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對:魔界軍(ニュー・ウェーヴと名乘る理由)

〈櫻散る迄が春なり散華夢幻 涙次〉



【ⅰ】


 私のこのカンテラ・シリーズが何故NW=「ニュー・ウェーヴ」SFの冠を戴いてゐるのか、不思議に思ふ人もゐるかもしれない。どこら邊が、NWなのか、作者本人なりの考へがあつての事なのを、少し説明して置かう。


 私自身は物書きとして、『機動戦士ガンダム』シリーズの影響を、全くと云つていゝのだが、受けてゐない。ガンダムは、ジョージ・ルーカスの『スター・ウォーズ』にその構想の礎を置いてゐる、のは知つてゐる。だけど、あれが日本の傳統的な「巨大ロボ」物のアニメの後継者である事は、否めないと思ふ。


 日本の(漫画・アニメを含めた)SF界は -特に私と同世代のSFファンは、『ガンダム』の呪縛に囚はれてゐる- 。知らないものを蔑む譯には行かない。然し、知らぬがゆゑに、その影響下にない、私の「カンテラ」は、ニュー・ウェーヴと云へるのだ。これは、「ガンダム」教の許にない、SFだ、と云ふ點で。


(別段、『ガンダム』の惡口を云はうとしてゐる譯ではない。たゞあれは、SFとしては -特にNWSFを讀みつけた目でみれば- オールド・ウェーヴの最たるもので、SFらしさに拘る余り、實は却つてSFマニアの心情とは乖離してしまつてゐる、と云へるかも知れない。その他にも、私の作には、全篇を覆ふスティーム・パンク臭など、「ニュー・ウェーヴ」らしさは、あると思ふ。)



【ⅱ】


「この作者は -と、カンテラは私の『カンテラ』を指して、云ふのである- 俺たちの事を描いて、何故にNWSFなどゝ、云ふのだらう」じろさん答へて曰く、「不明瞭ではあるけれど、スタニスワフ・レム(ポーランドのSF作家。タルコフスキーの『惑星ソラリス』原作者として知られる)の『泰平ヨン』に、カンさんは少し似てゐるかなあ。彼・ヨンは、宇宙と稱して實は思念の海を航海してゐる。そんなところに、カンさんの魔物退治の每日は、似ていなくもない」カン「へえ。流石讀書家だな、じろさん」


 カンテラがこんな事を云ひ出すのは、彼が疲勞困憊してゐる証左だ。じろさんには分かつてゐた。彼の、夢の中での【魔】集團討伐は、未だ續いてゐたのである。戦ひに氣を取られて、自分の疲勞ぶりを一顧だにせぬ。彼は、もはや朦朧とした意識で、我が身を支へてゐたのだ。


 じろ「カンさん、魔物の狀況は? 少し、寢た方がいゝ、と思ふのだが」カン「それもさうだなあ。よし、外殻(=カンテラ)に結界を張らう」カンテラは、その事に氣付かぬほど、疲れ切つてゐた。じろさんと違つて、不眠狀態では、我が身を支へる事が出來ず、この(てい)たらく。戦士としては、正直、失格してゐる、最近のカンテラなのだつた。



【ⅲ】


 結界を張られたのでは、さしもの魔界軍も、カンテラの夢に討ち入る事は出來ぬ。今度はじろさんを狙つてきた。だが、第一話でだつたか、彼は少々の不眠などは物ともせぬ、と私は書いた。日頃の武術鍛錬の賜物である。更に、魔界軍が押し寄せて來ても、彼は疲勞せぬやう、力をセーヴする事が出來た。何となれば、じろさんの「古式拳法」は、合氣道の影響を色濃く受けてゐる。合氣は、殆ど己れの力を使用せず、相手の氣合ひを利用する、そんな武術だから、である。



 ⁂  ⁂  ⁂  ⁂


〈生身には生身の(つよ)さありにけむ我がヒーローは疲勞に沈めど 平手みき〉



【ⅳ】


 ルシフェルは、魔界軍を送れど送れど、なかなかに手強(てごは)いカンテラ・じろさんの抗戦ぶりに業を煮やしてゐた。以前お傳へした「蕩らし【魔】」の生殖活動(?)に依り、用兵には困りはしなかつたものゝ、かう負けが續くのでは、不滿は募る一方である。

 そこで「シュー・シャイン」の一言が、利いた。「奴らはルシフェル様には、敵ひません。やるなら、カンテラが疲れ切つてゐる、今でせう」-これは勿論、デマである。カンテラは、急速に休息(洒落ではない)を終へ、カンテラ内でのパワー・チャージ充分な狀態で、ルシフェルの出馬を、今か今かと待ち受けてゐたのである。「シュー・シャイン」は、前回その身をカンテラに捧げる事、はつきり表明したばかりで、所謂「二重スパイ」は、世を忍ぶ仮の姿、なのである。


 さて、ルシフェル、一味の陽動作戦に乘つて來るか? もし、乘つたとしたら、その戦ひはどんな様相を示すのか? 乞ふご期待を。



 ⁂  ⁂  ⁂  ⁂


〈花咲けば散るを思ふか雀らは櫻に止まらぬ彼ら賢き 平手みき〉



 重ねて云ふが、「ガンダム」を貶めるつもりは毛頭、ない。お仕舞ひ。


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