表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/9

偶然

9月18日木曜日。

放課後隣町のショッピングモールで栞太と遊んでいた僕は、たまたま入口で砥峰さんとその友達の伊丹(いたみ) りりと出会った。


「こんな所で奇遇だね」


「そうだね。

2人は今からここに?」


「うん。

芦遊君達は今からどこか行くの?」


「俺らはそこら辺でもぷら〜っと歩こうかなって」


「わは〜壱器。

学校一のイケメンとクズかわイケメンと知り合いだったなんてー。

言ってくれれば良かったのに」


伊丹りり。

ストロベリーブロンドの髪を2つに分けて結び、薄くメイクをしたいつも砥峰さんと一緒に居る女子。

ちょっと変わった性格で、周りからは重度のオタクと言われている。


「おい、誰がクズや。

そういうお前こそクズとちゃう?

よく言うやろ、クズって言う方がクズやって」


「キャハ〜クズかわイケメンにクズって言われちゃった☆

これはこれで……フフフ、ありよりのありなのかもしれない」


「え、何キモ……」


あの栞太が引いている。

いつも無理矢理にでも相手を言い負かしてしている栞太が、言葉を失う光景はかなり珍しいと思った。


「キモくて結構。

んじゃ、うちらこの後映画観たりショッピングで忙しいので〜。

行こ、壱器」


「2人共、じゃあね」


「うん、楽しんで」


手を軽く振り、栞太の方を見ると何か言いたげな目をしていた。


「どうしたの?」


「いやぁ、砥峰さんに気に入られてるように見えて」


「そうかな?

いつもあんな感じだと思うけど……と言ってもあんまり話さないから、客観的に見てとしか言えないけど」


「あの手の女は見とったら分かる。

普段他の奴に気ぃ許してへんもん。

伊丹とかいう女には許してるっぽいけど、なんか他の奴らには上辺〜みたいな」


「ほんとよく見てるね」


「女は嫌いやからな。

あ、やからと言って男に恋愛感情あるとかじゃないで」


「分かってるって」


なんて話しながら階段を下りて行った。


***


10月19日日曜日。

昼過ぎ、川沿いを散歩していた時の事だった。


「芦遊君!?

こんな所で会うなんて偶然だね」


声をかけてきたのは国道さんだった。


「国道さんもここで散歩?」


「うん。

ボク、学校近くに住んでるからさ」


今歩いているのは学校近くを流れる、この町と隣町を分断するようにある大きな川沿いだ。

僕の家は北の方にあるのだが、そこからここの南の方まで流れているのだ。


「という事は芦遊君も家この辺?」


「ううん。

僕は北の方、山の近くに住んでるから」


「え、まさかそこから歩いて来たの?

まぁまぁ距離あるよね」


「帰りは電車で帰ろうと思ってるから」


沈黙が流れる。

すると躊躇いがちに国道さんが口を開いた。


「あ、あのさ……嫌じゃなかったらだけど、一緒に散歩しない?」


「いいけど……どこに行く?

僕は南の方へ歩いて来たけど、国道さんは北の方へ歩いていたよね」


「うん。

だから、一旦川沿いを離れて隣町の南の方を歩かない?」


「いいよ。

あんまり行ったことないしね」


僕達が歩いていたのは隣町側の川沿い。

その道から逸れると、住宅街が広がっていた。


「芦遊君って散歩好きなの?」


「ん〜、そうだね。好きだよ。

歩いて景色見るのとか、風を感じるのとか好きだし」


「ちょうどこの季節だと風、気持ちいいよね」


涼し気な風が吹き抜け、髪を揺らした。


「芦遊君髪長いけど、綺麗だよね。

何か良い物使ってたりするの?」


「言われてみれば……シャンプーとかリンス高いの使ってるかも。

昔から良い物を使いなさいってお母さんに言われてたから」


「芦遊君ってお金持ちだったよね。

ボクは普通の家庭だから、そんないい物はあんまり使えなくて」


それに対して「普通の方が案外良いかもよ」という言葉を返そうかと思ったが、すぐに飲み込んだ。

相手も何気なく、恐らく選んで返した言葉だろうし、余計な事は言わない方が吉だ。


「ちなみにどこのシャンプー使ってるの?」


妙に目をキラキラさせて、ふんすと言い出しそうな勢いで聞いてきた。

思わず、その姿に笑ってしまう。


「ごめん、急に笑って。

あまりにも子供みたいだったから」


「むー、誰だって気になる物はあるよ」


「そうだね、僕が使ってるのは───」


なんて話しながら歩いて、気がつけば夕方になっていた。

暗くなる前に帰ろうと駅へ向かう。


「今日は楽しかった。

またこうして散歩出来たら嬉しいな」


「うん、僕も楽しかったよ」


「あ、あのね………れ、連絡先とか、交換してもいいかな?

ほ、ほら……今日みたいに偶然会える訳じゃないでしょ?」


「……全然いいよ。

連絡先聞かれるの嫌じゃないし」


「よ、良かった……人によっては聞かれるの嫌だし、僕とあんまり話した事ないのに変じゃないかと思って……」


「そんなに気にしなくて大丈夫だよ。

………これで、交換出来たね」


国道さんは今日一番に、顔を輝かせにこっと笑った。


「気をつけて帰ってね」


「国道さんも、気をつけてね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ