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第1話 私のことを教えてよ!

世界最強の魔女が記憶喪失になったら大変だな

まぁあるわけないけど!

「今日こそはお前を超えてみせるぞ・・・リヴィ!!」


「やってみなさい……。」


風が強く吹く広い草原の上で俺、ケント・ムンド・イグノータは今、世界最強の魔女に挑戦している。

その魔女は冷酷にただこちらを見ている。それだけで圧倒されそうなオーラを身にまとって。


「エクスプロード!」


「……。」


無言で防御魔法か。だが防がれるのは当たり前!爆発魔法の煙で視界を悪くすることはできた。そして


「アクア:マディドゥス!」


巨大な水球であたりを水浸しにできた!あとは俺の最大出力の雷魔法を打ち込む!


「イラ・デイ・トニt……」


まだ言い終わらないうちにパリンッ!と音がした。気づけば先程まで風に揺れていたそこらの草も、まだ宙を舞っていた水滴もきれいに凍っている。地面から伸びた氷の先が針のようになって俺の首元まで来ている。ふと顔を上げると深い青みがかった髪を風になびかせた美しい魔女が、光がキラキラと反射している氷の世界に凛としてたたずんでいる。


「また負けかーー!」


そう言って勢いよく地べたに座った。


「今回はなかなか良かったと思うわよ。雷魔法の中の上位魔法イラ・デイ・トニトラスをほとんど詠唱なしで使えそうだったし。だいぶ才能あるよ。」


「完全無詠唱であたりを凍らせたやつに言われてもな…。」


「まあそこは鍛錬した時間の差ね。それはそうと今日も負けたんだから私のお願いを聞いてもらうわ。」


いつも俺たちはこんな感じで負けた方は勝った方の言うことをひとつ聞くというなんともベタなルールで闘っていた。ただリヴィのお願いは普通と違ってなぜか俺に魔法の稽古をつける。

この魔法の稽古が普通に過酷なせいもあって、俺はリヴィと会う前は剣士だったのに今ではすっかり立派な魔法師となっている。


「今日はどんな稽古でしょうか?リヴィさん…」


リヴィは「今日は別に…」となにか言いかけたがにっこりとして言った。


「魔力の限界値上昇訓練も兼ねて魔法陣20個同時操作を20回やってもらいましょうか。」


この女やっぱ魔女だな。

見た感じは俺と変わらない17か18歳くらいで口数の少ない少女なのに言ってることとやってることはとてもそんな少女のそれではない。

溢れ出る冷酷さと厳しさから「吹雪の魔女」という二つ名がつくのも納得だ。


「うぅ、どうにかなりませんかね〜。さっきの戦いでも魔力消費しましたし〜。」


今の俺にはこれしかできない!ひたすら頭を下げる!


「えー、まあ一旦私の家に帰ってから考えようか。」


やったぜ!と内心かなり喜び顔を上げると同時にリヴィの口から声が漏れた


「あっ…!」


リヴィの方を見ると驚いた顔をしたリヴィがまさに転んでいる最中だった。自分の氷魔法に足を滑らせたのだ。


まるでスローモーションかのごとく時間はゆっくりと流れていきただ倒れていく。そんなゆっくりと進む世界の中で良からぬものを見つけてしまった。石だ。しかも割とデカいやつ。頭に当たったら記憶喪失にでもなっちゃうんじゃないかな。

まああいつは魔女だしー、世界最強って言われてるし!まさか自分の魔法で滑って転んで石に頭をぶつけるなんてあるわけn


(ゴンッ!!)


「ふぐっ!………。」


頭に行っちゃったよおい!!

「ふぐっ!」とか言って、絶対痛いじゃん!


「だいじょぶかー!」


とりあえず反応がない。よく見たら頭から血でてる……。


「いやいやさすがにありえない。だってあのリヴィだぞ。世界最強と言われたあの! ドッキリだろ!俺のこと驚かしたいだけなんだろ〜。いくら俺でも騙されないって〜」


「ん〜〜」


リヴィが起き上がった。


「ほらな!やっぱドッキリだった!魔法で俺に勝てるからって他もうまくいくと思われちゃ〜」


「失礼ですが、どちら様でしょうか?」


へ?ドチラサマデショウカ?


「まさか……まじで?……」


「マサカ・マジデ……さんって言うんですね。私は…私は………」


「私は誰ですか!?」


いや、本当に記憶喪失なってるじゃねーかーー!

大丈夫、いったん落ちつきょ…落ちとぅ…おちおちおち


「あの〜大丈夫ですか?マサカさん」


「えっと、大丈夫だけど大丈夫じゃない……です。」


「えっ!あ〜っと…マジカさんとお呼びしたほうがよかったでしょうか?」


「そうじゃなくて、なんというか突然のことで頭が追いつかなくて、でもとりあえず俺の名前はケント・ムンド・イグノータだ。ケントと呼んでくれ。」


「ケントさんですね。失礼しました。それでケントさん私は今どういう状況なんですか?」


さて、どこから話せばいいのか。


「えっとー簡単に説明すると俺とあなたが闘ってたんですけど、俺がその闘いに負けたあとあなたが滑って転んでそこの石に頭をぶつけて血を流してそしたら記憶喪失になってて」


「ひぃ!そんなことが…あっでも、血は止まってる…。手当てしてくださったんですね。ありがとうございます!」


「えっ」

思わず声が出てしまった。


「どうかしました?」


俺は治癒魔法どころか何も手当てなどしていない。それなのに出血が止まったということはおそらくリヴィの身体が無意識に治癒魔法を使ったのだろう。


「いや、なんでもないよ。」


「それならいいのですが…そういえば私は記憶を失う前どんな人だったんですか?」


「やっぱ気になる?」


あまり良くない噂しかないので話さない方が幸せだと思うが。


「そりゃ自分のことですので知りたいですよ。例え言いずらいことでも大丈夫です。私のこと教えてください!」


この真っ直ぐな目は相変わらずのようだな。こちらの心の内側を見透かされそうな目。記憶を失う前に俺を見ていた単なる興味からくる熱い視線。

普段からこんな目をしていたら「吹雪の魔女」なんて二つ名はつかなかったろうに。


「分かった。」


「まず君の名前はリヴィだ。」


「はい…それが私の本名ですか?なんか短いような…」


「本名は知らないけどリヴィーシャ・オブ・なんとかだって言ってたからリヴィって呼んでたんだ。」


「なるほど…?」


「それで君は人ではなく魔女だ。それも世界最強といわれて『吹雪の魔女』という二つ名もある。」


「魔女…ですか?普通の人とは違うのでしょうか?」


「う〜〜ん、寿命が長いのと魔力が凄まじいってことしか知らないな。」


「そうですか……ん?そうするともしかして私ってかなりの年齢ってことですか?」


「非常に申し上げにくいことに先月300歳の誕生日をお祝いしました……」


「サン、ビャクッ!」


さすがに300歳は衝撃的すぎたか…


「300歳なのにこんなに若いんですか?!見た目16かそこらですよ!魔女ってすごい!」


うん、心配した俺がバカだった。記憶がなくなっても魔女は魔女。俺たちと思考回路が違う。


「というか誕生日をお祝いしたってケントさんと私はどんな関係だったんですか?まさか…」


「いや、ただの稽古相手だが。」

一方的に俺がこっぴどくやられてただけだけど


「じゃあ、もしかしてあんまり仲良くなかった感じですか?」


なんでそんなシュンとした感じでいうんだよ。


「いやそんなこともないぞ。少なくとも半年以上の仲だし。」


「じゃあ、私が好きだった食べ物は?」


「それとこれとは…」


「私のこと教えてくれるって言ったじゃないですか!」


「うっ、でも知りません…」


「趣味は?」


「知りません…」


「お気に入りの場所は?」


「知りません…」


「どこに住んでるの!」


「近くの森の奥にある家」


「なんでそれだけわかるのよ!」


「!!失礼しました。つい声が出てしまって…」


「いや、いいよ。むしろ今まで敬語じゃなくてそんな話し方だったからそっちの方がいいな。」


嘘だけどね(半分)!確かに敬語じゃなかったけど俺にあんなツッコミなんて当然されたことない!


「分かりま…分かったわ。」


記憶ない方が可愛らしいなおい。


「それで私からも一つお願いなんだけど私の家に案内してくれないかしら。もしかしたら記憶を取り戻せるかもだし。」


戻したくね〜〜!

こんなに愛想良くなったのに。


ただその青い髪をなびかせてこっちをみる姿はどうしてもそのお願いを断る気にさせない。


まぁリヴィのことを教えるって言ったんだし。

「よし、行こうか。」


「うん!」


彼女が見せた笑顔は吹雪なんてなくて、もはや晴天そのものであった。

感想とかアドバイスとかなんでもよろしくお願いします

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