会話
7月16日水曜日。
この日はプールの授業があった。
縦半分を女子が使い、もう半分を男子を使う方式。
男子から聞こえるのはやはり砥峰さんの水着姿の話だった。
制服よりも身体が顕になったその曲線美に皆、熱を持って見ているようだった。
「きっしょい男共やなぁ」
「ちょっと、聞こえるよ」
「聞こえるようにわざと言っとんのや。
普段モテないかわいそぉ〜な男共に現実を思い知らさなアカンやろ」
「なんだと!」
「ちょっと可愛い顔してるからって調子乗んなよ!」
「うるさい!
わしは女は金ズルとしか思ってへん。
お前らと違ってキモい目で見とらんから」
「それこそ女性を軽視してるのでは?」
「なんやとぉ!?」
栞太と他の男子生徒が喧嘩する中、僕は授業を見学していた国道さんの元へ行った。
「嫌だったら答えなくていいけど、水泳はいつも見学なんだよね?」
「うん。
本当は暑いから入りたいんだけどね。
ラッシュガードありで入ろうかとも検討してるんだけど」
「そうなんだ」
「……ところでなんで芦遊君は僕に話しかけてくれたの?」
「う〜ん……なんとなく、かな?
特に深い意味は無いけど」
すると国道さんはあははと笑い声をあげた。
「ごめんごめん。
不思議な人だなって」
「そう?
気になったから話しかけに来ただけだよ」
生暖かい風が僕達の間を通り過ぎる。
立ち去ろうとした時、ねぇと声をかけられ振り返った。
「芦遊君、意外と鍛えてるんだね。
きっと女子の間では話題になってると思うよ」
「そういう君はどう思ったのかな?」
「さぁ、どうでしょう?」
***
8月13日水曜日。
夏休みの中、僕は学校に来ていた。
お盆には流石に閉まってしまうので、ギリギリ空いているこのタイミングになった。
学校へ来た理由は、図書室を利用する為だ。
わざわざ学校に来なくても近くの図書館を利用すればいいだけの話なのだが、生憎そこに僕の探してる本は無かった。
かといって、買う程欲しいとまではいかない。
だからこそ学校にあるのなら、ちゃんと読んで判断したいのだ。
図書室は冷房が効いており、涼しかった。
生徒はざっと見て5人程だろうか。
僕は目当ての本がありそうな本棚へ向かった。
(………あった!)
探すこと5分。
早々に見つけられる事が出来た。
気になってる小説家の本で、内容は確か現代の悲恋を描いたものだったはず。
冬の物悲しい感じの表紙だった。
これを借りて帰ろうかと思った矢先、見知った顔が目に入った。
砥峰さんだ。
そして目が合ってしまった。
向こうは僕に気づくと会釈し、僕も会釈で返した。
本来ならここでお別れのはず。
だけど僕は砥峰さんの方に歩いていき、一つ席を空けて座った。
「………帰るんじゃなかったの?」
僕の方を見ず、本に目を落としたまま話しかけてきた。
「そのつもりだったんだけど………なんでだろ。
ここに座っちゃった」
「そう。
どうせなら読んで帰ったら?
だって借りて気に入らなかったら、わざわざ返しに来るの面倒でしょ」
「そう、だね。
そうしようかな」
沈黙。
少ししてから気になっていた事を尋ねた。
「なんで僕がこの本を気に入らない可能性があるって分かったの?」
「そんなの簡単だよ。
貴方普段図書室利用しないでしょ?
私はよく通ってるから」
「そっか」
それから会話は無く、僕が読み終わる頃には夕方になっており、砥峰さんの姿は無かった。
伸びをする。
この本は正直言って面白かった。
だから同じ作者の本を代わりに借りて、帰路に着いた。




