蕾
今年のおみくじは大吉で、確か『些細な出会いがやがて大きな流れになる』とかなんとか書いていた気がする。
あまり中身を気にしない僕だが、何故だかそれが引っかかって、思わずおみくじを写真に収めた。
実際この年はいつもとは違う珍妙な出会いの数々があったと思う。
けれど今の所、そんな大きな展開になるような事は起きずに今年が終わろうとしている。
「朱里様、一通りの家事は終わりましたので帰らせていただきます」
「大晦日なのに悪いね、働かせて」
「……いえ、一人暮らしされてからメイドらしい事をする機会が減りましたので、これくらい仕事のうちに入りません」
南 日夏。
肩につくぐらいの黒髪に、端正な顔立ちをしている。
今は私服で、桃色のブラウスにデニムパンツを履いている。
彼女は僕と同い年で、芦遊家に仕えるメイドだ。
今は僕の隣に住んでいて、たまにこうして家事を手伝ってくれている。
昔からの仲ではあるが、漫画でよくあるような関係では無い。
本当にただ従える立場と、仕える立場それだけだ。
だから今でも彼女とは業務間以外の会話はあまりしない。
「年越しそば美味しかったよ。
今年もありがとうね。
来年もよろしく」
「お褒めに預かり光栄です。
良いお年を。
そして来年もよろしくお願い致します」
ぺこりと深く頭を下げると、黒の上着と少ない荷物を持って帰って行った。
来年まであと1時間。
僕はソファに横になりながら、今年あった出来事を振り返る事にした───




