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そしてB型の世界は始まる  作者: ぞっぴー
そしてB型の部活動は始まる
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84.桜とムックのポテンシャル

 瀬名と戸呂の一騎討ちがついに幕を開けた。


 風が木々を揺らし、その音が戦場の空気を震わせる。強はその変化を肌で感じ、即座に理解する。

 大将同士がぶつかった。この瞬間、戦の重心がわずかに傾いたのだ。


 ならば狙うべきはその空白。強は静かに、だが力強く頷くと仲間を従えて前進を開始する。

 指揮を執る者の目には明確な目的が映っていた。


 敵陣の急襲、そして壊滅。リーダー不在の隙を突くなら今しかない。


 だが敵の出方は依然として不透明。特に最も警戒すべきはスナイパーの存在だ。

 強はその脅威を念頭に置きながら、慎重に隊を導いていく。


 ムックと強を先頭に据え、縦に長い二列縦隊で森を進む。


「俺かムックが何かに気づいたら即座に散開しろ」


 それだけの極めてシンプルな取り決め。言葉は少なくとも信頼がその背後に満ちていた。


 突如、ムックが右手を静かに挙げた。


 ――合図だ。


「隠れろッ!」


 強の叫びとほぼ同時、乾いた破裂音が森に響く。強のいた位置に鋭く正確な一発が突き刺さった。


「スナイパーだ!」


 木々に身を隠し、散開する仲間達。緊張が瞬時に走り、空気が凍りつく。


 その刹那、潜伏していた敵兵が木々の影から現れた。銃撃は激しさを増し、あっという間に濃い弾幕となって襲いかかる。


「人数は!?」

「前に三人!」


 真っ先に応じたのは皆人だった。冷静な判断と機敏な行動、それは強への信頼と戦場における覚悟の証だった。


 強は思考を巡らせる。戸呂を除けば敵は九人のはず。ならば四人では少ない。――残りはどこにいる?


「側面!」


 桜の声が森に走った。

 そちらに目を向け、その事実に強は歯を食いしばる。敵は既にL字に展開していた。

 その数は二、撃ち漏らした盾部隊だ。

 強達の隠れる場所を炙り出す敵の作戦、まさしく絶体絶命。


「側面から対処だ!」

「強! 前方も詰めてきてる」

「しゃらくせぇ!」


 強は声を張り上げ、前線突破の切り札へ声をかける。


「ムック! 桜!」


 名を呼ばれた二人は迷いなく前線へと飛び出した。その姿はまるで飛翔する矢のようだった。


 無防備な突進。盾も防御も持たない少女達に敵は嘲るように引き金を引いた。


 だがその弾は一発も届かない。


 桜が肩に巻いていた縄を振り、宙を舞った瞬間――全ての弾丸は叩き落とされた。


「ば、ばけもの……!?」


 現実とは思えぬ光景に一人が声を震わせる。


「ただの美少女よ? 失礼しちゃうわね」


 おどけた言葉とは裏腹に桜の笑みは冷たく、獲物を追い詰める狩人のそれだった。


 狙撃手がその光景を覗きながら息を潜めていた。桜の額を狙い、ゆっくりと引き金を絞る。


 ――だが次の瞬間、男にとってあり得ないことが起こった。


 桜は視界に入ってないその弾を()()()に撃ち落としたのだ。


 スナイパーの口が開いたまま塞がらない。彼は震えを抑え、冷静を装いながら次の標的へと狙いを切り替える。だがその行動が運命の分岐だった。


 新たに照準を合わせた少年――ムックはまるで未来を予知したかのように突如その動きを止める。そしてスナイパーの弾が届く前にスコープからその姿が消える。


 一発目で射角を、二発目で位置を暴いた。

 ムックは敵の陣を駆け抜け、跳躍する。


「スナイパーは任せたわよ」


 その背中を守るように桜の縄が舞う。一人が捕らえられ、ショットガンの直撃を浴びた瞬間、他の敵兵は桜から目を逸らせなくなった。


 まさしく悪魔。笑みをたたえる彼女が次々と敵兵をあしらっていく。


「あいつはどこに……!?」


 狙撃手の男はキョロキョロと辺りを見回し、消えた少年を探す。


 しかし突如、狙撃手の背筋をぞわりと悪寒が走った。離脱を試みようと一歩を踏み出した瞬間、冷たいものが首筋に押し当てられる。


「嘘だろ……」


 ムックのゴムナイフ。彼は完璧な静寂の中で背後を取っていた。


「化物共め……」


 皮肉を吐き、彼は静かに戦場から姿を消した。


 その情報は瞬く間に戦線を駆け巡る。裏方を失った敵陣には動揺が走り、戦局がまた一つ動いた。


「ちくしょうがぁぁぁああ!!」


 怒りと焦燥が頂点に達した敵兵二人が盾を構え突進してくる。


 その凶弾は五木が浴びることとなった。


「五木くん!」


 門居の叫びが響き、駆け寄る強の瞳には怒りも悲しみもなかった。

 その顔には笑みが浮かび、誰から見ても五木の身を案じているのではないと分からせる。


 倒れゆく五木を掴み、その身体を敵へ向けて放り投げた。


 死体に意思はない。だからこそ盾となる。それは戦術でも作戦でもなく、ただの鬼畜行為に過ぎなかった。


(酷すぎる……)


 ルール上、退場した五木は何をすることもできない。使われるまま強の射線を切る道具となる。

 その頬には涙が一粒、宙を舞っていたのだが誰も知る由もない。


「なんてことをしやがる!」


 飛んでくる相手を優しく受け止める敵兵、その紳士的行為を嘲笑うかのように強は歓喜と共に襲いかかる。


 そして戦場は一気に崩れ、サバゲー同好会は撤退を余儀なくされるのであった。


 結局仕留めたのは遊撃隊とスナイパーの二人だけであった。

 追撃を出そうとする強、そのタイミングで一つの通信が届いた。

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