグレンデルのような大物を退治せよとの仰せか」
「まさか。そのための精鋭を用意しますよ。ただし、スケルトンは今回は出番無しでとの決定です。やはりモンスターを退治するのは人でないと。モンスターがモンスターを退治したでは話になりません」
なるほど。
道理は通ってはいる。
ただ、あまりにも罠の気配が濃厚だった。
コイツ、俺の事をスケルトンがいなければ、そこらの冒険者と何も変わらないとでも思っているな。
しかし、それではあまりにも三文芝居になりそうだ。
受ければ待っているのは、暗殺者の待ち伏せか、それともグレンデルに俺ひとりでぶつけて殺させるつもりか。
何にせよ、最近のノヴァクの動きを見るに、まともに受け取る理由が何ひとつ無い。
ちらりとナーを見た。
エキオンは見るまでもなく、無反応だろう。
「精鋭とはどのような構成になっているので?」
ナーが立て続けに問いかける。
どこの部隊から人が出るのか、当然自分も付き従っていく、そもそもグレンデルの場所は特定されているのか。
ナーはやはりノヴァクとは無関係な筋から送られた人間なのだろう。
その反応は何も知らされていなかった者のそれだ。
最後の質問は俺も気になった。
「そう。それだ。グレンデルはどこにいるんだ?それが分からなくては話にならない」
「意外にも近くでしたよ。ご存じなかったのですね?」
ノヴァクの言い様は、かつての俺の言を真似したかのように皮肉に満ち満ちた物だった。




