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そしてB型の世界は始まる  作者: ぞっぴー
そしてB型の部活動は始まる
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70.サバゲー同好会の宣戦布告

「何でサバゲー同好会の部長がここに?」


 強は不意にその疑問を口にする。戸呂が部室に現れた理由が全く持って分からない。


 門居はその質問に答えるべく、少し困った顔で頭を掻いた。


「戸呂部長と試合について話をしていたんですが、皆さんの話をすると連れていけと……」


 強はじっと戸呂を見つめる。サバゲー同好会の部長はローズが差し出した紅茶をすっと啜りながら、無言で強の帰りを待っている。


 同じ部長という立場。強はそれを感じ取ると戸呂の対面に腰を下ろし、静かに彼の言葉を待った。


「お前が噂の金敷部の部長、求平強だな」


 戸呂の口から発せられたその言葉は挑戦的な響きを帯びていた。強は堂々と返す。


「そうだけど、何か?」


 戸呂の言葉には明らかに棘が潜んでいる。それを感じ取った強も引き下がる気はなかった。


「俺達とやり合う気らしいな」

「こちらも頼まれたんでね。それが何か?」


 お互いの目が交わり、そこには微妙な張り詰めた空気が漂っている。

 戸呂の眼差しは鋭く、まるで鷹が獲物を狙うようだ。その目の奥に潜む怒りが確かに伝わってきた。


「良いねぇ……そのギラギラした目。瀬名とやり合うだけだと思っていたが思わぬ収穫を得たってわけだ」


 その一言で空気が一層重くなる。まるで戦場に立っているかのような、緊迫した時間が流れた。


 そのままではほんの少しの刺激で爆発するような雰囲気。

 強と戸呂、二人の間に立つこの空気を皆人はどうにかして切り裂こうとしていた。


「サバゲー同好会はうちを敵視しているって聞いたんですが本当ですか?」


 質問が口を衝いて出た。皆人自身、その言葉を口にしたことを後悔するのが分かっていたがもう遅い。

 戸呂の目がさらに鋭くなり、その表情が険しく変わった。


「サバゲー同好会が何故部にならないと思う?」


 戸呂の言葉には冷徹な感情が隠しきれない。皆人は答えに困りながらも少し前に桐人が話していたことを思い出す。


「活動実績が作れないからでは?」


 桐人の意見に則って、少し躊躇いながら答えると戸呂はその答えをあっさりと否定した。


「金敷高校はそんなに頭が固い高校じゃない。確かに正式な大会は無くても我々は様々なイベントに参加して良い成績を収めている」

「それなら何故?」

「それが分からないのよ。昔から何度申請しても全て受理されない。サバゲー同好会は差別されているのよ」


 その言葉に皆人は少し驚いた。学校内でサバゲーが差別されているという事実にどうにも理解が追いつかない。


 そんな中、門居が静かに手を挙げ声をひそめた。


「お、おそらくサバゲー同好会が行う、ゲリライベントが……問題なのでは?」


 その言葉が皆人の耳に届いた瞬間、戸呂はピンと張ったような目をこちらに向けた。


「何を言っている! 学校をフィールドにしたフラッグ戦は我がサバゲー同好会に代々伝わる伝統行事だ!」


 突如雲行きが怪しくなってきた。先ほどまで被害者の立場だったサバゲー同好会に皆から疑いの目が向けられている。


 しかしサバゲー同好会にも利があるのかもしれない。代表して桜が問う。


「成る程ね。で、それはちゃんと許可取ってるの?」

「許可を取ったらゲリライベントにはならんだろ!」

「それのせいだろばーか!」


 サバゲー同好会が全て悪い、はい終わり、閉廷。

 そのやり取りに皆人は思わず疲れたような気持ちが湧き上がってくる。

 さっきからの無駄な応酬が胃に重くのしかかり、ツッコミ疲れがじわじわと溜まっていく。


「それに対して金敷部はなんだ? 何故発足後すぐに部活になったんだ? 何をしたか教えてもらおうか?」


 その言葉で皆人はハッとした。戸呂の言葉の裏にどす黒い嫉妬の気配が感じられる。

 実際、サバゲー同好会が発足してから長い時間が経ち、その成果はあまりにも見えにくい。

 だが金敷部が部活として一歩踏み出したその瞬間に戸呂の心に沸き上がったのは自分たちの後塵を拝することへの怒りだったのだろう。


「……それはただの妬みだよな」


 皆人はその場に立ち尽くしながらその感情に気付いていた。

 自業自得だと感じながらもやはりどうしてもこの態度には共感できない。


 戸呂の顔が徐々に赤く染まっていくのが見えた。すると彼は立ち上がり、強に向かって指を差しながら言った。


「賭けをしよう。サバゲー同好会が勝ったらうちを部にするために協力してもらう」

「強、別に受ける必要は――」

「じゃああんた等が負けたらどうすんの?」


 売り言葉に買い言葉。迅速な反応に、皆人は頭を抱えた。


「サバゲー同好会が負けたら何でも言うことを聞いてやるよ。負けたらな!」


 戸呂の言葉は呆れ返っていた金敷部が再燃する。一気に沸騰した強に心が続いていく。


「良いだろう。忘れるなよその言葉!」

「あと瀬名先輩を取り戻すのを諦めてください」


 その瞬間、門居が力強く言い切ると勝負の条件が結ばれた。負けた者は何かを失う――この提案に金敷部は火がついた。


「勝負は明後日の土曜日に行う! フィールドはサバゲー同好会行きつけの場所を押さえている。場所は瀬名にでも聞け」


 戸呂はそう言い残し足早に部室を後にした。


 その後ろ姿を見送りながら強は呟く。


「身勝手な奴だ……」

「お前と良い勝負だな」


 強の言葉は金敷部随一のツッコミに拾われ、自分にもダメージを負うこととなる。


 傷を負いつつも戸呂の腕前を思い出す。

 ゲームセンターで見た正確無比な射撃、あの精度を考えると土曜日の戦いは過酷を極めるだろうと、強は肌で感じ取っていた。

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