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スケルトンの奴隷商  作者: ぎじえ・いり
エイディアスの英雄
20/67

占拠

アーレスとして新たに村がスタートしてからひと月と経たない内に考えていた面倒が起こった。


以前の村の住人が10人程押し掛け、村の一角を占拠、自分達には村で暮らす権利があると主張し始めた。


これにノヴァクは館の執務室、と言う名の俺の部屋に現れ、それ見た事かと嫌みを言う。


「カドモス様のなさりように無茶があったから、こうなるのです」


中には以前の廃村になる前の村長も混じっていた。

どうやらそいつが煽動しているらしい。

どら声が館の中にまで響いている。


自分こそがこの村の長として相応しいとし、さらには俺の批判へと繋がっていった。

俺はこの村を死の村へと変えようとする悪魔らしい。


阿呆か。

村人全員がアンデッド化したら、あっという間にワグナー将軍が軍を率いてやってくるだろう。


スケルトンに守られ、人の尊厳を忘れた今の住人達は出て行け、とまで主張し出した。

そのスケルトンが造った村、という話は全部無視か。

笑えるな。


「ならば、お前はあの阿呆の言う事が正しいと言うのか?あいつらを最初からただの村人として迎えていたとしても、同じように騒ぎを起こしていたと俺は思うがな」


人の手だけで何とかならなかったから、廃村として放置された。

それが分からずに、自らの欲望を吐き出し続けるアレはモンスターと何が違う?


「カドモス様がなされた行いに腹を立てているのです。確かに、行き過ぎた主張をしているのは確かですが、それでも全てが間違っているとは私は思いません」

「所詮、あいつらは村を見捨てた奴らだ。俺はあの教会の惨状を知っている。あんな馬鹿げた事を自分の村の人間がやらなければならなかったのに、のうのうと逃げ延びて馬鹿騒ぎしている阿呆を、仲間を見捨てて逃げた阿呆どもの事をどうして信じられる?」

「教会?何の話をされているのです?」


知らないのか。


なら、話した所で無駄だろう。

それに、話せばエキオンの事にまで勘ぐられる事にもなりかねない。


教会の死体を使って造られたのがエキオンだった。

勘ぐられるようなヘマはしないが、余計な事はしない主義だ。


「ナー、隊長達を率いて連中を捕らえろ。ちょうど良い。奴らには聞きたい事があった」


隊長たちの使役に必要な古鍵を放り投げると、ナーは無言で受け取り、深く礼をして部屋を出た。


相変わらず何を考えているのか、良く分からない女だったが、特に俺の言う事に反発する事も無ければ、私情で動く事も無い。


能力には一定の信頼が置けるようなので、既に普通のスケルトン13体の運用は彼女に任せていた。


意外に拾い物の人材なのかもしれない。


「待て、ナー。それは認められない。彼らを何の罪で捕らえるつもりだ」


ノヴァクがナーを止めようとする。

ナーの代わりに俺が答えた。


「ノヴァク。それが分からないのか?村人を追い出し、自分達で占領しようとしているのだぞ?立派な反乱じゃないか。現に村の一部を既に占拠している。言い逃れのしようもないだろう」

「そんな乱暴な!?元はこの村の村人なのですよ!?」

「元、だ。俺にとって大事なのは今の村人だ。これ以上の害になる前に摘むのは当然だろう」

「あなたは厳密にはそこまでの権利を、今はお持ちでは無いと思いますが?」


身分の上では平民のままだ。

確かにそんな権利は無い。


実権の無い相談役というのが今の俺のこの村での立場だ。

ただしそれは建前で、実際には強力な権利が生じている。


「そうだな。だが、ここは俺の領地になるのだから、俺の好きにさせてもらおう」


ノヴァクの目つきが貴族特有の人を見下したものになる。


「今回の件は勿論、貴族院へと報告させて頂きます」

「脅しのつもりか?ならもっとマシな文句を考えるんだな」


そう言うと、ノヴァクは舌打ちし退室した。


「いいのか?」


誰もいなくなった部屋でエキオンが尋ねてきた。


「ノヴァクの考えはここしばらく付き合って分かった。あいつはエイディアス公の差し金じゃない。むしろエイディアス公の対抗勢力だろうな。少なくともこの辺で一番の権力者が後ろ盾に付いているんだ。この程度でどうにかなったりはしないさ」


捕らえた阿呆どもにしても、別に処刑する訳では無い。

尋問した後に解放するつもりだった。


今回の件はエイディアス公にとってはマイナスかもしれないが、それで俺を切ろうとする程に早計な男でもないだろう。


「お前に調査してもらった件もあるしな。ワグナー将軍も動いている」

「私はそんな政治ごっこよりも早く事に当たるべきだと思っているよ」

「そう言うな。やりたい事の段取りをするのも政治だろう?」


そう言うと、エキオンは笑い声の代わりに顎をかくかくと鳴らした。


結局、元村長たちはひととおり、尋問した後にエイディアスに送った。

処遇はあちらで勝手にやってくれるだろう。


どうやらナーが連中をだいぶ脅したようで、尋問中は静かなものだった。

隊長達を貸した理由が分かっている。

ナーは最初自分が想像したよりはるかに使えるようだ。


ナーは自分がした事を直接話さなかったが隊長が出す、あの暗い紫色のオーラを出しつつ、脅したらしい。

それ以降、元村長達が村に訪れる事は無かった。


声には出さなかったが、カタブツ2号のあだ名は訂正した。

アンデッドに対する忌避感が無さ過ぎ、という話が出ているようなので、ちょっと改稿。

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