表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/9

出会い

入学して早々、僕と彼女───砥峰(とのみね) 壱器(いつき)、そして国道(こくどう) 羽葉(ういは)は一躍有名人になった。

自分の容姿を客観的に見ると、切れ長の赤い瞳。筋の通った鼻にいつも弧を描いている唇。

長い黒髪は頭の後ろで結んでいる。

皆僕の事をイケメン、と言う。

声も低すぎず少し高いのが良いらしく、背も高い方、勉強も運動も得意だからか女性からは黄色い眼差しを。男性からは嫉妬の眼差しを向けられる。

そして先日、不良っぽい男子数人に絡まれ、武道を習っていた僕はそれを軽々と回避。

相手を上手く誘導する事で、こちらが一切手を出さずに勝手に相手が相手を殴って倒れ、解決した。

そんな事があったからか、余計に目立ってしまう。


砥峰 壱器。

ぱっちりとした少しつり上がった青い瞳に、整った鼻梁。きゅっと結ばれた桜色の唇。長いまつ毛にほんのり赤く染った頬。

薄い茶色の髪は長く、絹のようにさらさらしている。

豊かなラインに、細い(ウエスト)、程よい太さに伸びた脚。

小柄で華奢。スタイルの良い彼女は言わば美少女だ。

文武両道で、誰にでも優しく、声も愛らしい。出来ない事は無いと言われる程完璧な彼女は、男女問わず羨望の眼差しを向けられていた。

おまけにお金持ちで、独自の武道を習っているとの噂も。

見た目も心も天使な存在が、この地に舞い降りたようだと誰もが言った。

そんな彼女なのだから、人気にならない訳が無かった。


国道 羽葉。

おっとりとした黄色の瞳に、中性的な顔立ち。

胸も膨らんでいるのか分からず、制服も上は女子が着用しているリボンを付けているが、下は男子と同じズボンを履いている。

声も女性とも声の高い男性とも取れる声。

身長も165cm。

そう、彼女……もしくは彼は中性的で性別が不明なのだ。

ここでは僕はあえて『彼』と言おう。

彼自身が自己紹介で、自分の事は女性としてでも、男性としてでも、好きなように解釈して接して欲しいと言ったのだ。

評価は賛否両論だった。

可愛いから、見た目は良いから別に気にならない。

話してみたけど別に普通にだった。

気持ち悪い。

なんでアイツだけ制服ごちゃごちゃで、許される訳?

理解できない。


そういう訳で僕達3人はクラスで、学年で瞬く間に噂が広がり、学校でちょっとした有名人になった。


だからと言って、同じような境遇の彼女と彼と一緒に話す事は無かった。


***


5月9日金曜日。

放課後、担任の先生である空野(そらの)先生の前を通りがかった時の事だった。


「ちょうどいい、お前らこのノートを職員室に持って来てくれ」


「いい……ですけど、係の人は?」


「それが、あいつら揃いも揃って忘れたのか消えてしまってな」


空野 (れい)先生。

20代前半の、少し変わった女性の先生。

黒髪は長くいつもポニーテールにしている。

服装は主にズボンを履いており、割とシンプルな服装をしている。


「私も用事もないですし、良いですよ」


「さんきゅー!

じゃあ、よろしく〜」


そう言うと先生は教室を出て行った。


「…………」


「…………」


今まで互いの存在は知っていても、話した事なんて一度も無かった。

僕は気にせず彼女、砥峰さんに声をかけた。


「半分持って行くよ。

持てる?」


「う、うん。

ありがとう」


「別に僕も頼まれてるし」


「そうじゃなくて、気遣ってくれて。

噂通り優しいんだね」


砥峰さんは軽く微笑むと、先に教室を後にした。


***


6月12日木曜日。

突然だが僕には親友が居る。

駒川(こまがわ) 栞太(かんた)

二重の大きな紫色の瞳。中性的で可愛らしい顔立ちと、一部の女子からは人気である。

ボブより少し短く、はねっ毛のあるように固めた髪。

髪の色は、上の方は黒いが下の方はグラデーションで青く染まっている。

制服も大きく着崩し、入学式の時もちゃんとブレザーを着るのが嫌でわざと遅れた程のオシャレ好き。

学校指定のワイシャツの下には、私服の好きなTシャツを着ており、上着にはお気に入りのパーカーを羽織っている。

ちなみにズボンはちゃんと制服の、薄青いズボンを履いている。

耳にピアス、首にチョーカー、メイクにネイルと流石に着崩しすぎだと注意されているが、無視しているらしい。

授業を遅れたり、サボるのも日常。

関西弁で、キツい態度は人を選ぶ。

そんな正反対な彼と出会いは良くなかった。


───けど、色々あって彼とは一転仲良くなった。


そんな彼は今、移動教室の途中、僕の隣でこう言った。


「俺、絶対いつかホストになって女からじゃんじゃん金を巻き上げる!

そんで金持ちになって、ぜっったい幸せになったる!」


「はは、その夢叶うといいね」


「……お前はそれでええんかよ。

偽善者なんやから、そういうのはやめとけって言うとこちゃうん?

まぁ、反論されるよりマシやけど」


「ん〜、女の子も好きで使ってるのならいいんじゃないかな。

無理に巻き上げるとかは、どうかと思うけど」


「流石、心が広いことで。

ま、そういうとこが好感持てるねんけどな」


歩いていると、窓の外を見つめる国道さんが居た。


「噂のジェンレスちゃんや」


「ジェンレスちゃん?」


「ジェンダーレスの略。

俺が勝手にそう呼んどるだけや」


国道さんは僕と目が合うと、微笑んだ。

こちらに歩いてくると、どうしたの?と声をかけてきた。


「窓の外を見てるからどうしたのかなって」


「あぁ、綺麗な白い鳥が飛んでたから思わず魅入っちゃって」


「そうなんだ」


「…………」


すると、少し不機嫌そうな栞太が口を開いた。


「ところで、ジェンレスちゃん男が好きなん?それとも女が好きなん?

どっち?」


流石に僕もそれは……と話に割って入ろうとしたが、その前に国道さんが口を開いた。


「僕は好きになった人が好きだよ。

だから性別なんて関係ないかな」


栞太は口をぽかーんと開き、へぇー……と消え入りそうな声をしていた。


「へ、へぇ……思ったよりはっきりモノ言えんのなぁ」


「別にこれくらい気にしてないよ。

日常茶飯事だから……。

それより早く行かないと遅れちゃうよ?」


これが初めて砥峰さんと国道さんと話した日の記録。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ