嘘を吐けるのは12時までなのに
「いまが何時か分かってるの?」
4月1日、エイプリルフール。といっても時刻は日を跨いでいる。
新学期を前に能天気に話しかけてくるのは、高校デビューと言いながらギャルに変貌した一ノ瀬桜花。
私の幼馴染でいまでも家に勝手に転がり込んでは、私をいつも困らせに来る。
「うん、分かってるよ! 二奈、大好き!」
なんて言いながら、本を読んでいる私の背後から抱きついてくる。このようにいつもいつも心を困らせてくる。
時刻は12時を過ぎていることに気づいていないんだろうか? 今日はエイプリルフールだからって調子に乗ってそう。
「あのさ桜花、エイプリルフールってそもそも午前中までなの知らないの?」
抱きついている桜花を体を振って解き、顔だけを振り向かせて少し呆れたように問いかけると「えっ、そうなの!?」と、大きな目をぱちくりさせながら固まっていた。
「エイプリルフールだから、どうせ後から嘘でしたとか言い出す気だったんでしょ」
「えっと、それは……そうだったかも……」
歯切れの悪い桜花は視線を逸らしもじもじし始めた。……こいつ。
「そうだったかも、じゃないでしょ。いつもいつも学校でも好き好き言い寄ってきて」
少し詰めると、だんだんと小さくなる桜花の姿を見て、ため息交じりに体を向ける。すると、また心を困らせてきた。
「でも、二奈だって僕のこと好きでしょ?」
その言葉に少し体を仰け反らせる。
まぁ、図星ですからね。
心の中で「あはは……」と乾いた笑みを浮かべていると、桜花が一番効く告白をまっすぐで屈託ない笑顔でもって刺してきた。
「僕のはLIKEじゃなくてLOVEだけどね」
あームカつくっ! 人の気も知らずに。
だから、ここはエイプリルフールのせいにして桜花に仕返しをした。
「わ、私もLOVE……だから」




